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159 お嬢様呼びは説教コース。
しおりを挟む公爵家のお忍び用馬車に乗り、城下街に向かう主人に向かい、懇々と説教をかます専属侍女マーサ。
「そもそもハンスはお嬢様の護衛ですから、呼び戻すのは簡単なんです。
魔鳥を飛ばせば直ぐ解決ですから」
確かにそうである。
ハンスはリアーヌの護衛兼間諜兼従者である・・・ 顔をあまり見ないせいで偶に忘れそうになるが。
「はい・・・」
「コックス様の身の安全を考えて下手にハンスを呼び戻したくないと考えた上での行動だとは思いますが、お嬢様の身に何かあったら本末転倒ですよね?!」
浅葱色の髪色をした侍女の片方の眉尻がググッと上がる。
『勿論わかってますよね?』
・・・という無言の圧が凄い。
「はい・・・ ソウデスネ」
「お嬢様に何かあればレイモンド様や旦那様達に顔向けできなくなるのは、お屋敷にいる使用人全員なのです。
考えなしに飛び出すのはおやめ下さい」
溜息を吐くマーサにリアーヌ、ショボーンである。
「・・・ゴメンナサイ」
「それと。
王都に住み始めてからは猫100匹くらい身体中に貼り付けて10年近く淑女のフリで頑張って来たことを私もよく知っております。
ですので今のお嬢様の方が本来の性格だということはよお~~~~く分かっておりますので、今更驚きません」
「・・・ハイ」
「ですが領地での振る舞いを全く知らない使用人も大勢いますので、気をつけ下さいませ?」
「・・・ハイ」
「それから。
ご家族以外の貴族達も猫を被ったお嬢様しか知らないんですからね?
くれぐれも忘れないで下さいね」
「は~い」
「・・・・・・」
マーサの目が細くなる。
「ゴメンナサイ。
・・・ところでマーサ。
お嬢様呼びに戻ってるわよ?」
そ~っと上目遣いになって、侍女の顔を覗く若奥様。
「わざとです。
『リアーヌ奥様ッ!』
って言いながら説教するイメージが自分の中に無いんですよ。
諦めて下さい」
マーサに怒られる時は『お嬢様』呼びなのね、と諦め顔になるリアーヌであった。
×××
一階に喫茶店、2階に恋愛相談所のある建物の向かい側の馬車溜まりにお忍び用の馬車が止まり、そこから歩いてフロイラインの恋愛相談所ローラを目指してマーサをお供に歩き出すリアーヌ。
「今日は通りに人が多いわね」
如何にも平民ですという格好の親子連れから、恐らくは貴族のお忍びなのだろうと思えるような身なりの良い者まで。
様々な階級の王都民が石畳の通りを大勢歩いている。
「今日は日曜日ですからね」
マーサに言われてちょっと考え、
「あ。そうだったわね」
と、相槌をうつリアーヌ。
曜日の感覚が無いのはレイモンドのせいだと知っているマーサが生温い視線になったが、
『お嬢様が幸せならまあいいか』
と思いながらウンウンと頷いた。
×××
「まーったくッ! 失礼しちゃうわッ」
未だに痛い尻を擦りながら客室のソファーに浮いたまま座る格好で不機嫌な顔になり、兄が慌てて出て行ったドアに向かって『アッカンベー』と舌を出すマリーナ皇女。
「お兄様ったら堅物なんだからッ。
そんなんだからヒロインにアッサリメロメロになって攻略されちゃうのよッ!
って言ってもヒロインはいないんだっけ・・・」
そう呟きながら、窓の外に目を向ける。
「あーあ、今日の晩餐までにハロルドさまの追っかけをする予定だったのに・・・
でもなぁ・・・」
勝手に彷徨いたら速攻で本国に送り返すと言われたばかりなのでウ~ンと悩む皇女殿下。
「ん? あれ? ・・・」
魔塔と騎士団の詰所の間にある中庭を歩いていく文官が目についた。
風にフワリと広がり陽に当たると黄金にきらめくサラリとした金髪に細くスラリとした身体付き。
高い身長から考えても、かなり長い割合の足。
急に、何故か止まって後ろを振り向いた時にちらりと見えた顔は・・・
「もしかして、アレ・・・ レイモンド様?」
~~~~~~~~~~
生活時間が新しい家族(オカメインコ)の世話でまるきり変更になってしまい、夜中に執筆が出来なくなってしまいまして。
朝が早いので12時には寝てしまうのです・・・・( ;∀;) インコ早起きw
今日から更新時間を8時→20時に変更します(_ _)
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