163 / 189
四章.転生聖女と冒険者ミハイル
悪をやっつける王子様
しおりを挟む翌日ミゲルとミリア、お爺ちゃんの三人が神殿で明日の式典の打ち合せをしている所にクレス王子とゲイル王子が転移魔法で突然現れた。
「あのね、母上から伝言でね、トリステスの皇太子からティリア・ティーダー侯爵令嬢に正式に婚約の申込みがあったんだってさ」
クレスがチョコレートを口に放り込む。
「でね、それの交換条件で悪の皇女はハイドランジアにはもう二度と来れないんだってさ」
クッキーをモグモグしながらゲイルがキャンディに手を伸ばす。
「え、どうしてですか? 」
ソファーに座るお爺ちゃんの両脇でお菓子を口にしながら双子が続ける。
「昨日のお昼ごろ皇女がフリージア城を抜け出して離宮に行ったんだよね」
「僕らはずっと悪の皇女を見張ってたんだ。そしたらコソコソお城を抜け出していったんだよね。あの人足がめちゃくちゃ早いんだよびっくりしたよ」
「だからね、がんばって走ってついて行ったんだよ。そしたら離宮の庭に入って行っちゃってさ」
「あの人が叔父上に近寄ったら捕まえていいって母上が言ってたから僕達が捕まえたんだよ。メルに使う為の魔法を使ってグルグル巻きにして庭に置いといてね、父上と宰相と魔眼のディーンを連れてったんだ」
「そしたらディーンが『皇太子に報告します』って言ったからじゃあお兄さんも連れて来たらいいじゃんて思ったから離宮の庭へ連れてったらさ~ 何かな、分かんないけど皆が笑い出したんだよね~ 」
「「大人って分かんないね」」
「「「?」」」
全員が首を傾げる。
××××××××××
黒塗りの大型の馬車にはトリステスの国旗にも描かれている鷹の紋章が入っている。
誰がどう見ても、トリステスの皇族の使用する格式高い馬車であるが・・・
「俺が簀巻きにする手間が省けて良かったです」
魔眼のディーンが皇太子に薄ら笑いを向け盗賊の様な台詞を述べた。
「まさかあの後すぐに城を抜け出すとは・・・」
額に手を置いてため息をつく皇太子カイル。
彼らの向かいの座席の家庭教師兼護衛兼侍女のリンダが、
「このまま船に運ぶんですか? 」
眼鏡をクイっと指で上げながら足元の山積みになったクッションの上に転がっている皇女を冷めた目で見る。
口にスカーフで猿轡をはめたのは実の兄であるカイルである。あまりにも喚き散らすので自ら手を下す羽目になった・・・
体中に巻き付いているロープは銀色に輝いていて、魔法で練り上げた呪縛だと双子の王子達に言われたモノで、邪なモノを捕縛する為のものだと説明されて頭が更に痛くなった。
「このロープ自体は魔法なのでハイドランジアの国境を越えれば勝手に消えるそうだ。あの王子達がそう言っていたし、魔術師達もそう保証してくれた。できれば船に乗ったら解ける魔法が良かったが・・・」
「主港ってハイドランジアの国境を越えたトコのやつに乗るんですよね・・・」
実に嫌そうにディーンが言うと
「そこまで面倒見きれんと、双子の王子達に言われたんだから仕方ないだろ」
はあ、とため息を更に吐く皇太子。
「国境越える前に、普通のロープでサクッと縛っときますか?」
リンダがサラッとそう言いながら、自分の手荷物の中から綿ロープを取り出した。
「そうだな。逃げられて俺がティリアと結婚出来なくなるのは困るし、そうするか・・・」
足元のミノムシが『ム~!』という抗議の声をあげているが、三人は全く動じない。
「そもそも帰る準備をしろと言ったそばから、離宮に忍び込んだお前が悪いんだからな。ロザリア、お前は今回の事でハイドランジアには二度と行けないどころか、トリステスから一歩も出せなくなったんだから覚悟しとけよ」
皇太子の額に青筋が立っているのは見間違いでは無いだろう。
馬車は国境にある港町へ向いて進んで行く。
『ム~!』という、姫君の声は馬車の音と共に遠ざかっていくのであった・・・
13
お気に入りに追加
188
あなたにおすすめの小説
お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。
可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」
行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。
相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。
でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!
それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。
え、「何もしなくていい」?!
じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!
こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?
どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。
二人が歩み寄る日は、来るのか。
得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?
意外とお似合いなのかもしれません。笑
サラシがちぎれた男装騎士の私、初恋の陛下に【女体化の呪い】だと勘違いされました。
ゆちば
恋愛
ビリビリッ!
「む……、胸がぁぁぁッ!!」
「陛下、声がでかいです!」
◆
フェルナン陛下に密かに想いを寄せる私こと、護衛騎士アルヴァロ。
私は女嫌いの陛下のお傍にいるため、男のフリをしていた。
だがある日、黒魔術師の呪いを防いだ際にサラシがちぎれてしまう。
たわわなたわわの存在が顕になり、絶対絶命の私に陛下がかけた言葉は……。
「【女体化の呪い】だ!」
勘違いした陛下と、今度は男→女になったと偽る私の恋の行き着く先は――?!
勢い強めの3万字ラブコメです。
全18話、5/5の昼には完結します。
他のサイトでも公開しています。
美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。
天災
恋愛
美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。
とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる