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episode3 幸せになりたいなら、なりなさい
26話 駄目だこりゃ!
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白猫が『それでは』と恭しくお辞儀をして金色の余韻を残し消えた後、暫し固まる2人の男性達。
「なあ、メイソン」
「何ですかグエン殿」
「天晴だな、聖獣殿は」
「ええ、確かに。羨ましい位自分の優先順位がはっきりしてますね・・・ 見習いたいですよ」
「・・・そうだな」
2人は同時にため息をついた。
「しかも、王城の崩落が『いいお仕置き』ですからね」
「そりゃあ、ネイサンの言ったことだけどなあ。アイツの言いそうなこった」
「あと、『チョットそれ、止めてくる』でしたっけ?」
「あー、あの嬢ちゃん規格外だからな。以前ミゲル殿を魔獣の穴から助けようとして、地面そのものを毟り取って空に浮かべたらしい。報告で読んだ時に想像が出来なくて困った覚えがある」
「・・・はぁ。どちらにせよ聖王も聖女も聖獣も、私共とは桁違いですね」
「まあなあ・・・、ってのんびりしてていいのか?!」
2人はハッとして同時に外を見るために、窓に走り寄った。
「「あ・・・ 駄目だこりゃ」」
シャガルの王都の中心に位置する王城が窓から見えるように設計されるのが、この王都クラーグでホテルを建築する際の決まりである。
それはシャガル王国の威光を見せつけるのが目的とされているのだが・・・
遠くに見えるシャガルの王城は足元から、もうもうと土煙を上げながら少しずつ傾き、壁や屋根が崩れ落ちていく真っ最中であった。
それは『王国の威光』というよりは『王国の崩壊』としか表現出来ない状態で・・・
「まあ、聖女殿が生き物は助けてくれるって事でしたから・・・」
「うん、まあ、嬢ちゃんの事だ大丈夫だろ。ネイサンも付いてるらしいし・・・」
「そういえば、グエン殿『ネイサン」とか『嬢ちゃん』って・・・」
ふと気が付いて皇帝グエンを振り返るスハイド公爵。
「ああ? ああ、ネイサンは親友だな。嬢ちゃんは・・・ う~ん、知り合い?」
「陛下も大概規格外ですね・・・」
スハイド公爵が呆れたように呟いた。
「いや、アイツらに比べたら俺は凡人だ」
そう返す陛下の顔は非常に真剣だった。
「人って自分だけは普通だって思う生き物らしいですよ」
肩を竦めて公爵がそう言った・・・
「ウ~ン、俺はごく普通だと思うぞ?」
それには答えずにこやかな笑顔を見せる友人を、不満気に見る陛下である。
×××××××××××××
呆然と窓の前で、王城の最期を見つめる2人の後ろに金色の魔法陣が現れる。
「おわッ? 次は何だ?」
背中から金色の光の照らされ慌てて振り返るとそこに立っていたのは目の覚めるような美青年――に見えるが、100歳超えのお爺ちゃんネイサン・ルクスが立っていた。
「やあ、グエン。と、そちらはメイソン王弟殿下だね? はじめまして。ようやくお会いできましたね。私はネイサン。ギルドの『グランドマスター』を務めさせて頂いております」
鮮やかなエメラルドの瞳と赤い唇がうっそりと弧を描く。
「え、ネイサンて・・・」
「よう、ネイサン。何か色々と騒がしいな」
「まぁね。君の恋人が事故でこの国に飛んじゃったから、チョットばかりバタついたけど。もう終わったよ。あっちもすぐ片付くから放っといて大丈夫だと思う」
そう言いながら、空いているソファーに腰掛けて窓の外を指さすネイサン。
慌てて2人が窓を振り返ると、もう既に瓦礫の山へと姿を変えた元王城がそこには見えていた。
「さて。今後の話しをしましょうか」
ネイサンはそう言うと鮮やかに笑った。
「なあ、メイソン」
「何ですかグエン殿」
「天晴だな、聖獣殿は」
「ええ、確かに。羨ましい位自分の優先順位がはっきりしてますね・・・ 見習いたいですよ」
「・・・そうだな」
2人は同時にため息をついた。
「しかも、王城の崩落が『いいお仕置き』ですからね」
「そりゃあ、ネイサンの言ったことだけどなあ。アイツの言いそうなこった」
「あと、『チョットそれ、止めてくる』でしたっけ?」
「あー、あの嬢ちゃん規格外だからな。以前ミゲル殿を魔獣の穴から助けようとして、地面そのものを毟り取って空に浮かべたらしい。報告で読んだ時に想像が出来なくて困った覚えがある」
「・・・はぁ。どちらにせよ聖王も聖女も聖獣も、私共とは桁違いですね」
「まあなあ・・・、ってのんびりしてていいのか?!」
2人はハッとして同時に外を見るために、窓に走り寄った。
「「あ・・・ 駄目だこりゃ」」
シャガルの王都の中心に位置する王城が窓から見えるように設計されるのが、この王都クラーグでホテルを建築する際の決まりである。
それはシャガル王国の威光を見せつけるのが目的とされているのだが・・・
遠くに見えるシャガルの王城は足元から、もうもうと土煙を上げながら少しずつ傾き、壁や屋根が崩れ落ちていく真っ最中であった。
それは『王国の威光』というよりは『王国の崩壊』としか表現出来ない状態で・・・
「まあ、聖女殿が生き物は助けてくれるって事でしたから・・・」
「うん、まあ、嬢ちゃんの事だ大丈夫だろ。ネイサンも付いてるらしいし・・・」
「そういえば、グエン殿『ネイサン」とか『嬢ちゃん』って・・・」
ふと気が付いて皇帝グエンを振り返るスハイド公爵。
「ああ? ああ、ネイサンは親友だな。嬢ちゃんは・・・ う~ん、知り合い?」
「陛下も大概規格外ですね・・・」
スハイド公爵が呆れたように呟いた。
「いや、アイツらに比べたら俺は凡人だ」
そう返す陛下の顔は非常に真剣だった。
「人って自分だけは普通だって思う生き物らしいですよ」
肩を竦めて公爵がそう言った・・・
「ウ~ン、俺はごく普通だと思うぞ?」
それには答えずにこやかな笑顔を見せる友人を、不満気に見る陛下である。
×××××××××××××
呆然と窓の前で、王城の最期を見つめる2人の後ろに金色の魔法陣が現れる。
「おわッ? 次は何だ?」
背中から金色の光の照らされ慌てて振り返るとそこに立っていたのは目の覚めるような美青年――に見えるが、100歳超えのお爺ちゃんネイサン・ルクスが立っていた。
「やあ、グエン。と、そちらはメイソン王弟殿下だね? はじめまして。ようやくお会いできましたね。私はネイサン。ギルドの『グランドマスター』を務めさせて頂いております」
鮮やかなエメラルドの瞳と赤い唇がうっそりと弧を描く。
「え、ネイサンて・・・」
「よう、ネイサン。何か色々と騒がしいな」
「まぁね。君の恋人が事故でこの国に飛んじゃったから、チョットばかりバタついたけど。もう終わったよ。あっちもすぐ片付くから放っといて大丈夫だと思う」
そう言いながら、空いているソファーに腰掛けて窓の外を指さすネイサン。
慌てて2人が窓を振り返ると、もう既に瓦礫の山へと姿を変えた元王城がそこには見えていた。
「さて。今後の話しをしましょうか」
ネイサンはそう言うと鮮やかに笑った。
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