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2章
29③
しおりを挟む「獣王は毒を撒き散らす魔物を常に踏みつけて気絶させ続けたまま迷宮の奥で暮らして居ますが、彼自身は特にその事を不自由だとは感じていません」
「へ、へぇ・・・」
大らかな獣王様なのかしら? と首を傾げるリリーベル。
「昔から彼には三人の美しい姉妹が常に侍っていて、彼女達が居ればなんの不満もなかったんですよ」
「・・・・・・」
――エロ◯ヤジ?
「ですが、その乙女の一人に横恋慕した阿呆が居まして、その乙女を攫ってしまったんです」
「えぇ・・・獣王様怒っちゃったんじゃ・・・」
駄目じゃん・・・誰よソイツ!?
「えーまあ、当時は大変だったみたいです。怒りで迷宮が崩壊しかけたそうですし。残った乙女に免じて報復するのはやめたらしいですけどね。今の私達ミュラー家は残り2人の乙女達の直接の子孫にあたります」
・・・もう何言われても驚かないわよっ! と心の中でフンスと誓うリリーベル。
「多分なんですけど、貴女が陛下にミュラー家を婚家として望んだ時に難色を示されたんじゃないですか?」
「えぇ。まぁ確かに・・・」
そういえば陛下、メッチャ嫌がってた気がするな、と謁見した時のことを思い出すリリーベル。
「獣王の乙女を攫った男って、実はこの国の王家の先祖のだったんですよね。だから獣王は実のところ王家の血筋を嫌ってます。ついでにその王家に傅いてる中央貴族達も同じ穴の狢だと思ってますから、その事を今の陛下はご存知ですので御令嬢がミュラーに嫁ぐのはいい顔は出来ないんじゃないかな、と」
・・・うそん。駄目じゃん王家。
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