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38 悲劇に向かうのか?

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 ようやく結婚式が開始されたが、形式的に粛々と行うだけのものだった。そして、いよいよ指輪交換がされようとした時、それを見ていた姫軍師フーカは気がついた。

(ルル王女は結婚指輪をはめる左手に、既に別の指輪をつけている。あの指輪には夢魔の魔力を感じる………わかったわ、絶対誘惑の指輪の力で、ナオト国王を一目惚れさせたのね。)

 結婚式も最終盤になり、列席者がそれぞれナオト国王とルル女王の前に立ち、お祝いの言葉を述べた。それは順繰りに進み、いよいよ姫軍師フーカの番になった。
 フーカが2人の前に立ち会釈をしたが、2人とも氷のような顔をしていた。

「ナオト国王陛下及びルル女王、本日良き日の御結婚おめでとうございます。心の底から感謝申し上げます。」
「うん、ありがとう。」
 国王は短くそう言っただけだったが、ルル女王は嫌みを込めていった。

「姫軍師フーカ様、本日御列席された方のほとんどがあなたの魅力に心を奪われ、私と…夫は…しっかりと引き立て役になってしまいました。」
 ルル王女は「夫は」と言った時に、勝ち誇ったように国王の方を見つめた。

 その表情を見て、フーカは反撃しようとする心を抑えることができなかった。

「女王様、ほんとうに御冗談がお上手ですね。女王様のお姿をひと目見れば、殿方は誰も一目惚れしてしまいますわ。その指輪が魅力の源でしょうか。国王様からいただいた指輪と同じくらい大切にされて………結婚式の時に、結婚指輪以外の指輪をはめているのは不敬にあたります。ない方が良いですね!」

 彼女はそう言うと、ルル女王が着けている絶対誘惑の指輪を指さした。そして分解消滅のスキルを発動させた。すると、絶対誘惑の指輪はとても小さな粒に分解され、消えてしまった。

「あーっ。」
 ルル王女が驚きの声を上げた。そして、国王に抗議した。

「国王陛下、姫軍師が、私が陛下からいただいた指輪の次に、大切にしている指輪をメチャクチャにしてしまいました。あまりにもひどい。このようなことを、女王に対して行う者を軍師の地位に留めておかないでください!!!」

「………」
 ルル王女が強く主張しても、ナオト国王は黙ってその様子を見ているだけだった。
(あれ、変わってしまった。王女から少しも魅力を感じない。)

「国王陛下、黙っていらっしゃるだけでは困ります。何もしていただけないのなら、私はゴード王国に帰ります!!!」

 その言葉の意味を、彼は重く受け止めなければならなかった。外交問題に発展することだけは避けなければならないからだ。

「姫軍師フーカに聞く。私の妃になるルル王女が大切にはめていた指輪を消滅してしまったのか?」
「はい、そうですが、何か。あれは絶対誘惑の指輪といって、夢魔の魔力で殿方をメロメロにしていまうものです。」

 勉強熱心な彼女は、既に魔族に関することをほとんど知っていた。

 そして彼女は好きだからこそ、ナオト国王を攻めるような強いことを言ってしまった。

「もし仮に、国王陛下がとても大切に思われ好きな方がいらっしゃったとして、たかが夢魔の作った小さな魔力に負けてしまわれるのですか?絶対誘惑の指輪の魔力に負けて一目惚れをして、ルル王女様と御結婚されたのではないのでしょうね?」

 この言葉には国王も大変怒り、多くの列席者が固唾を飲んで見ている中、売り言葉に買い言葉で彼は後には引けなくなってしまった。
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