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10 魔王ザラの最後通告

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 両足が元に戻ったナオト国王が、宮殿の庭園で歩行練習をしていた。大勢の家臣が控え、姫軍師フーカや宮廷魔法師イワンもそばにいた。

 その時、突然宮殿の真上の空に黒い穴が開き、そこから猛烈な勢いで何かが落下した。
 それは、魔王ザラだった。

「あら、あら、あら。ナオト国王、両足が元に戻ったのね。私の魔力を完全に打ち消した人間は、たぶん、あのおじいさま、大魔法師マーリーでしょう。ところで、今日は私が知らない女の子と御一緒ね。私に御紹介いただけますか。」

「お前に紹介なぞ………」
 彼がそう言いかけたのを彼女がさえぎり前に出た。
「私は姫軍師フーカです。陛下を助けることに命をささげています。」

 魔王は彼女をじっと見た。
 すると、みるみるうちに顔が真剣になり、やがて笑い始めた。

「ほほほ。フーカ、自分でもわかっているの。あなたのスキルはすごい。人間でそれほどの力をもつ者はいないわ。魔族の中でも、私か数人の強い家臣でしか対等に戦えないわ。それに国王と同じ、あなたも転生者ね。」

「確かにナオト国王と同じ転生者です。」

「わかった!!!私の夫にしてあげると国王に提案した時、断る理由になった女の子ね。うーん、確かに美しいわ。外面だけではなく内面の美しさも合わせると、もしかしたら私より美しいかも。………決めた!!!フーカ、私の妹になりなさい。過酷な運命を国王と共有する縛りを、私が切ってあげるわ。」

「お断りします。魔王様の意に沿うことはできません。私はこれからナオト国王と一緒に、過酷な運命に精一杯あらがうつもりです。その結果、運命に勝つことができず、たとえ死んでしまったとしても全く悔いはありません。」

「フーカ。あなたはほんとうにいい子ね。ますます好きになったわ。それでは、次のフェーズ、戦いを開始しましょうか。ナオト国王、魔王ザキはフランツ王国に最後通告する。今日から半年後、10万の魔王軍を組織してあなたの国に堂々と侵攻させる。その時はフーカよ、姫軍師として見事に防いで見せなさい。」

 そう言うと魔王ザラはジャンプし、一瞬で宮殿の真上の空に開いていた黒い穴まで上り消えた。

 フランツ王国が魔王から10万の軍の侵攻を通告され、その様子を見ていた大勢の家臣のなかに、大きな動揺が広がっていた。家臣達に大きな動揺が広がるのを見て、姫軍師フーカが強い口調で言った。

「魔王軍がどんなに大軍でも、私フーカがいる限り我が軍は絶対に負けない。聞いていましたか、魔王ザラは私の実力を対等だと認めました。それに、戦う場所は我が国の中、地の理はこちらにあります。そしてみなさんが私に協力してくれて人の強固な和ができれば、負けるはずはありません。」

 その言葉を聞いて家臣達の動揺は収まり、大きな歓声が起こった。

 ナオト国王が姫軍師フーカに正式に告げた。
「姫軍師、魔王軍を迎え撃つ軍を編成する司令官にそなたを任ぜる。ところで、魔王軍はいったいどこから侵攻してくるのだろう?」

「魔王ザラは、10万の魔王軍を組織して堂々と侵攻させると言いました。魔界からこの世界に大軍が降り立ち、軍の編成を整えてこの王都イスタンまで、複雑な戦略を立てず単純に前進させると予告しているのです。私は、ダリル平原に大軍が降り立ち、オリンピア街道を前進すると思います。」
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