初恋の君に嫁ぐ為には、王族を蹴散らし、魔獣と戦い？獣王様を屈服させる！？必要があるんだそうです・・・

１章

１４②

　手に持った空のグラスを通りがかったウェイターに渡しながら、呆れ顔になるのは勿論リリーベルだ。


「いくらなんでも殴ったら駄目よ。フォルティ子息の頭が悪くなっちゃうわ」

「既に奴は馬鹿なんで大丈夫だよ。筋肉に損傷さえ与えなけりゃ騎士団の入団は取り消される事ないだろうし」


　ロザリーは若干辛辣だ。


「一応パーティー中は止めましょう。皆が迷惑します」


　マトモに返すのがオリビアである。


「まぁ、何をするのかは分かってるんだけど行ってみようかしらね」


　はぁー、とため息を１つつくと、リリーベルは遠くに見える壇上に立つ殿下＋３人に視線を向けた。


「まだ食べてないのに・・・　早いわよ」


　手に持ったビュッフェ用の取り皿に並んだ料理に目を向けるリリーベル。


「あ、代わりに食べとくから」

「ハイハイ。お願いね」


　オリビアにエスコートされながら王子の声がした方に去っていくリリーベル。

　ロザリーがリリーベルから受け取った皿の上に乗っていたローストビーフをペロリと完食し、


「ご馳走さん」


　とテーブルの上に皿を置いて、姉とリリーベルの後ろを追いかけた。



×××



　ロザリーが２人に追いついた頃には流石に呆然とした顔になった学生達の注目の的になっていたのは、勿論サイラス王子殿下と何時もの取り巻き達である。


「これによりリリーベルとの婚約は白紙撤回する。そして俺はこのリリアナ嬢と新たに婚約を交わすことをここで宣言するッ！　ここに居る皆が証人だ！」


　格好を付けてビシッ！　とリリーベルを指差す殿下とウンウンと頷く取り巻き達。

　そして殿下の隣に立ちにこやかに微笑むのはリリアナ嬢だ。


「はぁ・・・　サイラスったら恥ずかしくないのかしら」


　と力なく呟くリリーベル。


「ある意味ノリノリですね」


　と呟くオリビア。


「あ。イイトコ見損ねた・・・」


　と残念そうなロザリー。