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105 公爵令嬢と侯爵令息③

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 帰ったら公爵夫妻に早速報告しようと言うレイモンドにリアーヌは気掛かりだった事を階段を降りながら聞いてみる事にした。


「ねえ、フラメア侯爵ご夫妻に報告は?

 というか、婚約の申し込みっていうけど私もレイも跡継ぎでしょう?

 その辺はどうすればいいの?」

「ああ。フラメア家は気にしなくていいよ。

 俺は公爵家に婿入りでも何でも。

 リアはコンフォート領を離れたくないんだろ?」

「そう言うわけには・・・」

「昨日妹に会いに行って、妹の旦那と話し合いをしてきたんだ。

 いざとなったらビビアンが侯爵家を継ぐって事で了承してもらった」

「えぇッ?」

「俺、25歳だろ? 母と祖母は、既に誰でもいいから婚姻をっ!! ていうスタンスだったからリアの事を話した途端に上機嫌になったから心配いらない。

 親父は・・・ 」


 ちょっと言い難そうに躊躇するレイモンド。


「?」


 下から彼を覗き込むと、困った顔で眉を下げるレイモンドの顔が見えた。


「ロイド卿に魔境に連れて行かれたから、まぁ無視していいよ。

 来週辺りには説き伏せられて帰ってくるだろ」

「えぇ!? お祖父様がなんで?」


   魔境って、あのドラゴンがうじゃうじゃいる魔境よね? 普通の人の神経じゃ耐えられない場所だよね?! と思わず遠い目になるリアーヌ—— それを考える彼女自身は彼らと意思疎通ができるため平気だったりするのだが・・・


「まぁ、親父はロイド卿を崇拝してるから喜んでると思う・・・ 

 多分だけどね」


 ホントかな、と思わず首を傾げるが、フラメア侯爵の頑固さ加減はレイモンド経由で聞いているためそれくらいのダメージを受けないと息子に向かって『うん』と素直になれないのだろうと納得してしまう。


「・・・・・・ いいのかしら」


 微妙な顔のリアーヌの頬をレイモンドの右手がするりと撫でて耳の下の柔らかな曲線を堪能しようとそのまま動きを止めた。


「大丈夫。ロイド卿は味方だから」


 そう言いながら彼は微笑んだ。


「え?」

「そもそも彼は俺の剣の師匠だからね。

 ・・・俺は親父や祖父に剣を習った訳じゃないんだ。

 敢えて違う戦い方をしないとあいつらに勝てなかったから、7歳の時にロイド卿に弟子入りしたんだ」

「えええええええええええぇえ?!」

「ロイド卿の後押しもあって、公爵ご夫妻も俺とリアの婚約の事認めてくれたんだよ」


 ちょっとだけ恥ずかしそうに目を伏せる彼の表情に、リアーヌの心臓が


『きゅうぅんッ!』


 と締め付けられるように、滅茶苦茶ときめいてしまったのは不可抗力である。



 ×××


 
 一方さっさと先に階段を降り切っていたフロイラインだったが、リアーヌのびっくりした声で思わず振り返る。


「おお~。青春だねえ・・・」


 と、二人の仲睦まじそうな様子にうんうんうんうんと腕組みをしながら納得する。


「みーちゃんて男っ気が皆無だったから恋愛偏差値0だろうけど、あの様子なら大丈夫そうだね」


 ニコニコしながら、階段でわちゃわちゃしている二人に生暖かい視線を送る。


「あれ? みーちゃんのお守りが・・・」


 フロイラインにはリアーヌの胸元に下げられている銀色の護符が黄色く点滅して見えたのである。

 同様にリアーヌの頬に手を当てていたレイモンドの指も青い光がチカチカと点滅し始める。


「え、近くにハロルド王子が来てるって事?」


 フロイラインが小首を傾げた。


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