初恋の君に嫁ぐ為には、王族を蹴散らし、魔獣と戦い？獣王様を屈服させる！？必要があるんだそうです・・・

２章

２１① 無名しかもいわく付きの伯爵家？

　国内一の長者番付を誇るヘイワード侯爵家はこの国の流通業をほぼ掌握している。
　事業が目に見えるモノだけを扱う訳ではないので多分だが国内一情報が勝手に集まりやすい家門だろう。

　そしてその家の娘であるリリーベルは、王子の元婚約者でもあったため国内貴族のみならず、外国の貴族家の情報も手にすることが出来た立場だ。

　流石に国外は伯爵家以上限定となるが王子妃教育の一環として各貴族家の特徴や領地、特産品等ありとあらゆる事を頭の中に叩き込まれて来たはずなのだが、『ミュラー』という家名を聞いたことが無かったのが彼女は不思議だった。

　女性近衛騎として抜擢されたミュラー姉妹を初めて知った時も他国の貴族家出身者なのだろうかと首を傾げたものだ。

　稀に親族がこの国の高位貴族の出自だったという場合はありえなくもないが、仕える主人が他国出身の王族クラスの身分なら、主人に付き従う形でついてくる事もあるがかなり稀なケースだ。

　学園入学後に同学年に『ミュラー』という姓を持った生徒がいる事を知ってリリーベルは驚いた。

　高位貴族家の令嬢や王族と言われても納得してしまいそうな美しい容姿、そして女性なのに騎士科？　――イヤイヤ姉達が騎士科の卒業生だったのだから不思議ではないのだが――　に。

　しかし学園の食堂で双子が豪快に食事する様子を見て


『一体彼女達の細い身体の中にどうやってあの量が入っていくの？！』


　と、愕然とした。


　リリーベルは幼い時の神への誓いの通り美容のために心血を注いでいた事もあり食事は少量に制限して来たのだが、男子学生もビックリするくらいの量を食べる双子を食堂で見かける度にその豪快さに呆然としていた。

　あんまり呆けて見続けるものだから、ロザリーとオリビアの方が気になり声を掛けてきた結果、友達になったのだ。


　王都の自邸タウンハウスから通う学生より寮生の方が圧倒的に多い学園では彼女達の大食漢ぶりは随分有名で、何を今更？　と双子は思ったらしく気になったというのが原因である。