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三章.転生聖女と春の庭
過去の所業に青ざめる
しおりを挟む「じゃあ、ギルドに行ってくっからジジイ頼んだぞ。あとミリーは無理すんなよ」
「分かったわよ小僧さっさと行ってきな」
「いってらっしゃーい」
神殿の中央区で何故かミゲル殿下の出発をお爺ちゃんと見送るミリアンヌ。
『イイなあー。私も冒険クエスト受けてみたい・・・』
今日の殿下は、短めの茶色い皮のマントと白い麻のシャツにブルーデニムのような生地のチュニックの上から革の胸当てを付けている。チュニックと同じ素材のトラウザーズはジーンズみたいに見え、茶色い皮のゴツい編み上げブーツがよく映えている。
チュニックのウェスト部分には茶色い革のソードベルトが巻かれており、ラピスラズリの玉の付いた黒い房飾りがサーベルの柄で揺れている。
一番最初に森で出会ったときと似たような格好だが、目の色が平民によくありがちな暗い茶色に変化しているので随分と雰囲気が違う。
まあ、色が変わったところでイケメンなのは変わらないのだが。
××××××××××
朝から魔法の座学の講義を受け繊細な魔法の操作を練習している所へ、いきなりミゲルが冒険者の出で立ちで転移してきた。休憩と称して席を外したお爺ちゃんと何やら細かい打ち合わせをしたかったらしく、割と長い間話していた。
「いいですよね。自分の色を変えることが出来たら、お忍びでお出掛けし放題ですよね・・・」
正直言って自在に自分の色を変えることが出来るのは羨ましい。色変えの魔法はどんな属性の魔力でも魔法さえ使えれば出来る筈なのだが、何故か苦手なミリアンヌ。
ミリアの色は髪も目も、かなり人の目をひいてしまい、どう逆立ちしても貴族にしか見えないので滅多なことでは庶民街には出掛けられない。
ましてや今はこの間のダンジョン騒ぎでちょっとした有名人である。
このまま出かけたりしたらどこで身バレするかヒヤヒヤものになってしまう・・・
「まあ、元々ミゲルは器用な子で、魔力操作も繊細かつ大胆な魔道士タイプだったからねえ」
お爺ちゃんが笑いながら、
「この世界の既存の魔法を習得するのがどっちかって言うとアンタは不得意なのよねえ。自己流でアレンジすると上手く出来る感じだわね。見て倣えって感じのね。イメージ先行型とでも言うのかしら? でもまあ、大型の持続型魔法は案外得意だからミゲルと二人で一つって感じなのかもしれないわねえ」
しかしお爺ちゃんの指導の下、聖属性と光属性以外の魔法もキッチリ活かせる様になり様々な魔法を生み出している王弟殿下・・・
比べて自分は、使う事の出来る魔法の種類と成長スピードが全く違っているような気がするので正直焦る。
ただ、目的が全く違うので焦ることのないようにとお爺ちゃんに毎回窘められるミリアである。
××××××××××
「さて、ミリー」
「はい? 」
「今迄色々と教えてきたコトを、分かってるというのが前提だけどね」
「? 」
「アンタ、ミゲルみたいな理論派じゃないから、座学はお終い」
「へ? 」
「基本的な事は頭に入ってるけど、考えるとこんがらがって、発動も遅れる事が分かったから」
「う」
「こないだの大型魔獣に使った魔法も、自分で編み出したらしいし」
「編み出したというか、過去に見たゲームエフェクトを脳内再生した感じ? 」
「それでいいのよ。やっぱりゲームオタクだったわねえ」
「・・・はあ」
「アクションモノが多かったわけ? 」
「あー、ニ●テン●ーとか●ガとかのアクション系が多かったかも。『乙花』みたいなのは仕事で数字との戦いで、プレイとか考えたことも無かったですねえ」
「・・・最初にそれ確認しとけば良かったわね」
はぁ、とため息を付きながら
「ミゲルがさっき来たときに言ってたけどアンタ、ゲームエフェクトの再現なら楽勝に出来るらしいからそこを集中的に掘り下げたほうが良さそうなのよね」
「え、エフェクトの再現? 」
「前世の事は、ほぼ忘れてる癖にゲームの画面はキチッと覚えてるってことは、生活がほぼゲームだらけってことでしょ? 頭の中に刷り込みで技が入るほどのオタクだったって事じゃないの」
「・・・言われてみれば」
ダニーの魔剣にしろ、こないだの●クシオマにしろ・・・
「ゲームエフェクトの再現かも・・・」
「ほらね」
「ぐ・・・」
「聖女に必要な神聖力を使う『祈り』系は全部習得済みだから」
そう言いながら一冊のノートを渡された。
「思いつく限りコレに覚えてるゲームエフェクトで魔法っぽいモノ書き込むのよ」
「ええぇ~ 著作権が」
「煩いわよ伏せ字で誤魔化しゃいいのよ。兎に角今日からコレがアンタの勉強よ」
過去の恥を晒すことになりそうな予感に青ざめるミリアであった・・・
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執筆担当も青ざめる・・・
お読み頂きありがとうございます!
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