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55 魔界の宝石レッドハート3

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 夜見が扉を開け彼女が部屋の中に入ると、大きなベッドで年老いた魔王が伏せっていた。夜見がベッドのそばに案内し、彼女は近づき挨拶した。

「魔王様、はじめてお目にかかり光栄です。私は北川風香という人間です。少し前まで異世界に転生しており、数時間前にこの世界に帰ってきたばかりです。」

「風香さん。かなり大変なW転生を経験されたみたいですね。私は過去視の力をもっています。運命に抗い愛する人を救ったあなたのがんばりに敬服します。それに、異世界を消滅させる神の目論見に従わないで、あなたの愛する人とともに神に反抗して未来を切り開いたことはすばらしいですね。」

「ありがとうございます。それにしても、魔王様は全てをお見通しされるのですね。」

「いえいえ、過去のことだけですから、あまりたいした力ではありません。しかしこれまでのことから判断して、私が今言えることは、これから風香さんは神と戦わなければいけません。気まぐれな神は、自分の思いどおりに動かなかった人間に対し非常に激怒します。さらに、風香さんのことをかなり警戒しています。」

「魔王様、どうしてでしょう。」

「異世界転生した人間には、高いスキルが備わります。しかも、風香さんは神の目論見に従わないで神に逆らい運命を切り開き、自分の世界に転生戻りされました。普通の転生者の百倍、いや千倍もの力を得たのです。伝説の『神殺し』さえできる人間になったからです。」

「私はごくごく平凡な人間、若い女の子として好きな人と笑いながら毎日を生きていくことさえできればいいのです。神と戦おうなどど少しも思っていません。」

「そうだと思いますが、尊大な神は風香さんをほっておきません。好むと好まざるとにかかわらず、戦いは始ります。風香さんと同じように、もともと、この世の魔界の魔族は神と戦う運命ですので、新しい魔王になっていただいて、魔族達の未来も守っていただきたいのです。」

「わかりました。ところで、とても気になることがあります。私にはW転生した人がいて、その人も転生戻りしましたが、今意識がない状態で病院のベッドで寝ています。彼に対して神は何か攻撃をすることはあるのでしょうか。」

「最初に、この現実社会で命を落しそうになった方ですね。彼にとっては命を救われ、この世界に転生戻りできたことが最大のギフトですから、今は全くの普通の人間で少しの力ももっていません。気まぐれな神は、そのような彼には全く興味を示しません。ですから攻撃対象にはならないでしょう。」

「とても安心しました。」

「ただ、風香さんとの戦いを有利に進めるために、彼を人質にとったりしようと考えるかもしれません。」

「神なのに、そんなに卑怯なことをするのでしょうか。」

「人間の皆さんは、神のことを大変誤解しています。もともと神の本質は、自分勝手で汚いことしか考えないものなのです。従う者に対しては寛大に振る舞うのですが、反抗する者や神を上回る力をもつ者に対しては、どんな手段を使ってでも排除しようとするのです。」

「彼の安全が心配です。」

「魔族の内、強い力をもつ者を彼の護衛にすれば良いでしょう。夜見よ、誰を選ぼうか。」

「堕天使ディフェルが適任かと。神以外の天使の攻撃であれば十分に勝つ力があります。」

「直ちに護衛につかせるように。」

「御意のままに。」
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