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2章
21②
しおりを挟む友人として付き合い始めて直ぐにミュラー家の領地は自国であること、伯爵位を賜っていること、ド田舎すぎて王都では知られていないだろう、ということを教えられた。
それでもリリーベルは当時この国の王子の元婚約者という立場だったのだから、自国の伯爵家は残らず知っていなければおかしいのだが・・・と、心の隅っこに引っ掛かってはいたのだが。
そしてリリーベルがミュラー家のアルフレッドと縁を結びたいと言った時のあの陛下の渋り様に違和感を覚えた。
まるで自分が嫁ぐのを諦めて欲しそうにいい歳のオッサンがもじもじし始めたからである。
×××
玉座に座る陛下は実に言い難そうにゆっくり口を開いた。
「いいかな、ヘイワード侯爵令嬢」
「はい。陛下」
「ミュラー家に半年で馴染めなかった場合は諦めて他所に嫁げ」
「はい?」
「猶予は半年だ。それ以上はまかりならん」
「えぇ~?」
「現当主の妻もその条件をこなして嫁いだのだ。そなたもその慣例に従って貰う。良いな?」
陛下の顔は真剣で、冗談を言っているようには見えなかった。
「・・・陛下? ミュラー家は何か特別な家なのですか?」
「・・・無事嫁げたら分かる」
それだけ言うと退出させられそうになったが慌てて陛下に喰らいつき、卒業式の時の褒美だったはずと粘った結果、折衝案として紹介状代わりの王命をしっかりもぎ取ったリリーベルだったのだが・・・
「しかし、ミュラー家側がリリーベル嬢では嫡男の嫁としては勤まらんと判断した時はスッパリ諦めろ。その場合この王命は無効だ。例え私の王印があろうともミュラー家にはドッカ王国の王命を無効にできるだけの権限がある」
「え? 王命を無効にできる権限って・・・ソレって他国の扱いですか?」
「似たようなものだと思ってくれて構わん」
リリーベルはソレ以上の情報は与えて貰えず、陛下との謁見はお互い最後まで渋顔のまま終了した。
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