初恋の君に嫁ぐ為には、王族を蹴散らし、魔獣と戦い？獣王様を屈服させる！？必要があるんだそうです・・・

２章

２９②

　「魔物って、魔獣じゃ無くて魔物ですか？」


　聞き間違いじゃないかと思わず身を乗り出して再確認する彼女に向けて、アルフレッドは首を横に振る。


「いいえ。御伽噺に出てくるような、土地を毒で汚して森を枯らし水を蒸発させ、嵐を起こす魔法を使うらしいです。ついでに全ての生き物を喰らいつくそうとする『魔物』ですね。この土地にある迷宮の奥に封じ込めてあります。我々の先祖も頑張ったらしいんですが、残念ながら人の手で討伐は無理だということになり封じ込める以外には手が無かったんですよ」


　シレッと当たり前の様に何かすごーく重大発言をされた気がするリリーベルである・・・


「え、それって・・・その魔物が生きてるってことですか？」

「ええ。そうです。せっかく封じ込めてあったんですけど地震のせいで一度封印が解けたんですよ」

「・・・えぇ～・・・」

「その頃は先祖も随分退化していたらしく再封印するのは無理だったので、魔物に対抗できる勢力をどうにか連れて来たんです」

「勢力って・・・なんですか？」


　海の向こうの帝国軍かしら？


「獣王です」

「・・・・・・」


　と、言うことはこのミュラー領には『魔物』とそれに対応できるだけの力のある『生き物』が生息しているという事になる訳で――彼女の気が遠くなったのは気のせいじゃない。