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episode1 出会い。其れは唐突にやって来る♡

5話 のび~るのび~る●●●●●!

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 ハイドランジアの宰相はどっちかというと背が高くスマートな体型でスキのない怜悧なイメージのオッサンだが、トリステスの宰相は真反対で低身長、ぽっちゃり体系の人の良さそうな笑顔のオジサンである。

 皇城内にある宰相の執務室に先ずは通されたシンシア王女。


 「シンシア・ハイドランジアで御座います。1ヶ月宜しく御願い致しますわ。シャルム宰相閣下」

 「いやあ、相変わらず本当にお美しいですな、1年前のアレクシス王太子殿下の立太の儀の際に1度だけお会いしましたな」


 宰相閣下、鼻の下! 気を付けて~ 伸びてるよー・・・


 「そうですわね。あの時はグエン皇帝陛下は神殿での承認の儀の後、急いで国にお帰りになられたのでしたわね」


 花のように微笑むシンシア王女。


 「あー、神殿の式典のみの出席で取り急ぎ国に帰りたいと陛下が申しましてなあ。アレクシス殿下の立太式には私と外務大臣の出席でしたな。誠に申し訳無い」


 困ったような照れ笑いで誤魔化す宰相閣下。

 ホントは面倒臭いから、アトヨロ~! とか言ってサムズアップして去っていったとかは口が裂けても云えませんからね。


 「ああ、そうでしたわね、丁度皇帝陛下はお忙しくていらっしゃったのですわね。あの時は急遽式典の日取りが決まりましたものね。本当に申し訳ございませんでしたわ」


 眉尻を下げ、恐縮したように肩をすぼめるシンシア。


 駄目だ、やっぱり色っぽい。


 ほら、向こうから皇帝陛下が走ってきたよー・・・


 「シンシア王女、どうしたウチの宰相が失礼な事でもしたのか!」

 「・・・陛下、僭越ながらそのモノの言いようは、私に失礼なのでは?」

 「お前はイイんだよ!」

 「・・・陛下」


 残念なモノを見る目で思わず自分の上司を見てしまうシャルム宰相。

 この際不敬に関してはプット・オン・ザ・ラックである。

 そのやり取りの間に挟まれながら


 「大丈夫ですわ、皇帝陛下。宰相閣下はとてもお優しい方でございますわ」


 ニコリと妖艶とさえ言える華やかな笑みを湛えた傾国の美女におっさん達が顔を赤くしたのは仕方ないと思う。


××××××××××


 コホン、と咳払いをする陛下に小首を傾げるシンシア王女。


 「シンシア王女、僭越ながら城を案内したいのだがエスコートさせて頂いても?」

 「嬉しゅうございますわ陛下」

 「では」


 そう言いながら左の肘を差し出すイケオジ43歳。


 「まあ、ご丁寧に有り難うございます。それではお言葉に甘えさせて頂きますわ」


 そう言いながらそっと差し出された肘に自分の手を優雅な動きで添えるシンシア王女。


 うん。それならコケないね安全。


 「じゃあ、取り敢えずどこに行きたいかを相談しようか」

 「有り難うございます陛下」


 鼻の下をデレっと伸ばす皇帝陛下にエスコートされるがまま、応接室を去っていくシンシア王女。


 「閣下はどうなさったんですか?」


 残された宰相は困惑の色を隠せない。


 「出合い頭に求婚しやがった。あのクソ親父」


 ゲオルグが額を抑えながら呻く。


 「ええぇ~・・・ よりによってハイドランジアの傾国の美女ですよ、大丈夫ですかね~ 他国に恨まれませんかね・・・」


 困惑の色に焦りの色も混じって顔色が白くなる宰相閣下。


 「分からんが、クソ親父は本気モードだ。間違いない。あんな真剣な顔見たのは初めてだ」

 「ええぇ~? そんな、殿下。どうします? 正式に申し込みするとなると、には困った問題が・・・」

 「分かってる。ロザリアだろう」


 はぁ、と顔色悪く溜め息を付くゲオルグ第2皇子。


 「せっかく陛下が身を固める決意をしたのに、邪魔しませんかねぇ」

 「いや、ソコ? それより年の差婚過ぎない? カイル兄上と変わらない年齢だぞシンシア王女」


 ケロッとした顔で首を傾げる宰相閣下。


 「いやあ、王族の婚姻なんてそんなもんでしょう。我が国は成人年齢が他国より随分と早いですからなぁ。皇族の場合は3回位結婚し直すの普通ですからな。ていうか、姫はどうするんですか?」

 「いや、もうあれは一生独身でいい」


 ビシッと言い切るゲオルグ第2皇子。


 「・・・・」

 「俺の監視下で一生女性騎士として帝国に仕えさせる。それしか方法を思いつかん。幸い体力はアホ程あるしな」

 「・・・・」

 「そんな目で見るなよシャルム。大体アレでどっかに嫁げるとお前思うか?」

 「ええまあ確かに・・・」


 そう言いながら遠い目をする宰相閣下。


 「殿下だって、もう婚約者がいてもいい年齢なんですよ」


 振り返って、宰相を正面から睨む目つきは三白眼である。


 「兄貴が駄々こねて婚約者作らなかったから、いいトバッチリだよ。悪かったな!」

 「殿下が1番苦労しますね~」

 「言うな。私の立場は中間管理職そのものだ」

 「殿下、男前なんですけどねぇ~」

 「親父にそっくり過ぎて貴族令嬢達に敬遠されてるんだから仕方ない!」


 肩を竦めて2人が出ていったドアを見ながら


 「いい風が吹くと良いが・・・」


 宰相閣下がそう呟いた。











★ーーーーーーーーー★

『棚に上げる』を英語に
してみたらこうなった・・・
『プット・オンザ・ラック』!
(ノ`Д´)ノ彡┻━┻

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