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2章
29④
しおりを挟む「えと、つかぬことをお聞きしますけど、獣王様の報復って・・・」
恐る恐るアルフレッドの顔を覗くリリーベル。
「あぁ、迷宮の魔物をほったらかしにして追いかけて取り戻す気だったみたいですね。でもそうすると踏みつけてる魔物も正気に戻りますからソイツの毒素が世界中に蔓延しますので魔獣が凶暴化して魔物に変化しまいますし、人族が一番最初に滅ぶんじゃないでしょうかね?」
首を捻りながらリリーベルの質問に答えるアルフレッドは、至極当たり前の顔である・・・オイ。
「・・・・・・えぇと、」
「ああ、自分の世話をしてくれる乙女達に自分達も死んでしまうからって止めてくれってお願いされて、報復するのは踏みとどまってくれたみたいですね」
「はぁ、成る程」
――乙女が世界を救った感じ?
「乙女の血を継いでしまった王族は『獣王の加護』を授かりましたが、代わりに自分達のする事成すこと全て獣王に筒抜けになったんですよ」
「え? 筒抜け?」
「ええ。獣王がその気になれば王族は丸裸って状態になりますね。隠し事が一切できませんから。ドッカ王国の王族が他国に比べて策謀に無縁で穏やかなのはそのせいでもあります。それとこの国の国民全体が健康で長生きなのもその加護の恩恵です」
「この国の民が獣王の加護に守られてるってことですよね・・・」
「ええ。彼自身は全くその気がなくても本人を中心に加護が常時発生してるらしいです。それがあるからこそ正反対の魔物を踏みつけていられる」
「もし、獣王様が動いたら・・・」
「まぁ、良くて魔物が蔓延る過去の様な世界に逆戻りですかね」
「悪くて?」
その質問には答えず、代わりにニッコリ微笑みを返されたリリーベルである。
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