上 下
67 / 189
ニ章.転生聖女と転生聖王

十二歳で・・・成人だと?

しおりを挟む

 「魔力が姉さまと一緒という事と、馬車で殿下方が言った『大神官様と同じ立場』ということを鑑みるに、ミゲル殿下は『聖王』の条件を満たしているということではないでしょうか? 」


 それまで話を聞いていたダニーが考えながら喋る。


「殿下御自身はその結果をご存じではなかったのですか? 」

「検査したのは昨日だぞ。結果が一体いつ来たんだろうな? 」

「「お知らせは来てないよ! 昨日お爺ちゃんと検査官て人が父様と宰相にそう言ってただけだよ」」

 
 二個目のケーキをチョコレートに狙いを定めながら、フォーク片手に双子達が声を上げた。


「どこで言ってた? 」

「「父様の執務室~ 」」


 チョコケーキを小皿にサッと取り分け、王子たちの目の前の置くとススッと引き上げるセバスチャン。


「「美味し~い」」


 口を揃える双子達を見ながら額を押さえる王弟殿下。


「お前ら又、兄上の所へ忍び込んでたのか・・・」

「ううん、隠れんぼしてただけだよ」

「そうだよ。侍従が見つけに来ない所に隠れてただけだよ」


 口をもぐもぐさせキョトンとしている彼らに悪気はきっと無い。と思いたい・・・


「殿下。王家は優秀な間者を育ててますねえ~ 」

「やめろ。ミリー。優秀とか言ったらダメだぞ。あとが怖い・・・」


 聞こえないように小声になる殿下とミリアであった。


××××××××××


 ガゼボから少し離れた所でメルが双子をからかうように木に登っている。

 その下から光る縄のような物を魔法で出しては、上に飛ばす双子達。メル、子守りが大変そうである。

 とうとう枝の上で丸くなって目を閉じてしまった。

 一応マーサとセバスチャンが近くで見張っているので大丈夫だろうが、何故猫はあそこまで子供が苦手なのだろう・・・


 それを眺めながら、会話をするミリアとミゲル、そしてダニエル。


「殿下が『聖王』になると、何か王族としては都合が悪いことがありますか? 」


 こういう話をする時のダニーは天使から次期侯爵の顔をしてるなーと感心して見入っている姉のミリア。


「成人男子の王族が減るってだけさ。あとは諸外国との結びつきの為の政略結婚の手駒が減るくらいかな? それ以外は無いだろうな。俺はアレクが立太子したら継承権は放棄する予定だったし。よくわからん」

「公務とかは無いんですか」

「俺は嫡男じゃ無いからな。子息の第ニ子以降は騎士団に所属するのは王族も例外じゃない。今は第一騎士団の剣術顧問以外の公務は無いな」


 先刻の騎士団での剣術指南? を思い出したのか遠い目になる姉弟。


「王族は学園に入学すると同時に公務も始まるんだ。それまではアレクの代わりにやってたモノもあったがもう全て本人に引き継がせてる。直轄地の経営も練習がてら一部やらせてるはずだ」

「王族って厳しいんですね」

「王族は学園に入る十二歳迄に全て一通り出来る様に仕上げとくんだよ。一般貴族の男は十九歳で成人だがな」


 肩を竦めるミゲル


「王族にとっての学園は、勉強というより予行演習なんだ。十九歳なんて悠長な事を言ってられねえからな。国の舵を取るんだ。責任が桁違いだからな仕方がないさ」

「本当は十二歳で成人て事ですか」

「それも個々の能力次第だがな。王太子ってのは失敗が許されない立場なんだよ。だから国を動かす為の練習を学園でやってるみたいなもんで、呑気に勉強と社交だけしてりゃいい訳じゃないんだ。アレクがそこら辺を分かってりゃいいけどな」


××××××××××


「へ、クシュン! 」


 生徒会役員の執務室でクシャミを盛大にする第一王子アレクシス。


「風邪かなあ」

「春とはいえ、まだまだ寒いですからね。ヘソ出して寝てないですよねアレク」

「そんなわけ無いだろう! 」

「・・・」

「ハリー、貴方も風邪ですか? 」


 ぼ~っとしているハリーに声をかけるクロード


「城の朝稽古から帰ってきてから、ずっとアレだよ。悪いものでも喰ったのかな? 」

「尊い・・・」

「風邪ではなさそうですよね。どうせ王弟殿下絡みですよ。ほっときましょう」

「そうだなあ」


 急に机にガンッと音をさせて額をぶつけるハリー。


「おいおい、どうしたんだよハリー? 」

「ハリー? 大丈夫ですか」


 顔を上げると鼻から血がタラリと・・・


「うわああぁ~! 大丈夫か? 医務室行くか? 」

「鼻抑えて、下向くんですよ下っ! ハンカチ、ハンカチ! 」


 耳まで真っ赤になったハリーはその後、医務室で知恵熱と診断されたらしい・・・



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


犠牲者ニ人目ダヨー

ハリー・ストレリチア伯爵子息也
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました

さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア 姉の婚約者は第三王子 お茶会をすると一緒に来てと言われる アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる ある日姉が父に言った。 アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね? バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た

当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。

可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?

【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました

八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます 修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。 その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。 彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。 ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。 一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。 必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。 なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ── そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。 これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。 ※小説家になろうが先行公開です

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」  行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。  相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。  でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!  それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。  え、「何もしなくていい」?!  じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!    こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?  どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。  二人が歩み寄る日は、来るのか。  得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?  意外とお似合いなのかもしれません。笑

サラシがちぎれた男装騎士の私、初恋の陛下に【女体化の呪い】だと勘違いされました。

ゆちば
恋愛
ビリビリッ! 「む……、胸がぁぁぁッ!!」 「陛下、声がでかいです!」 ◆ フェルナン陛下に密かに想いを寄せる私こと、護衛騎士アルヴァロ。 私は女嫌いの陛下のお傍にいるため、男のフリをしていた。 だがある日、黒魔術師の呪いを防いだ際にサラシがちぎれてしまう。 たわわなたわわの存在が顕になり、絶対絶命の私に陛下がかけた言葉は……。 「【女体化の呪い】だ!」 勘違いした陛下と、今度は男→女になったと偽る私の恋の行き着く先は――?! 勢い強めの3万字ラブコメです。 全18話、5/5の昼には完結します。 他のサイトでも公開しています。

美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。

天災
恋愛
 美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。  とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

処理中です...