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四章.転生聖女と冒険者ミハイル

襲来

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 「伝令です! 蜂の魔獣が現れました! 」


 伝令役の騎士がロビーに飛び込んできた。
 ロビーに居た冒険者達が全員が立ち上がり各々の武器を手にする。


「数は不明大群ではありません。目測で推定六体。村の入り口付近を旋回中。」

「親が帰ってきたんだな」

「ワイバーンの雛に麻酔をかけに戻ってきたんでしょう」


 ミリアは首を傾げながら


「それにしては数が多い気もしますが・・・」

「兎に角行くぞ。マーキングして棲家を突き止めるんだ。マリン! 」


 黒い魔女が立ち上がりながら


「任せなさーい! 」


 オホホホホと高笑いをしながらマジックワンドを振り回す


「ミリアちゃんにいいとこ見せなくちゃね~♡ 」

『『『『はあ? 』』』』

「マリンお姉さん頑張って下さい」


 子供のようにキラキラの瞳で見上げるミリアンヌ。


「オッケーよ! 」


 ウフン♡ とウィンクして色っぽく笑うマリン。

 ちょっと赤い顔になっちゃうミリアンヌ。

 
「姉キが変な扉を開いた・・・」


 複雑な顔の男達である・・・


××××××××××


 冒険者達が村の門に到着すると上空の蜂に向かって王宮魔導師達が望遠鏡を使って観測しているところだった。

 騎士団は村中に避難を促すために散らばっていく。


「手出しせずに待っててくれるとは有り難いわねっ! 」


 マリンがそう言いながらワンドを右手でバットみたいに振り回すと、青い光が玉になって飛んでいく。


「よっしゃ~! 一匹ゲット」


 当たった蜂は一瞬だけ落ちかけたがすぐ持ち直すと魔導師達を警戒してから、上空を飛ぶだけである。


「次行くよホレッ! ホレッ! 」


 スパーンともうニ体に光が当る。


「う~んと、もうチョイだな」


 ジューンが手で日差しを遮りながら数を数えている。

 マーキングされた固体は若干発光しているらしく目の良いものなら裸眼でも確認できるらしい。


「ねーちゃん、あと三つだ」

「オーライ。いくわよ。ほれっ! 」

「お、当たったぞ。あとニ体」


 なんか、バッティングセンターみたいだな~・・・ とミリアが思ってたのは内緒である。


 地図の上のレーダーを確認していた冒険者達が、


「この辺から離れねえなぁ」


 と、ボヤいている。


「ミリーどう思う? 俺は魔導師達や騎士団の連中が原因で降りてこねえんじゃないかと思うんだ」

「メルちゃんが言ってた魔力の強さですか」

「ああ。騎士団も魔道士も一般人から比べれば桁違いに魔力があるとされてる。其れが集団で下にたむろしてんだ。警戒して当然だろう」

「ですね。あの蜂達はワイバーンと互角に戦闘してる訳ですから同等の魔力はある筈ですもんね・・・」


 そう話していると


「いいわよ~ 全部マーキングして終わったわよ! 」


 マリンの声が響いたのである。


××××××××××


「お久しぶりです、侯爵令嬢」


 マーロウとマーロウの父である王宮魔導士長シンフォニア伯爵が、一旦こちらに引き上げてきた。


「お久しぶりです。その後マーロウ様はお元気ですか? 」


 魔道士のローブを纏い、フードを深く被るマーロウに目をやると少年はコクコクと縦に首を動かす。


「良かったです」


 ニコリと笑う、ミリア。


「ご令嬢もお元気そうで、安心しました。殿下に一応お話は聞いておりましたが、ずっとお会いしておりませんでしたので」


 相変わらずのイケメンバリトンボイスの伯爵様である。


「今回は御足労頂きましてありがとうございます」


 ミリアが深々とお辞儀をすると、慌てるシンフォニア親子。


「いえ将軍閣下の指示でもありますし、そのように頭を下げずとも・・・」

「そうです。新種の魔獣などは我々魔道士にとっては素晴らしい研究対象なのですから」


 そう言いながら、フードの奥の少し冷たく見える美しい顔が恥ずかしそうに綻ぶ。まるで花が咲いたように可憐な笑顔である。


 うお。流石は攻略対象者・・・美人さんだ・・・うーん・・・


「ところで我々が近くに居ると降りてこないとはどういった訳でしょうか? 」


 イケボでミリアに問いかける伯爵。


「実は魔獣の特徴というか、魔力の感知の仕組みが我々人と違うらしいと言う事が分かったんです」

「「ほほう! それは是非お聞かせ願いたいですね! 」」


 二人が同時に興奮してミリアに詰め寄り、思わず一歩後ろに下がってしまう。


 あ、やっぱり、この人達間違い無くヲタクだわ・・・


 ミリアが遠い目になったのは言うまでもない。


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お読み頂きありがとうございます。


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