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3章 ゲーム開始?

20.中庭の茶会

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 「フィー!」


 王宮内の中庭にしつらえた茶会の席に美しく着飾った婚約者が2人掛けのセティーに優雅に座っているのが見えた。

 ウィリアム王子の瞳の色である青いドレスに彼から贈られたパパラチアピンクのルビーを使ったネックレスとピアスで彩られた彼女はとても綺麗だ。

 彼女の正面のウィングバックチェアに座っているのは王妃で、その横には第2王子の婚約者で侯爵家の御令嬢が優雅にシェーズロングソファーに腰掛けていた。

 どうせ後からアダムも来るのだろう。


「「ウィリアム殿下にご挨拶を申し上げます」」


 令嬢2人が同時に立ち上がり軽いカーテシーを、王妃は鷹揚に扇を口元に寄せる。


「女性同士の茶会に乱入ですか?」


 母である王妃がクスクス笑いながら、王子に婚約者の横を指し示した。



 ×××



「その令嬢にも困るわね」


 ウィリアムの報告を非公式な形、つまり茶会という席の愚痴で受けた王妃が眉を寄せる。


「独身女性が既に婚約者のいる男性に近付くことが何を意味するのかご存知ないのでは?」


 侯爵令嬢が一瞬顔をしかめたが、直ぐに微笑みを顔にまとう。


「貴族家の養女になったばかりだし・・・追々理解すると良いけど」


 ウィリアムのすぐ後に現れたアダム王子も婚約者と共にソファーに座り、眉根を寄せた。


「それとアボット領の鉱石事業に関しては、陛下の取り仕切りにいささか不安があるのよねぇ」


 王妃が溜め息をつきながら、ウィリアムとアダムの顔を交互に見つめた。


「貴族院に任せる案はどうなりました?」


 アダムの言う貴族院に任せるという案は、王家主体ではなく潤沢な資産のある貴族家の賛同者を募って王家や男爵家もある程度投資し、共同事業扱いで開発をしてはどうかということである。

 それならば王家も男爵家も利益を得られる。

 王子達2人は鉱石に関してその方針を国王に進言していた。


「陛下が首を縦に振らないのよね~」

陛下親父にやらせちゃ駄目ですよ。アレに関しては将来性はあっても未確定ですから、安定した結果が出せる利益試算が出るまでは国費はぎ込めません。民の税金ですから。それとも陛下の私有財産ぶっ込むんですか? それなら許可します」

「ウィリアム、財政になると厳しいわねえ~」

「陛下が大雑把だから俺とアダムが悩むんです。そのせいで財務官達に泣き付かれる身にもなってください」


 そう言って苦々しい顔で紅茶の入ったカップを口に運ぶウィリアム。


 ゲームの裏事情は分からないが、多分このウィリアムのシビアな意見は彼の前世の職業によるものであって、乙女ゲーム自体には無関係なんだろうな~、と宇宙猫みたいな表情になるシルフィーヌ。


「で、そのクッキーとやらは?」

「魔塔の検査機関に送りました。変なモンが入ってたら困りますので」


 ウィリアム王子、更にシビアであった。


「それと側近達はどうするの?」

「執務室に呼出して、シメときます」


 放課後の部室裏かな~と、些か遠い目になるシルフィーヌ嬢である。


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