53 / 75
53 魔界の宝石レッドハート
しおりを挟む
時間を1か月ほどさかのぼる。
気がつくと、北川風香は現実世界に帰ることができ、病院の中の待合室に座っていた。異世界で大怪我を負ったはずなのに、体は全くの健康体だった。
少し遠くには、手術室らしい部屋の扉が見えた。
「ここは現実世界。私が生きているということは、運命に抗い勝って、2人とも生き続けることができたのね!」
彼女はひとり言を言った。
しばらくすると手術室のドアが開き、ストレッチャーの上に載せられた患者が外に運ばれてきた。まだチューブが装着され生命維持装置がついていたが、彼女には誰なのか直ぐにわかった。
「佐藤さん、命を取り留めたのね。ほんとうによかった。
その後、佐藤の手術を執刀した医師から説明があった。
「ほんとうに不思議です。運び込まれた時の佐藤さんは大変危険な状態でした。ところが手術をしていくと、体が生きるのを欲しているように、少しずつ良い状態になってきたのです。」
彼女は、深夜に佐藤が倒れているのを見つけて、彼の命を救うため異世界にW転生してから、現実世界に帰ることができるまでに起きた、いろいろな事を一瞬の間に想い出した。
自然に大粒の涙が流れ出していた。
佐藤が集中治療室に入ったのを見届けて、時計を見るともう、会社の始業時間5分前だった。休暇を報告する会社のクラウドシステムに、佐藤と自分自身のことを入力した。
そして、念のため会社に電話すると、上司の部長が出勤していたので詳細を報告した。
「北川、大変だったな。佐藤の御両親には私が伝えておくよ。なんにも心配することはない。佐藤はS評価だから、2~3か月休んでも、人事部の彼に対する考えは全く変わらない。それから北川も今日、ゆっくり休んでくれ。」
彼女は病院を出て、最寄りの地下鉄の駅まで歩き始めた。
何を見てもすばらしく感じられた。
(佐藤さんとともに異世界で大変な時を過ごし、運命に抗い勝つことができ、これから2人で、この現実世界の中で素敵な時を過ごすことができる。)
しばらくして地下鉄の駅の入口が有り、彼女が階段を下りようとした時、そばに1人の若い女性が立っていた
「姫様、お向かいに参りました。」
よく見るとその女性は全身黒ずくめの服を着て、彼女の行く手を塞ぐように立ち、深くお辞儀をした。
「なんですか、なにかの勧誘ですか。申し訳ありません。私は今、大仕事が終わり疲れているので、自分の部屋に帰り休みたいのです。失礼します。すいません、そこをどいていただけますか。」
黒づくめの女性はそれを聞くと、にっこり笑って言った。
「お疲れのところ、ほんとうにすいませんでした。姫様が首にかけられていらっしゃる赤いハートのネックレス、魔王であるこ証明証明する物ですね。首にかける魔王も『魔界の宝石レッドハート』と名乗るのが普通ですよ。」
そう言って、黒ずくめの女性は赤いハートを指さした。すると不思議なこと起きた。2人の周囲が真っ黒な空間になり、赤いハートからホログラムのような姿が映し出された。それを見て彼女はとても驚いた。
「魔王ザラ様!!!姉様!!!」
「フーカ、あなたがこれを見ているということは、無事に元の世界に帰れたのね。大事なことを言っておくわ、ここの世界であなたは意識を失っていたけれど、お別れの際、代々の魔王の宝であるレッドハートを首にかけてあなたにあげたわ。その効果で、あなたは帰った世界の魔界に君臨する魔王にならなければいけないの………」
「えーっ。」
気がつくと、北川風香は現実世界に帰ることができ、病院の中の待合室に座っていた。異世界で大怪我を負ったはずなのに、体は全くの健康体だった。
少し遠くには、手術室らしい部屋の扉が見えた。
「ここは現実世界。私が生きているということは、運命に抗い勝って、2人とも生き続けることができたのね!」
彼女はひとり言を言った。
しばらくすると手術室のドアが開き、ストレッチャーの上に載せられた患者が外に運ばれてきた。まだチューブが装着され生命維持装置がついていたが、彼女には誰なのか直ぐにわかった。
「佐藤さん、命を取り留めたのね。ほんとうによかった。
その後、佐藤の手術を執刀した医師から説明があった。
「ほんとうに不思議です。運び込まれた時の佐藤さんは大変危険な状態でした。ところが手術をしていくと、体が生きるのを欲しているように、少しずつ良い状態になってきたのです。」
彼女は、深夜に佐藤が倒れているのを見つけて、彼の命を救うため異世界にW転生してから、現実世界に帰ることができるまでに起きた、いろいろな事を一瞬の間に想い出した。
自然に大粒の涙が流れ出していた。
佐藤が集中治療室に入ったのを見届けて、時計を見るともう、会社の始業時間5分前だった。休暇を報告する会社のクラウドシステムに、佐藤と自分自身のことを入力した。
そして、念のため会社に電話すると、上司の部長が出勤していたので詳細を報告した。
「北川、大変だったな。佐藤の御両親には私が伝えておくよ。なんにも心配することはない。佐藤はS評価だから、2~3か月休んでも、人事部の彼に対する考えは全く変わらない。それから北川も今日、ゆっくり休んでくれ。」
彼女は病院を出て、最寄りの地下鉄の駅まで歩き始めた。
何を見てもすばらしく感じられた。
(佐藤さんとともに異世界で大変な時を過ごし、運命に抗い勝つことができ、これから2人で、この現実世界の中で素敵な時を過ごすことができる。)
しばらくして地下鉄の駅の入口が有り、彼女が階段を下りようとした時、そばに1人の若い女性が立っていた
「姫様、お向かいに参りました。」
よく見るとその女性は全身黒ずくめの服を着て、彼女の行く手を塞ぐように立ち、深くお辞儀をした。
「なんですか、なにかの勧誘ですか。申し訳ありません。私は今、大仕事が終わり疲れているので、自分の部屋に帰り休みたいのです。失礼します。すいません、そこをどいていただけますか。」
黒づくめの女性はそれを聞くと、にっこり笑って言った。
「お疲れのところ、ほんとうにすいませんでした。姫様が首にかけられていらっしゃる赤いハートのネックレス、魔王であるこ証明証明する物ですね。首にかける魔王も『魔界の宝石レッドハート』と名乗るのが普通ですよ。」
そう言って、黒ずくめの女性は赤いハートを指さした。すると不思議なこと起きた。2人の周囲が真っ黒な空間になり、赤いハートからホログラムのような姿が映し出された。それを見て彼女はとても驚いた。
「魔王ザラ様!!!姉様!!!」
「フーカ、あなたがこれを見ているということは、無事に元の世界に帰れたのね。大事なことを言っておくわ、ここの世界であなたは意識を失っていたけれど、お別れの際、代々の魔王の宝であるレッドハートを首にかけてあなたにあげたわ。その効果で、あなたは帰った世界の魔界に君臨する魔王にならなければいけないの………」
「えーっ。」
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。
ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。
※短いお話です。
※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる