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episode2 恋ハ異ナモノ味ナモノ

15話 転移門再稼働

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 「まだ早いんじゃないですかねぇ?」


 眉根を寄せるのは大聖女ミリアンヌである。

 こちらは既に御馴染みになりつつある、ルクス大神殿の応接室。

 猫脚のマホガニー製のソファーの座面は真っ白の天鵞絨張り。その上に腰掛けるのは深いボルドーカラーのワンピースに身を包んだ傾国の美女、毎度おなじみのシンシア王女。

 そしてその向かい側のソファーに座るのはこの神殿のヌシ、もう1人の聖王である大神官様ことネイサン・ルクスである。

 白いキャソックとトラウザーズはちょっとばかり大きめでダボッとしているのがトレードマーク。白い顎髭と優しげな笑顔はまるで白い袋を担いで赤鼻のトナカイと一緒に12月にやって来る例のお爺さんみたいである・・・


 因みに冒頭のミリアはいつもの定位置、つまり大神官のすぐ横に座る新聖王ミゲルの膝の上である。最早こうじゃないと落ち着かないのかもしれない。

 おもに聖王ミゲルがであるが。


 「ウ~ンそうじゃのう、ミリアが言う通りトリステスの転移門を元に戻すのはちと早いかも知れんのう・・・」


 白い髭を触りながら考える。


 「・・・いや、そうでもないかも知れん」


 そう言いながら、手を止める聖王ネイサン。


 「え、でも転移門を使ってシャガルの間諜がやって来たら不味いんじゃない?」


 慌てるミリアに


 「もう俺たちが神殿に戻ってるから大丈夫だろ。寧ろ此処に来たらメルに捕まるだけだ」


 肩を竦めるミゲル。


 「あ、そうか。アソコのは大神殿直通の転移門だったっけ~・・・ 忘れてた」

 「転移門は元々神殿同士しか使えないが、アソコのはこの大神殿専用にしてあったから何も問題無いじゃろうて。どうせここ以外には行けんのじゃからの」

 「転移スクロールではハイドランジア王国には潜り込めんように特殊結界が張られてるからな。個人の転移魔法でも入り込めんから大丈夫だろ」


 それを聞いてシンシアが首を傾げる。


 「でも、御三方とメルちゃんはこの国と他の国を自由に出入りされてますわよ?」

 「ああ、この国の結界石だけは儂ら3人とメルの神聖力を元に作られるからじゃよ。神殿の結界石から常に世界中の結界石に繋いでおるから儂らは合鍵を持ってるようなもんじゃな。特にハイドランジアの結界石は外からの侵入を拒むよう強固にしてあるんじゃ。まあ、そのせいでこの国だけ結界石の交換が頻繁になるという欠点もあるがのう」


 ホッホッと笑うネイサン。


 「ま、そのお陰で騎士団の仕事が忙しいんだがな」


 肩を竦めるミゲルに向かって、


 「仕事があってよかろう。仕事のない脳筋騎士やら軍人なんぞ唯の穀潰しじゃ」


 大神官様、大変辛辣である。


 「平和ボケをすると他国へちょっかい出す暇ができたり、他国からの過干渉に無頓着になる。多少なりとも緊張感は無いといかんのじゃよ」

 「あー、だから他国の結界石は私達『聖人』じゃなくて神官さん達の神聖力を込めるんですか~」


 ミリアンヌが、ポンと手を打ち鳴らすのを呆れ顔で見る聖王二人組。


 「教えてあったじゃろ?」

 「忘れてました~」

 「俺は覚えてるぞ、第一他国に跳んだときと自国に戻るとき結界の反応が違うだろう?」

 「えーと。ワカリマセン・・・」

 「「「・・・・」」」


 お爺ちゃんがミリアの顔を見ながら、ニッコリ笑う。


 「ミリー、明日から座学の時間を倍にするからの。覚悟しとくように。体感で分からんのなら頭で覚えときなさい」

 「・・・ ハイ」

 ミリア脳筋あるあるである。


××××××××××


 「で、じゃ。転移門を復活させるのもアチラの許可がいるからのう。ちょっとだけ待ってくれるか? シンシア」

 「はい、ではまた出直しますわ」

 「あー、そこに座っとれ。すぐに終わらすからの」


 そう言うと突然姿が消えてしまうちっちゃいサンタクロース。


 「あら? お爺さまはどちらに?」

 「あー、多分ですけどグエン陛下のところでしょうかね」

 「・・・ 凄いですわね」


 壁に擬態していたシンシア付きの侍女も目が点になった。


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