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終章.承認の儀とハッピーエンド
聖なる祈り
しおりを挟む大神官の声を合図に二人は、壇上から降りて聖堂の中央に配置されている尋常では考えられないサイズの六角柱の結界石まで進むと掌を当てる。
真っ直ぐに伸びる六角柱は天井を突き抜けていて実は大神殿の屋根に先が突出している。
高さは推定でも十五メートル位はあるんじゃないかと云われおり、周りは大人が三人くらい手を繋いでやっと届く位のサイズの巨大な結界石である。
これに対して自分たちの神聖力を注ぎ込み、満たせるかどうかを来客者達に確認させるのが承認の儀である。
普通の魔道士や魔法使いではこの大きな結界石を満たすほどの魔力供給量がない為に気絶するか、下手をすれば死んでしまうのである。
「それでは始めよ」
お爺ちゃんの合図で二人同時に力を流し込むと、透明な六角柱の中にまるで砂時計の砂が溜まっていくように金色の粒子が溜まっていく。
あっという間に天井まで満たされた柱はまるで金色に輝く金属の様に見える。
招待客たちがほう、とため息をつくのが聞こえる。
「次に『ルクス』に祈りを捧げよ」
お爺ちゃんの合図で天と地に住まう神の原型とされる『ルクス』に感謝の祈りを捧げる。
ミリアは杖を、ミゲルはサーベルを両手に持つと目を閉じようとしたが、
「まずはミリアンヌからじゃ。二人共互いの祈りを可視化するのじゃよ。目を開けて互いの違いをしかと見届けよ」
そう言われて目を開ける。ミリアが一瞬だけ小首をかしげてから
「では、私から」
そう言うと頭の中心に集中して溜めていた祈りのエネルギーを開放した。
金に輝く結界石を中心に金色の光の柱が音もなく立ち上がる。件の森の『聖女の癒し』と同じものである。
ほお、と会場のあちこちから小さな声が聞こえる。
「次はミゲルじゃ」
「はい。では」
ミゲルもミリア同様に祈りのエネルギーを開放する。
今度は六角の柱を中心にさざ波の様に床を金の光が埋め尽くしていく。その様はまるで金色の雲が敷き詰められたように見える。件の畑の時と同じである。
高さは大人の膝くらいまであり、表面がユラユラと揺れており、観客たちも神官たちも全員が金色の雲の上に立っているように見えた。
『『形が違うじゃん? 』』
二人が首を傾げると大神官が
「では次に二人で向き合って両手を繋ぎなさい」
そう言うとニヤリと笑う。
先ずミゲルはサーベルを鞘に戻し、ミリアはロッドを小さくして首からかける。
そしてお互いに首を傾げながら手を繋いだ途端に金の光が聖堂中に満ち溢れ、あっという間に天井まで満たしてしまった。
「縦横の違いとニコイチってこういう事か」
ボソッとミゲルが小さく呟いたのをミリアが不思議そうに見上げた。
「ジジイ曰く、俺らは二人で一人前なんだってさ」
「そうなんですか」
「お前が縦で俺が横なんだとさ」
「あ、なるほど。でも手を繋ぐと魔力が循環してるんでしょうか、なんかすごく楽ですね」
「ああ、安定してる感じがする」
二人で部屋を見回すと段々と光が落ち着いていくのが見える。
チリチリと小さな鈴の音がして金の雪が聖堂の中に降り始めた。
招待客たちが小さな声で囁きながら、指で雪を触ると鈴の音を残して消えていく。
「奇跡の雪じゃなぁ」
お爺ちゃんが目を細めてボソリとそう呟いた。
招待客達は何やら嬉しそうな顔で掌に雪を受け止めて感心している。
大神官の合図で神官達が慌ててクリスタルボウルを鳴らす。
「これにて承認の儀を終了とする」
大神官が厳に告げると、観客たちも一斉に恭しくお辞儀をする。
ミリアはミゲルにエスコートされて壇上に戻り大神官の後ろに並ぶと、ホッとため息をついたのであった・・・が。
「続けて今回はワシ個人より、認定の義を執り行う」
「「「「「「?」」」」」」
大神官の言葉にその場にいた全員の動きがピタっと止まったのであった。
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