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6章 殿下魔獣討伐へ
51.そういうトコやぞ〜
しおりを挟む「ま。今迄通りに王族としての執務はあるし、魔獣討伐遠征はあるし。前世持ちだからって何も現状が変わるわけじゃないわ」
王妃がシレッとメイドが運んできた紅茶に口を付けた。
「やることは今迄と一緒。ちょっとだけやるせない気持ちになる記憶が増えただけよ」
はぁ、とため息を付く。
「別に現状に不満があるわけじゃないし。旦那がちょっとだけダメンズに交代してるけど」
「「ダメンズ・・・」」
「だって、ただの脳筋よ? 女の子や騎士達の前ではカッコつけちゃって、文官達には迷惑かけてさー。まあ顔がイイから許すけど」
「顔で許すんですか」
アダムが呆れたように呟く。
「不細工よりイケメン顔のほうが見る分には楽しいじゃない。まー王様だから、衣食住は困らないし。それって大事よ?」
「「まぁ・・・確かに」」
「要らないことしないように手綱を今迄以上にガッチリ取らなくちゃとは思うけどね」
「え?」
「気がつかなかった? 件の本では書かれてないけど、ヒロインの恋の成就に陛下が結構絡んでる雰囲気があるでしょ? 高位貴族の婚約白紙撤回だとか、婚約破棄に関しての権限が派閥も身分も関係なく関与出来るのはあの人くらいでしょ? ヒロインに肩入れするのが最高権力者じゃあ、いくらなんでも太刀打ちできないわよ?」
「「・・・・」」
「しかもあのオリヴィエ嬢、見た目が陛下の好みど真ん中でしょ? 何が起こるか分かんないわよ」
「なるほど」
王妃の言葉で、ウィリアムが
「フィーも似た事を言ってたな」
「「?」」
「俺と彼女の婚約は普通じゃない魔法契約付きだから、簡単に破棄できない。だからそれを無効にする為に修道院に送られたんじゃ無いかって。で、ソレを決められる人物は国王か、その家の当主だからって・・・」
「アーバスノット公爵がそんな事をするはずがないわね」
王妃が神妙な顔になる。
「公爵はフィーちゃんがウィルのことを誰よりも好きだって知ってるからこの婚約自体を喜んでるから。それとあの人子煩悩だから、娘を修道院に送るなんて無慈悲な事する訳からね」
「え・・・?」
思わずポカーンと間抜けな顔になるウィリアム。
「なぁに? フィーちゃんがアンタの事好きだってひょっとして知らなかったの? 鈍感ねぇ」
「え・・・」
思わずアダムの顔を振り返るウィリアム。
「兄上、鈍いんですもんね。そういうトコロ」
「え?」
呆れ顔の弟が
「シルフィーヌ嬢は兄上のこと大好きですよ? 気がついてないの兄上本人だけじゃないですか? 本当に仕事には有能なのに、残念な人ですねえ」
「えええぇ・・・だって、俺中身がオッサンだし」
「兄上の見た目は普通に17歳ですよ? しかも陛下に似てイケメンですし。寧ろ嫌いになる要素が少ないんじゃないですか? 何でそんなに自信無いんですか・・・」
不思議そうな顔をする弟を見ながら、ティーカップに砂糖をサラサラ入れるウィリアム。
「・・・」
「ちょっと、ウィリアム? ティーカップにお砂糖を何杯入れる気なの?」
「あ」
気が付くとティーカップの中には、紅茶色に染まった砂糖の山が出来ていた・・・
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