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1章
13① 大人達の事情〜ヘイワード侯爵視点
しおりを挟む姪であるリリアナの留学許可の御礼をする為に王宮に彼女を連れて参内した。
小さめの簡易謁見室内で、国王陛下や宰相閣下と挨拶を交わす姪の所作は美しく、さすが淑女の鏡と言われるだけの事があると感心した。
形式通りに挨拶を済ませた後、国王陛下と宰相閣下相手に内密の相談があると伝えて城の女官に任せ、彼女を中庭で待っているリリーベルと婚約者のサイラス王子殿下の元まで案内させた。
その場所は私たちが今居る謁見室の窓からよく見える。
リリアナは初めて会った従姉妹の婚約者の王子を意識して一瞬顔が赤くなったのだが、それを大人達につぶさに観察されていたなんて全く知らないだろう――
×××
「ほほ~う、お互いに脈ありといったところですかなあ」
「宰相、お前意外と下世話だったんだな・・・」
宰相の呟きに陛下が呆れ顔だ。
「いやいや、若いという事は良いものですなあ」
自分とあまり変わらない年齢だったはずだよな、と宰相の顔を思わずまじまじと見てしまう。
「どうでしょう? あの二人に関してはしばらく様子を見るということで」
私の提案に国王と宰相は頷いた――
×××
隣国王家はこの国の王家との縁を繋ぎたいと現国王が皇太子だった頃から躍起になっていたが、彼の国の王女の突然の崩御でそれが叶わなくなった。
彼女が亡くなったのが陛下との婚姻まであと一ヶ月という時期だった為、陛下が立太子出来なくなった上に前国王は死の間際と国民に周知されていたので、『国王が不在になるのでは?』という憶測を呼び一時期我が国は荒れた。
当時、私と公爵家の令嬢との婚約を急遽白紙撤回して彼女を陛下の伴侶とすることでその時は何とか乗り切ったが、そのままでは我が国の王侯貴族の心象を悪くするだろうと思ったのだろう。隣国王族の血筋の公爵家の令嬢と私との縁組が陛下の立太式の1年後に整った。
政略婚だったが妻とは相思相愛だったし、先の公爵令嬢との婚約撤回は何の遺恨もなかった。
いや、寧ろ私自身は愛する人と巡り会えて諸々の出来事に感謝しているくらいだったのだが妻との間に愛娘のリリーベルが生まれた途端、予想していなかった問題が持ち上がったのだ。
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