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episode3 幸せになりたいなら、なりなさい
32話 ダイヤモンド
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青い空に白い雲がポカリと浮かぶ穏やかな日である。
御伽の国ハイドランジア王国の王都フリージアにあるルクス大神殿の大聖堂に聖王ネイサンの姿があった。
その正面には、いつもの簡素な黒の軍服に軍靴という出で立ちのグエン陛下と、薄紅色のふんわりとしたフィッシュテイルのドレスを纏ったシンシア王女が立っている。
「本日これより、トリステス帝国皇帝グエン・トリステスとハイドランジア王国第2王女シンシア・ハイドランジアの婚約式をこの聖王ネイサン・ルクスが執り行うものとする」
白いキャソックとトラウザーズという神官服姿の聖王ネイサンが宣言をした。
因みに100歳超えとは全く思えないくらいの朗々としたハリのある声である。
貴賓席に座るのはトリステス側には第2皇子ゲオルグとシャルム宰相以下帝国の内閣府の重鎮達、ハイドランジア側は国王夫妻と宰相そして大臣達。
「それでは、婚約誓約書にサインを」
壇上のネイサンの直ぐ前におかれた記帳台の上に婚約誓約書が置かれてある。
羽根ペンをネイサンに差し出され、まずはグエンが、次にシンシアがサインをするとネイサンがそれを掲げ
「ここに聖王ネイサンによりこの2人の婚約が成立したことを証明する」
貴賓席の参加者全員に向けて誓約書をしっかり見せるとグエンとシンシアに向かい
「それでは婚約記念品の交換じゃ」
ネイサンが、右手をあげ合図をすると男性神官が紫色の天鵞絨のクッションを捧げ物ち入場するとグエン達の前に膝を折り恭しく持ち上げる。
艷やかな天鵞絨の上には、ブラックダイヤモンドとラピスラズリを組み合わせて作られたアーモンド型のピアス。
そして女性の親指の先か? と言いたくなるくらい大きさのブリリアンカットにされたグレイダイヤモンドが立爪の上で輝く指輪が納められている。そののアームは波打つ様にデザインされており、青く煌めくサファイアが散りばめれている。
グエンが指輪をシンシアの薬指に性急にはめ、シンシアがグエンの耳元のホールにピアスをゆっくりと慎重にはめたのはご愛嬌。
「よかった、やっとここまで漕ぎ着けた」
そう呟いて笑顔になったグエンを目に入れて、照れてぽうっとなったシンシアの艷やかな唇に思わずグエン陛下が、がっついてしまったのは更にご愛嬌である・・・
ネイサンが苦笑いをしながら閉会の宣言をした。
××××××××××
全員が神殿の奥庭でガーデンパーティーのために移動するのだが、その時ハイドランジア王妃とトリステスの重鎮達が何故かお揃いのハンカチで目元を拭っていたのに気が付くフィリップ国王陛下。
「なあ、モース。何でウチの家内とアッチの重鎮達のハンカチがまるっきり一緒なんだ?」
「あー、あれはファンクラブの名誉会員に送られる初回限定盤のプレゼントらしいですね。後宮の縫製班が作ったらしいですな」
「・・・ ナニソレ?」
「えーと、シンシア様が赤薔薇で、グエン陛下が鷹でしたかな? 刺繍入りらしいです」
「・・・ あ、そう」
思わず目が点になる国王陛下。
「ええ。両国が仲睦まじくていいじゃないですか。ああ、そういえば後宮の侍女はアレを持ってるのがトレンドらしいですな」
「・・・・」
しれっとそう答えるモース宰相のポケットにも、同じものが入ってる事を国王陛下は知らない・・・
××××××××××
「スピード婚約ですねぇ・・・」
「王族とは思えない速さだよなぁ」
「・・・」
神殿の屋根の上からお行儀悪く奥庭を覗くミリアとミゲル ――そしてお付きのメルである。
「運ぶ前に見たんですけどね、でっかいグレーダイヤモンドでしたね。初めて見ましたよ」
「あー、あれは美品が少ねえからな。透明度が高くて透き通るヤツはめちゃくちゃ希少品でなあ。今回の間諜騒ぎの賠償金の一部らしいな。シャガル王国の秘蔵品だったらしいんだが、グエン殿の瞳にソックリだったんで献上されたらしい」
「へえ~、そういえばあのダイヤモンド光に当たったときに奥と周りがブルーに輝きましたね」
なんとなく思い出すミリアンヌ。
「ブルーとグレイが混雑するようにカットしたからデカいんだろ多分。まあ、シャガルの元国王が宝石好きだったから加工技術が色々と高かったらしいな」
「でも元国王が独り占めしてたんでしょう?」
ミゲルが苦い顔をする。
「もうちっと国を豊かにするために技術も宝石も使えば良かったのにな。まぁなんだ。もう幽閉されちまったからな。宝石の研磨やカットの技術は国全体のモノになるんじゃないかな。王弟、いや現国王のメイソン殿が頑張るだろ」
「そうですねえ」
2人の背中を見ながら白猫が大欠をする。
何処までも青い空に、目が痛くなりそうな位に白い雲がのんびり浮かんでいた――
episode3
―幸せになりたいなら、なりなさい―
御伽の国ハイドランジア王国の王都フリージアにあるルクス大神殿の大聖堂に聖王ネイサンの姿があった。
その正面には、いつもの簡素な黒の軍服に軍靴という出で立ちのグエン陛下と、薄紅色のふんわりとしたフィッシュテイルのドレスを纏ったシンシア王女が立っている。
「本日これより、トリステス帝国皇帝グエン・トリステスとハイドランジア王国第2王女シンシア・ハイドランジアの婚約式をこの聖王ネイサン・ルクスが執り行うものとする」
白いキャソックとトラウザーズという神官服姿の聖王ネイサンが宣言をした。
因みに100歳超えとは全く思えないくらいの朗々としたハリのある声である。
貴賓席に座るのはトリステス側には第2皇子ゲオルグとシャルム宰相以下帝国の内閣府の重鎮達、ハイドランジア側は国王夫妻と宰相そして大臣達。
「それでは、婚約誓約書にサインを」
壇上のネイサンの直ぐ前におかれた記帳台の上に婚約誓約書が置かれてある。
羽根ペンをネイサンに差し出され、まずはグエンが、次にシンシアがサインをするとネイサンがそれを掲げ
「ここに聖王ネイサンによりこの2人の婚約が成立したことを証明する」
貴賓席の参加者全員に向けて誓約書をしっかり見せるとグエンとシンシアに向かい
「それでは婚約記念品の交換じゃ」
ネイサンが、右手をあげ合図をすると男性神官が紫色の天鵞絨のクッションを捧げ物ち入場するとグエン達の前に膝を折り恭しく持ち上げる。
艷やかな天鵞絨の上には、ブラックダイヤモンドとラピスラズリを組み合わせて作られたアーモンド型のピアス。
そして女性の親指の先か? と言いたくなるくらい大きさのブリリアンカットにされたグレイダイヤモンドが立爪の上で輝く指輪が納められている。そののアームは波打つ様にデザインされており、青く煌めくサファイアが散りばめれている。
グエンが指輪をシンシアの薬指に性急にはめ、シンシアがグエンの耳元のホールにピアスをゆっくりと慎重にはめたのはご愛嬌。
「よかった、やっとここまで漕ぎ着けた」
そう呟いて笑顔になったグエンを目に入れて、照れてぽうっとなったシンシアの艷やかな唇に思わずグエン陛下が、がっついてしまったのは更にご愛嬌である・・・
ネイサンが苦笑いをしながら閉会の宣言をした。
××××××××××
全員が神殿の奥庭でガーデンパーティーのために移動するのだが、その時ハイドランジア王妃とトリステスの重鎮達が何故かお揃いのハンカチで目元を拭っていたのに気が付くフィリップ国王陛下。
「なあ、モース。何でウチの家内とアッチの重鎮達のハンカチがまるっきり一緒なんだ?」
「あー、あれはファンクラブの名誉会員に送られる初回限定盤のプレゼントらしいですね。後宮の縫製班が作ったらしいですな」
「・・・ ナニソレ?」
「えーと、シンシア様が赤薔薇で、グエン陛下が鷹でしたかな? 刺繍入りらしいです」
「・・・ あ、そう」
思わず目が点になる国王陛下。
「ええ。両国が仲睦まじくていいじゃないですか。ああ、そういえば後宮の侍女はアレを持ってるのがトレンドらしいですな」
「・・・・」
しれっとそう答えるモース宰相のポケットにも、同じものが入ってる事を国王陛下は知らない・・・
××××××××××
「スピード婚約ですねぇ・・・」
「王族とは思えない速さだよなぁ」
「・・・」
神殿の屋根の上からお行儀悪く奥庭を覗くミリアとミゲル ――そしてお付きのメルである。
「運ぶ前に見たんですけどね、でっかいグレーダイヤモンドでしたね。初めて見ましたよ」
「あー、あれは美品が少ねえからな。透明度が高くて透き通るヤツはめちゃくちゃ希少品でなあ。今回の間諜騒ぎの賠償金の一部らしいな。シャガル王国の秘蔵品だったらしいんだが、グエン殿の瞳にソックリだったんで献上されたらしい」
「へえ~、そういえばあのダイヤモンド光に当たったときに奥と周りがブルーに輝きましたね」
なんとなく思い出すミリアンヌ。
「ブルーとグレイが混雑するようにカットしたからデカいんだろ多分。まあ、シャガルの元国王が宝石好きだったから加工技術が色々と高かったらしいな」
「でも元国王が独り占めしてたんでしょう?」
ミゲルが苦い顔をする。
「もうちっと国を豊かにするために技術も宝石も使えば良かったのにな。まぁなんだ。もう幽閉されちまったからな。宝石の研磨やカットの技術は国全体のモノになるんじゃないかな。王弟、いや現国王のメイソン殿が頑張るだろ」
「そうですねえ」
2人の背中を見ながら白猫が大欠をする。
何処までも青い空に、目が痛くなりそうな位に白い雲がのんびり浮かんでいた――
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―幸せになりたいなら、なりなさい―
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