上 下
67 / 90
7章 東部辺境伯領

67.結婚相手は王子様?

しおりを挟む


 王妃の実家でもあるカスターネ家は代々東の辺境伯としてこのカスターネ領を守っている一族だ。

 カートレット王国建国初期より『武のカスターネ』として有名で、隣国との国境近くの魔獣が出没する大森林地区をどう守るかという問題に突き当たった時、自らこの地に赴く事を申し出た忠臣の末裔である。

 実直、勤勉、そして優れた身体能力を代々受け継ぐ家系であり騎士を目指す者が男女関係なく多いのが特徴で、王族主催のパーティーや茶会といった交流の場でもこれまた男女関係なく騎士のような衣装で出席することが多い為少々変わり種なのだが『カスターネですから』の一言が社交界でも免罪符のようになっており、周りも納得してしまうという不思議な一族でもある。


 王妃殿下、つまりウィリアムの母であるアレクシア・カートレットは現当主の実妹で幼い頃から剣の名手と名高い兄としのぎを削り合う程の武闘派だったのだが学園での成績もこれまた飛び抜けて良かったらしい。
 更には騎士を目指すが故に礼儀正しいまっすぐな性格をしており、それを好ましく感じた前国王夫妻に乞われ王太子妃になったという経歴がある。


 ――この娘なら王太子と国を任せても大丈夫だ――


 前国王夫妻は成人を祝う夜会で彼女を見つけた時にそう感激らしい・・・


 まぁ、そんな訳で。


 どちらかというと現国王と彼女との相性や好みは関係なく王命で王子妃になった彼女だったが地頭の良さで王子妃業も難なく熟し、めでたく子も男児2人女児1人を国王との間に成して責任を全うしたわけだ。

 そこに愛はあるかと問われれば『情なら・・・』と答える程度の認識の愛情と夫婦生活だった気がするが、まあまあ安定の王族ライフを過ごしているのが現状だ。


 今現在は彼女の息子達2人も大きく関わっての結果である事は一部の人間しか知らない事実だが・・・・



 ×××



 「だって、ウィリアム兄様達は私の従兄いとこでしょう? アレクシア様はお父様の妹だから私の叔母様だわ。なんで仲良くしちゃダメなのよ!?」

  
 ぶすくれた顔になり近場にあったクッションを抱きかかえると、目に涙を溜めてウィリアム達を向かい側のソファからキッと睨むマリアンヌ。

 特にシルフィーヌをに敵意を剥き出しにしているように見えて、ウィリアムは溜息を付く。


「マリアンヌ。確かにお前は俺の従妹だが王族ではない。だからいくら俺がお前の従兄でも身分がお前より高い者に対して礼儀にのっとった対応をお前自身は俺達にしなくちゃいけないんだよ。それがルールだからだ。カスターネ伯にも伯爵夫人にも家庭教師にもその事は教わったはずだ」

「でも、昔は何も言われなかったわ」

「それはお前が幼かったからだ。お前はもう9歳だろう? 淑女としてのマナーは身につけねば自分が後々のちのち困るんだぞ?! お前の王族に対する態度が貴族達の間で問題視されかねないのがなぜ分からん? 」


 言い募るウィリアムの横に座るシルフィーヌちらりと見てから


「私は兄様達のどちらかと結婚するの! だからそんなの関係ないの! それで王族になるんだからっ!」


 ――『またそれか・・・』


 と小さくウィリアムが零したのをシルフィーの耳が拾った。



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る

花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。 その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。 何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。 “傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。 背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。 7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。 長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。 守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。 この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。 ※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。 (C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

もふきゅな
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

処理中です...