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2章

19① 初恋の君は行方知れず?

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 あの卒業パーティーの後、リリーベルがサイラスとの婚約を白紙撤回する為の手続きが終わる迄に軽く半年掛かった。

 何しろ生まれた時から、まるっと17年間王子の婚約者だったのだ。

 それなりに彼女の名は知れ渡っており他国の王族にも婚約者として認知されているのだから、手続きはそう簡単には終わらなかったのだ。

 しかも卒業後18歳になると同時に輿入れも決まっていた身であり、それに合わせて婚姻式の招待客などのリストも外交官達の手により纏められていた。


 その作業を一からやり直すのである。


 そして当然の事ながら王家だけでなくヘイワード侯爵家の方も同様に大騒ぎだった。

 特に国内の縁戚である年寄りの反発が強く、長年のサイラス王子との不仲はリリーベルの我が儘だと決めつける爺どもが大勢いて説得に難儀した。

 王家との縁続きになることを宛てにしていた親族も数多く、それらは漏れ無く最後は王令まで出して権力でねじ伏せた。


 また嫡女だった彼女の立場が問題をややこしくさせていた。


 弟の出生の情報規制がうまく行き過ぎた弊害でもあったのだが、婚約解消となった事が知れ渡った時点で国内外から入り婿の打診の釣書が山になったのだ。


 まぁパーティーには外交官も大勢出席していたので当然の反応ではあるのだが・・・


 それだけヘイワード侯爵家が潤沢な財産があり、国内外に対して影響力があるという事の現れなのだが、そうだとしても身分制度がある国なのだから爵位が上の家や他国の王族なんかへの返答などもあり、よく正気を保てたよなと今になって思い出しゲンナリするリリーベル。

 暖炉の燃料にしてしまえば良いというものでもなく、それ相応の断りを入れなければいけないのが身分社会のお約束である。



 
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