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ニ章.転生聖女と転生聖王

王弟も暴発する

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 東の離宮。

 本来は国王の側室や、寵妃、庶子等が充てがわれていた離宮だが、ここ百年程は王妃以外の寵妃を娶りたがる国王は一人もおらず国王も一夫一妻制と制定されたのが、五十年ほど前である。

 このような経緯がある為、この何十年か殆ど使われてこなかった離宮である。

 現国王の弟であるミゲルが近年になり使用したことによって最近やっと稼働し始めた城であり、周辺の整備が追いつかず手入れ不足、警備不足が否めない場所もあったのだが今はメルヘンという聖獣が住み着き神殿並みに神聖結界が張り巡らされ難攻不落の間諜泣かせな建物に仕上がってしまった。


「最近は庭も美しく整備が整いました」


 セバスが庭のガゼボにあるティーテーブルに可愛らしいイチゴの乗ったケーキを置く。

 ここは離宮の南にある庭園。

 今は春なので、ミニ薔薇の垣根の向こうにガーベラやラナンキュラス、チューリップやスミレといったありとあらゆる色の花々が咲き誇っている。


「以前はここまで手は入れられる時間的な余裕はなかったのですがメルがここに来て以来、色々と手間が省けるようになりまして・・・」


 暗にスパイ排除の時間が無くなった、と言っているセバスチャン。


「良かったですね」


 ニッコリと笑顔で返事をしながら膝の上のメルをモフる手は自動制御らしく、高速で撫で摩っている。

 高性能掃除ロボットのようである。


「とても美しいお庭ですね」

「有難うございます」


 ダニエルも香り高い紅茶を口にしながら、セバスチャンに笑顔を向ける。

 ミゲルが着替に行っている間、天気も良いので庭園でのティータイムをと提案されここで寛いでいる次第である。

 双子の王子達は先程セバスの置いたケーキを頬張りながら、イチゴの取り合い合戦に忙しそうだ。


「ごゆっくりお寛ぎ下さい」


 と、恭しく礼をして下がっていくセバスと入れ替わりに、カッチリとした騎士服からうって変わった装いで王弟殿下がやって来た。


「スマン、待ったか? 」


 第ニボタンまでを外しラフに着崩した白いスタンドカラーシャツにベージュのトラウザーズ、チャコールグレーのフラノ生地に金糸で小さな薔薇の刺繍が前立部分に入ったジャケットを肩に羽織った殿下は、生乾きの黒髪も相まって妙に色っぽい・・・

 うーん、目のやりどころに困るなぁ、と考えて。

 あれ、何で? と首を傾げるミリアンヌ。


「ミリー? どうした」

「は、ひゃい? 」


 ジト目になるミゲル。


「何か気になるな。何だよ? 」

「いえ、何でもありません」


 何故、ボケーッと見とれたり目のやりどころに困るのかは自分でも分からない・・・


「それよりミゲル様、神殿の再検査やったんですか? 馬車の中で王子殿下達がそんな事を仰ってましたが」

「ああ。なんか通達が来てな。いきなりジジイが転移魔法で王城に検査官を引っ張ってきて、客間で検査になった」

「・・・無茶苦茶ですね」

「俺もビックリしたぞ。陛下も宰相もジジイに無理やり引っ張ってこられて立ち会わされたんだがな~ 」


 遠い目をするミゲル。


「? 」

「いやな、俺が触るとさ水晶が木端微塵にぶっ壊れて客間がボロボロになったんだよ。本気出せってジジイが言うもんだからさあ~ 」


 ワハハと笑う、王弟殿下。


「検査官は気を失うし、宰相は部屋の修理費がって叫ぶし・・・陛下は真っ青だしさ。ジジイだけヘラヘラ笑ってたわ」


 額に落ちてきた湿った黒い前髪を掻き上げる。


「一応俺の稼ぎから修理費用出すからって宰相に言っといたけどその後、なーんも言ってこねえからどうしたんだろうな」


・・・殿下、それって


「俺、よく演習場もぶっ壊すからさ、将軍に本気を出すなって言われてるんだよなぁ。ジジイが言うから本気でやったけど良かったんかな? 」


 あ、そうか六歳の検査以降は強制じゃないし、聖女の条件も知らないから・・・


「ミゲル様、多分それ私と同じ魔力量と、能力だと思いますよ。私も六歳の検査で同じことやって部屋を半壊させたんですよね」

「え? 」


 膝上のメルが髭をピクピクとさせこちらを見上げ、ミゲルに目を向ける。


「御主人様、発言をよろしいでしょうか」

「どうしたメル? 」

「御主人様とミリア殿は、ほぼ同じ魔力と同程度の魔力供給量をお持ちなのをひょっとしてご存知ないのでしょうか? 」


 あ、生きてる魔力検査機がここにいた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


聖~~ ていう人は、確実に何か壊すんよな~


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