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四章.転生聖女と冒険者ミハイル
突撃するは・・・
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絶対あの方は私の伴侶! そう決めたのが十二歳の時。
彼が遊学でトリステスに初めて訪れた時に皇城のパーティー会場でお会いした時に一瞬で好きになったわ。
昼間のティーパーティーだったけど、他の貴族子息たちと比べてひときわ美しい所作でカップを傾け、お兄様達二人と会話をしていたわ。
言ってることはチンプンカンプンだったけど・・・
一週間の滞在中には一緒にお食事もしたし、ダンスレッスンもお相手をしたの。
彼と踊ると羽が生えたように体が軽くて、とても楽しかったのを覚えているわ。
足は一回だけ踏んづけたけど、彼は笑って許してくれたの。
他の貴族たちだと一回のダンスで十回は踏んでしまうから、皆避けるのが下手なんだと思う。
お兄様達と剣術の手合わせをするって聞いたから、見学に差し入れを持って行ったら『ありがとうございます』って物凄く素敵な笑顔でお礼を云われて嬉しかった。
剣術の試合も、ものすごく強いって聞いてたけどまさかずっと年上のお兄様達より強いとは思わなかった。
騎士団の勝ち抜き戦で優勝したって聞いてびっくりしたわ。
観客席にいた帝国の貴族の令嬢たちに囲まれて山のようにお花やプレゼントを渡されて困った顔をされていたのを覚えてるわ。
そりゃあそうよね、私が見てるんだもの。
彼は優しいから、冷たくあしらうなんて出来ないものね。私の目の前で他の令嬢たちからプレゼントを受け取ったら私が悲しむもの。
でもいいの。
モテるのは素敵だから仕方ないもの。
最後に私に戻ってきてくれればいいんだから。
滞在の最終日にはきっと私との婚約の申込みをしてくれるはずだから我慢したの。
お兄様達との交流の合間に午後のお茶をしようと誘ったけど、殆どはお兄様と国内の視察で留守だったからがっかりした。
でも必ずお菓子やお花をお土産に買ってきてくれて、それだけで嬉しくてドキドキしたわ。
最終日のパーティーで一人でホールから出ていったのを見かけたから、ついて行こうとして護衛騎士に止められたのは悔しかったわ。
男性専用のドレスルームとかあるなんて知らなかったんだもの。仕方ないわよ!
その翌日、早朝にハイドランジアに出立したらしくてお見送りができなかったのが悔しくて侍従を叱ったら何度も起こしましたって口答えされたから、クビにしたわよ。
お父様に婚約の申込みをし忘れて帰ったらしいから、こっちから申し込みをしてほしいって言ったらもうちょっと待つようにいわれたの。
だから代わりに何度も手紙を送ったけど一度だけ返事が来て、婚約はする気が無いことと、手紙は書くのが嫌いなことを書いてあったから、返事はいらないからってお手紙をしたのよ。
それと婚約期間無しでそのまま婚姻を結んでくれるって言うのは凄い嬉しかったからお礼の手紙も書いておいた。
お父様がハイドランジアに行くときに付いて行って何度もデートしようと思ったけど、学園の寮に住んでいて会えなかったの。
だから私に会えなくても寂しくないように寮へ持って行ってもらおうと思って、私の髪の毛を使った女の子のお人形を人形師に特別に作らせて私だと思ってくださいっていうカードを添えて彼の誕生日に送ったのよね。
お人形の手に私の爪を付けたのはやり過ぎかなって思わないでも無かったけど。
あれは結局どこへ行ったのかしら? 彼は優しいからきっと受け取ってくれてたはずよね。
お休みの前日にフリージア城に帰ってきて、夜会では何度かお会いできる機会もあったんだけど気分が優れないって直ぐに退室してしまうのよ。
結局は会えてないのと一緒だわよね。
だから学園をスキップして一年早く卒業したって聞いて凄く嬉しかったのに、国の視察に出ちゃって全然会えなかった。
視察から帰ったらしいって聞いたから直ぐにハイドランジアに飛んでいったらフリージア城じゃなくて、静養のために東の離宮住まいになったって言うんですもの。
びっくりしてお見舞いに直ぐ行ったんだけど、その晩は帰ってこなかったのよね。
だからいつでも会いにこれるように私の寝室と彼の寝室に転移スクロールを設置しておいたのよ。
それで納得してトリステスに帰ったら接近禁止命令が出たの・・・
どうして? 彼の事がこんなに好きなのに・・・
これで今回会えなかったら、聖王に認定されちゃって益々会えなくなっちゃうじゃない!
××××××××××
「まあ、人形は呪術師が作った呪いの人形だったらしくてな、王宮魔道師の鑑定に引っかかって国から正式にトリステスに抗議文を送ってくれたんだよ。手紙はセバスが気を利かして止めてくれてたんだけど、それも抗議文と一緒に複製を送った。あと離宮に押しかけてきた時は、離宮から連絡があって騎士団の寮にそのまま泊まったんだよ。で、翌朝騎士団の朝稽古のときに真っ青になったセバスが飛んできて、寝所に魔法陣の書かれた紙が設置してあるって云うんで、見に行ったら転移のスクロールだった・・・行き先はもちろんアレの私室だった」
疲れたように侯爵家の執務室のソファーに座り両手で額を抑えて項垂れているミゲルに対して、
立派なストーカーですね・・・
と言いたかったが、自分以外はお爺ちゃん位にしか通じないので止めておいた。
母もマーサも執事も笑顔が引き攣っている。
父は多分知っているのだろうな・・・真顔で頷いてる。
「まあ、ミゲル。今日は大神殿に泊まれ。セバスには後でメルを遣いに出せばよいでのう」
「ああ・・・そうさせて貰うと有り難い」
力なく答えるミゲルだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
お読み頂きありがとうございます。
彼が遊学でトリステスに初めて訪れた時に皇城のパーティー会場でお会いした時に一瞬で好きになったわ。
昼間のティーパーティーだったけど、他の貴族子息たちと比べてひときわ美しい所作でカップを傾け、お兄様達二人と会話をしていたわ。
言ってることはチンプンカンプンだったけど・・・
一週間の滞在中には一緒にお食事もしたし、ダンスレッスンもお相手をしたの。
彼と踊ると羽が生えたように体が軽くて、とても楽しかったのを覚えているわ。
足は一回だけ踏んづけたけど、彼は笑って許してくれたの。
他の貴族たちだと一回のダンスで十回は踏んでしまうから、皆避けるのが下手なんだと思う。
お兄様達と剣術の手合わせをするって聞いたから、見学に差し入れを持って行ったら『ありがとうございます』って物凄く素敵な笑顔でお礼を云われて嬉しかった。
剣術の試合も、ものすごく強いって聞いてたけどまさかずっと年上のお兄様達より強いとは思わなかった。
騎士団の勝ち抜き戦で優勝したって聞いてびっくりしたわ。
観客席にいた帝国の貴族の令嬢たちに囲まれて山のようにお花やプレゼントを渡されて困った顔をされていたのを覚えてるわ。
そりゃあそうよね、私が見てるんだもの。
彼は優しいから、冷たくあしらうなんて出来ないものね。私の目の前で他の令嬢たちからプレゼントを受け取ったら私が悲しむもの。
でもいいの。
モテるのは素敵だから仕方ないもの。
最後に私に戻ってきてくれればいいんだから。
滞在の最終日にはきっと私との婚約の申込みをしてくれるはずだから我慢したの。
お兄様達との交流の合間に午後のお茶をしようと誘ったけど、殆どはお兄様と国内の視察で留守だったからがっかりした。
でも必ずお菓子やお花をお土産に買ってきてくれて、それだけで嬉しくてドキドキしたわ。
最終日のパーティーで一人でホールから出ていったのを見かけたから、ついて行こうとして護衛騎士に止められたのは悔しかったわ。
男性専用のドレスルームとかあるなんて知らなかったんだもの。仕方ないわよ!
その翌日、早朝にハイドランジアに出立したらしくてお見送りができなかったのが悔しくて侍従を叱ったら何度も起こしましたって口答えされたから、クビにしたわよ。
お父様に婚約の申込みをし忘れて帰ったらしいから、こっちから申し込みをしてほしいって言ったらもうちょっと待つようにいわれたの。
だから代わりに何度も手紙を送ったけど一度だけ返事が来て、婚約はする気が無いことと、手紙は書くのが嫌いなことを書いてあったから、返事はいらないからってお手紙をしたのよ。
それと婚約期間無しでそのまま婚姻を結んでくれるって言うのは凄い嬉しかったからお礼の手紙も書いておいた。
お父様がハイドランジアに行くときに付いて行って何度もデートしようと思ったけど、学園の寮に住んでいて会えなかったの。
だから私に会えなくても寂しくないように寮へ持って行ってもらおうと思って、私の髪の毛を使った女の子のお人形を人形師に特別に作らせて私だと思ってくださいっていうカードを添えて彼の誕生日に送ったのよね。
お人形の手に私の爪を付けたのはやり過ぎかなって思わないでも無かったけど。
あれは結局どこへ行ったのかしら? 彼は優しいからきっと受け取ってくれてたはずよね。
お休みの前日にフリージア城に帰ってきて、夜会では何度かお会いできる機会もあったんだけど気分が優れないって直ぐに退室してしまうのよ。
結局は会えてないのと一緒だわよね。
だから学園をスキップして一年早く卒業したって聞いて凄く嬉しかったのに、国の視察に出ちゃって全然会えなかった。
視察から帰ったらしいって聞いたから直ぐにハイドランジアに飛んでいったらフリージア城じゃなくて、静養のために東の離宮住まいになったって言うんですもの。
びっくりしてお見舞いに直ぐ行ったんだけど、その晩は帰ってこなかったのよね。
だからいつでも会いにこれるように私の寝室と彼の寝室に転移スクロールを設置しておいたのよ。
それで納得してトリステスに帰ったら接近禁止命令が出たの・・・
どうして? 彼の事がこんなに好きなのに・・・
これで今回会えなかったら、聖王に認定されちゃって益々会えなくなっちゃうじゃない!
××××××××××
「まあ、人形は呪術師が作った呪いの人形だったらしくてな、王宮魔道師の鑑定に引っかかって国から正式にトリステスに抗議文を送ってくれたんだよ。手紙はセバスが気を利かして止めてくれてたんだけど、それも抗議文と一緒に複製を送った。あと離宮に押しかけてきた時は、離宮から連絡があって騎士団の寮にそのまま泊まったんだよ。で、翌朝騎士団の朝稽古のときに真っ青になったセバスが飛んできて、寝所に魔法陣の書かれた紙が設置してあるって云うんで、見に行ったら転移のスクロールだった・・・行き先はもちろんアレの私室だった」
疲れたように侯爵家の執務室のソファーに座り両手で額を抑えて項垂れているミゲルに対して、
立派なストーカーですね・・・
と言いたかったが、自分以外はお爺ちゃん位にしか通じないので止めておいた。
母もマーサも執事も笑顔が引き攣っている。
父は多分知っているのだろうな・・・真顔で頷いてる。
「まあ、ミゲル。今日は大神殿に泊まれ。セバスには後でメルを遣いに出せばよいでのう」
「ああ・・・そうさせて貰うと有り難い」
力なく答えるミゲルだった。
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お読み頂きありがとうございます。
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