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episode3 幸せになりたいなら、なりなさい
15話 残したものは?!
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シンフォニア伯爵の説明を受けながら、実験室へと足を踏み入れたシンシア達一行である。
「お邪魔いたしますわね」
彼女の声で一斉に振り返る魔導士達。全員が臣下の礼を取るが、手を上げる仕草でそれを終えるように促すシンシア。
「例のスクロールの結果が出たと報告を受けたが?」
シンフォニア伯爵が、この検査室の責任者らしい白衣の男性に声をかける。
「はい、ほぼ解析が終わりました。鑑定魔法では間違いなくシャガル王国産でありますが、生産場所の特定として材質の検査を行いました」
「詳しい報告を」
そういいながらレポートに手を伸ばし素早く目を通す伯爵の横でそれをさらに受け取り、目を通していく伯爵子息であり天才魔道士でもあるマーロウ。
「使われていた羊紙皮にみえるモノは紙でした。それに含まれる水銀量や鉱物の質や植物の繊維を調べて特定した結果、やはり首都クラーグ近郊で間違いないだろうという結果となりました。地方だともっと鉱物量が豊富なはずですから。それと一番の問題点となった転移魔方陣の欠けですが、書き手が不慣れであるためだと思われますが一律ではなくサンプルすべてに差異がありました」
「つまり得られる結果がスクロール毎に違うわけだね?」
「はい。当たり外れがあるため作動しないものだけでなく、転移の際の体の一部の置き忘れや、確実に精神干渉を起こす恐れのあるモノなどとにかく悪質です」
聞いているほうも顔色を無くすが、報告する担当者もうんざり顔である。
「使う人の事は何の考慮もされてないわけだねえ」
珍しくマーロウが口を開きながら、シンシアにレポートを手渡すと彼女がその書類の束を猛スピードで確認して顔を上げた。
「国際法廷に上告しましょう。これは国際犯罪に相当します。取り急ぎ陛下と法廷への提出用、そして魔塔の控えとして詳しい資料を三部作製して頂戴。神殿には今すぐ連絡を入れて頂戴」
王族がこういう時に近くにいると話が早くて済むのだが、現在はシンシア以外に魔塔に出入りする王族が殆どいないため、彼女がトリステスに輿入れしてしまうと面倒臭くなるな、とシンフォニア伯爵が苦笑いをする。
「それにしても・・・」
スクロールが5枚ほど保管されているガラスケースに近寄り覗き込むシンシア王女。
「わたくし、本物を直接見たことがないのでなんとも言えないのですけれど王宮の禁忌図書室で資料として見た物より随分古代文字や図形の不備があるように見受けられますわねえ・・・・」
そう呟きながらガラスの表面に彼女が片手を置いた途端、箱の中に安置されているはずのスクロールに描かれた複雑な図形が眩しい光を放った。
「「! 王女殿下! お下がりださ・・・・」」
周りの魔道士達も魔導士長も侍女さえ止める間もなくその一瞬で王女の姿がかき消えてしまったのに気付き顔色を失う。
「大変だ! 早急に陛下と騎士団に連絡を! 魔導士は全員解析と追跡魔法を、マーロウ神殿に連絡をしろ」
最後に息子に指示しながら振り返ると、彼が床にうずくまっているのが視界に入り怪訝な表情になる伯爵。
「どうした? マーロウ、何があった・・・・」
そう言いかけた伯爵は彼の顔が真っ赤になっていることに気が付いた。
「どうしよう父上、これ、多分シンシア様の・・・・」
立ち上がり赤面したままで羞恥に震えながら差し出す彼の手のひらに収まっていたのは、純白の総レースで彩られた女性用の下着、つまり『ショーツ』であった・・・・
「お邪魔いたしますわね」
彼女の声で一斉に振り返る魔導士達。全員が臣下の礼を取るが、手を上げる仕草でそれを終えるように促すシンシア。
「例のスクロールの結果が出たと報告を受けたが?」
シンフォニア伯爵が、この検査室の責任者らしい白衣の男性に声をかける。
「はい、ほぼ解析が終わりました。鑑定魔法では間違いなくシャガル王国産でありますが、生産場所の特定として材質の検査を行いました」
「詳しい報告を」
そういいながらレポートに手を伸ばし素早く目を通す伯爵の横でそれをさらに受け取り、目を通していく伯爵子息であり天才魔道士でもあるマーロウ。
「使われていた羊紙皮にみえるモノは紙でした。それに含まれる水銀量や鉱物の質や植物の繊維を調べて特定した結果、やはり首都クラーグ近郊で間違いないだろうという結果となりました。地方だともっと鉱物量が豊富なはずですから。それと一番の問題点となった転移魔方陣の欠けですが、書き手が不慣れであるためだと思われますが一律ではなくサンプルすべてに差異がありました」
「つまり得られる結果がスクロール毎に違うわけだね?」
「はい。当たり外れがあるため作動しないものだけでなく、転移の際の体の一部の置き忘れや、確実に精神干渉を起こす恐れのあるモノなどとにかく悪質です」
聞いているほうも顔色を無くすが、報告する担当者もうんざり顔である。
「使う人の事は何の考慮もされてないわけだねえ」
珍しくマーロウが口を開きながら、シンシアにレポートを手渡すと彼女がその書類の束を猛スピードで確認して顔を上げた。
「国際法廷に上告しましょう。これは国際犯罪に相当します。取り急ぎ陛下と法廷への提出用、そして魔塔の控えとして詳しい資料を三部作製して頂戴。神殿には今すぐ連絡を入れて頂戴」
王族がこういう時に近くにいると話が早くて済むのだが、現在はシンシア以外に魔塔に出入りする王族が殆どいないため、彼女がトリステスに輿入れしてしまうと面倒臭くなるな、とシンフォニア伯爵が苦笑いをする。
「それにしても・・・」
スクロールが5枚ほど保管されているガラスケースに近寄り覗き込むシンシア王女。
「わたくし、本物を直接見たことがないのでなんとも言えないのですけれど王宮の禁忌図書室で資料として見た物より随分古代文字や図形の不備があるように見受けられますわねえ・・・・」
そう呟きながらガラスの表面に彼女が片手を置いた途端、箱の中に安置されているはずのスクロールに描かれた複雑な図形が眩しい光を放った。
「「! 王女殿下! お下がりださ・・・・」」
周りの魔道士達も魔導士長も侍女さえ止める間もなくその一瞬で王女の姿がかき消えてしまったのに気付き顔色を失う。
「大変だ! 早急に陛下と騎士団に連絡を! 魔導士は全員解析と追跡魔法を、マーロウ神殿に連絡をしろ」
最後に息子に指示しながら振り返ると、彼が床にうずくまっているのが視界に入り怪訝な表情になる伯爵。
「どうした? マーロウ、何があった・・・・」
そう言いかけた伯爵は彼の顔が真っ赤になっていることに気が付いた。
「どうしよう父上、これ、多分シンシア様の・・・・」
立ち上がり赤面したままで羞恥に震えながら差し出す彼の手のひらに収まっていたのは、純白の総レースで彩られた女性用の下着、つまり『ショーツ』であった・・・・
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