君と恋をしたいのに、なかなか始まらなかった君との恋の物語 〜攻略対象の王子様と悪役令嬢(仮)〜

３章 ゲーム開始？

２５. シルフィーヌ・アーバスノット②

　ウィルの前世は私よりずっと大人だったから乙女ゲームのことは知識として知ってる位で全くプレイは経験が無くて私が何でヒロインを警戒してるのかが分からないみたい――前世も彼は男の人だったみたいから仕方ないんだけどね。

　このゲームって全年齢対象ってわけじゃ無かった筈で――17歳以上が対象だったと思うんだけど――結構際どいシーンとかも実はあって、ヒロインのオリヴィエとウィルのエロシーンも存在してる。

　ソレをクリアしちゃうと彼はオリヴィエ以外の女性を一切を受け付けなくなるの。

　勿論婚約者の私も切り捨てられ、そこで私は彼と引き離されてしまう。

　だって私ってゲームでは当て馬の立ち位置で、しかも悪役令嬢だったから・・・

　スマホのアプリゲームだったから最終的に私がどうなっちゃうのかは分からなかったけど、私がヒロインを排除しようとして彼に断罪されて修道院に送られるっていうストーリーなのは分かってる。


　だから７歳で初めて会った時から乙女ゲームが始まる迄にウィルと出来るだけ下準備しようって決めて、ノートに書き留めて来た。

　でも必死で作業をしていくうちに気が付いたんだけどヒロインも当て馬の令嬢達も、何ていうか裏事情が全く描かれてなかったから、細かい経緯が分からないままの部分も意外と多かったのよね。

　この世界に生まれ変わって生活して来たからこそわかるんだけど、ホントに設定があやふやだったんだなって思う。

　この世界は乙女ゲームに酷似してるし、そうじゃないかとも思う事も多いんだけどここで生きてるんだっていう実感をする度に見えなかった矛盾点が沢山見えてくるの・・・


　まあゲームに全部は詰め込むことは出来ないんだろうけど。

　人が生きていくってホントにたくさんの出来事の繰り返しで、小さな事の繰り返しなのよ。

　ゲームになってる経緯なんて前後関係なく切り取った一部分でしか無い。


　でも起こることはゲームのストーリーに近い事が起こってたりするから、違和感が半端ない。

　やっぱり強制力が働いてるんだろうか・・・



　×××



　危惧してた通り、ウィルが17歳になった途端にヒロインだと思えるオリヴィエと名乗る儚い容姿の美少女が現れた。

　彼女の行動は聞いてるだけならゲームと大差が無い感じだ。

　これから一体どうなるのか不安で仕方ないけどウィルと一緒にいると、なんとでもなりそうな気がしちゃってるから不思議。


　でも１個だけ分かってることがある。


　私は絶対にウィルから離れたくないし、絶対に彼は私を裏切らないって事だ。

　それは出会ってから８年近く一緒に過ごしてきた彼との信頼関係があるから。


　強制力やヒロインなんかに、私も絶対に負けないんだからね！