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26 魔王軍の侵攻4

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 再び魔王軍が進むのを止めた。それは、宮殿にある魔法の煙の壁に映し出されていた。姫軍師フーカが、ナオト国王に言った。

「いよいよ最後の決戦の時が参りました。総司令官として、直ちに出陣しなければなりません。」
「姫軍師、私も出撃しよう。」
「それには及びません。ようやくお体が回復されつつある陛下に御出陣いただくわけにはいけません。」

「姫軍師、大丈夫か。魔王軍の司令官が操る竜は、亜空間の迷宮を焼き払ってしまうほどの超高温の炎を吐く。どのように戦うつもりか。」

「ドワーフからいただいた月の剣の力を使うつもりです。それでは失礼します。」

 去ろうとする彼女に、周囲の目を少しも気にせず、転生前に戻ったかのように彼が言った。
「北川さん、今度も僕を助けてください。ただし、必ず勝って帰ってください。」

「はい、わかりました。佐藤さんとデートするまでは死ねません。」
(私は、何を言ってしまったのだろう。ものすごく恥ずかしい………)

 ………

 オリンピア街道上で停止していた魔王軍の前に、獣人軍団が戻り姿を現わした。獣人達が戦闘でほとんど数を減らしてないのを見て、オークとゴブリン達は喜んで歓声を上げた。
 しかし、直ぐにその歓声は止った。

 獣人軍団が、オークとゴブリン軍団に戦いをしかけるために陣形を築き始めたからだ。そのうちフランツ王国軍も合流した。
 司令官である竜王ドランにもその様子は伝えられた。

「獣人族め、裏切ったのは少数の5千人だけではないのか。魔王軍として戦争に加わった3万人も実は裏切っていたのか、フランツ王国の正規軍も加えれると相手の連合軍は5万人、こちらはもう1万人くらいしかいないから5倍の兵力差になってしまった。」

「竜王様どうされますか。」
 周囲の副官達が心配そうに竜王の方を見た。
「私がでる。魔界序列第2位のこの力で、敵を壊滅させてやる。」

 竜王ドランは、副官にそう言うと、再び自分が使役しているドラゴンを呼んだ。
「来い。我が忠実なる僕、魔炎竜バーンよ。」

 呼び掛けに応えて、魔炎竜が飛来して竜王のそばの地面に降り立った。再び竜王は魔炎竜の上に乗り、連合軍向けて飛んだ。すると連合軍の先頭には、姫軍師フーカが甲冑を着て立っていた。

 フーカが凜とした声で言った。
「私はフランツ王国の姫軍師フーカです。竜に乗った魔王軍の司令官に伝える。直ちに魔界に帰還しなさい、ここは我がフランツ王国の人々が暮らす平和な国土、あなたたちがいるべき場所ではありません。」

 彼女が話すのを空の上から聞いて竜王は大変驚いた。
「なんと!フランツ王国は女司令官が努めているのか、勇敢な男はいないのだな。ーしかし、これは戦いだ、遠慮はしないぞ、全て焼き払って終わりにしよう。ー魔炎竜バーンよ我が敵を滅せよ。」

 竜王の命令を受けて、魔炎竜は存在することができる最大高温の炎を、彼女が先頭に立っている連合軍に向けて吐いた。

 彼女はその様子をしっかり見て、月の剣を抜いた。そして上段に構えて叫んだ。

「ムーンソード!!!」

 月の剣が振り下ろされると、月のようにきらめく光りの壁が現われ、連合軍に向かって進んでいた魔炎竜の炎を跳ね返し、魔王軍の方に倍の早さで反射した。

 竜に乗った竜王ドランは素早く上空に逃げたが、反射された炎は魔王軍に襲いかかり全てを焼き尽くした。

 その様子を見ていた連合軍の兵士達から歓声が上がった。
「魔王軍は全滅したぞ、やったー。」
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