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165 ヒロインは考える。
しおりを挟むリアーヌが絡むと途端にポンコツになるハロルド殿下だが、実のところ国内外に関わらず貴族令嬢達に非常に人気があるのだ。
シアンがかった銀色の肩まである髪にアーモンド型をした左右対称の眼はオーツランドの王族に多い紫の瞳。
鼻筋はスッと通っていて薄めの唇は引き締まっていて、公式行事の時の彼は王族としての微笑みを欠かさない。
産まれた時未熟児だった彼は幼い頃こそ病弱だったが、体を鍛えて今や健康優良児。
剣も柔術も熟すし、魔法も普通に使えるし、座学でも学年で常にトップを誇っている。
王子としては完璧なのだが、どうしても婚約者に対してだけは頑なな態度を崩せなかったがそれ故に、若い貴族令嬢達から常に熱い視線を贈られており、リアーヌとの婚約が白紙撤回された今は国内貴族から送られてきた釣書で執務室は満杯になっているのが現状である。
×××
彼はリアーヌが関わらないことに対しては優秀だが、どうしたことかリアーヌに関してだけは何をやってもポンコツ残念王子。
それってひょっとするとゲームの強制力だったのかも知れないとフロイラインはふと考えた。
――じゃあ、自分への異性としての好意も強制力の成せる業だったら?
そこまで考えてはたと気が付いたフロイライン。
以前この場所でリアーヌが言っていたではないか。
レイモンドと彼女が相思相愛になったと打ち明けられた時の事である。
『ひょっとしたらなんだけど、私のストーリーは終わりってだけで、ヒロインのストーリーは終わってないのかも・・・?』
・・・・・・まさかの?!
王子が女装して下町の恋愛相談所にやってくるっておかしくない?!
しかも城を抜け出すのを側近候補が手伝ってまでやって来るの?
男爵家の令嬢が王子妃になるのに邪魔だからと、貴族のお嬢さん自ら破落戸を雇う?
いやいやいやいや、それってありえんやろッ?!
ひょっとして自分自身が誰かとの恋愛を成就しないと、このよくわからない騒ぎが収まらないの?!
背中に嫌~な感じの汗が流れるフロイライン。
え、待ってちょっと待て?
悪役令嬢が魔塔の主と結ばれるのって何が条件だったっけ?!
プレイヤーが王子の攻略を終えて・・・
ヒロインが王子エンドでゲームエンドを迎える時・・・? だった?!
「げええええええええぇええッ!?」
思わずソファーから立ち上がり『ムンクの叫び』をハロルドとヨハンの目の前で実演する男爵令嬢フロイラインであった・・・
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