66 / 189
ニ章.転生聖女と転生聖王
王弟も暴発する
しおりを挟む
東の離宮。
本来は国王の側室や、寵妃、庶子等が充てがわれていた離宮だが、ここ百年程は王妃以外の寵妃を娶りたがる国王は一人もおらず国王も一夫一妻制と制定されたのが、五十年ほど前である。
このような経緯がある為、この何十年か殆ど使われてこなかった離宮である。
現国王の弟であるミゲルが近年になり使用したことによって最近やっと稼働し始めた城であり、周辺の整備が追いつかず手入れ不足、警備不足が否めない場所もあったのだが今はメルヘンという聖獣が住み着き神殿並みに神聖結界が張り巡らされ難攻不落の間諜泣かせな建物に仕上がってしまった。
「最近は庭も美しく整備が整いました」
セバスが庭のガゼボにあるティーテーブルに可愛らしいイチゴの乗ったケーキを置く。
ここは離宮の南にある庭園。
今は春なので、ミニ薔薇の垣根の向こうにガーベラやラナンキュラス、チューリップやスミレといったありとあらゆる色の花々が咲き誇っている。
「以前はここまで手は入れられる時間的な余裕はなかったのですがメルがここに来て以来、色々と手間が省けるようになりまして・・・」
暗にスパイ排除の時間が無くなった、と言っているセバスチャン。
「良かったですね」
ニッコリと笑顔で返事をしながら膝の上のメルをモフる手は自動制御らしく、高速で撫で摩っている。
高性能掃除ロボットのようである。
「とても美しいお庭ですね」
「有難うございます」
ダニエルも香り高い紅茶を口にしながら、セバスチャンに笑顔を向ける。
ミゲルが着替に行っている間、天気も良いので庭園でのティータイムをと提案されここで寛いでいる次第である。
双子の王子達は先程セバスの置いたケーキを頬張りながら、イチゴの取り合い合戦に忙しそうだ。
「ごゆっくりお寛ぎ下さい」
と、恭しく礼をして下がっていくセバスと入れ替わりに、カッチリとした騎士服からうって変わった装いで王弟殿下がやって来た。
「スマン、待ったか? 」
第ニボタンまでを外しラフに着崩した白いスタンドカラーシャツにベージュのトラウザーズ、チャコールグレーのフラノ生地に金糸で小さな薔薇の刺繍が前立部分に入ったジャケットを肩に羽織った殿下は、生乾きの黒髪も相まって妙に色っぽい・・・
うーん、目のやりどころに困るなぁ、と考えて。
あれ、何で? と首を傾げるミリアンヌ。
「ミリー? どうした」
「は、ひゃい? 」
ジト目になるミゲル。
「何か気になるな。何だよ? 」
「いえ、何でもありません」
何故、ボケーッと見とれたり目のやりどころに困るのかは自分でも分からない・・・
「それよりミゲル様、神殿の再検査やったんですか? 馬車の中で王子殿下達がそんな事を仰ってましたが」
「ああ。なんか通達が来てな。いきなりジジイが転移魔法で王城に検査官を引っ張ってきて、客間で検査になった」
「・・・無茶苦茶ですね」
「俺もビックリしたぞ。陛下も宰相もジジイに無理やり引っ張ってこられて立ち会わされたんだがな~ 」
遠い目をするミゲル。
「? 」
「いやな、俺が触るとさ水晶が木端微塵にぶっ壊れて客間がボロボロになったんだよ。本気出せってジジイが言うもんだからさあ~ 」
ワハハと笑う、王弟殿下。
「検査官は気を失うし、宰相は部屋の修理費がって叫ぶし・・・陛下は真っ青だしさ。ジジイだけヘラヘラ笑ってたわ」
額に落ちてきた湿った黒い前髪を掻き上げる。
「一応俺の稼ぎから修理費用出すからって宰相に言っといたけどその後、なーんも言ってこねえからどうしたんだろうな」
・・・殿下、それって
「俺、よく演習場もぶっ壊すからさ、将軍に本気を出すなって言われてるんだよなぁ。ジジイが言うから本気でやったけど良かったんかな? 」
あ、そうか六歳の検査以降は強制じゃないし、聖女の条件も知らないから・・・
「ミゲル様、多分それ私と同じ魔力量と、能力だと思いますよ。私も六歳の検査で同じことやって部屋を半壊させたんですよね」
「え? 」
膝上のメルが髭をピクピクとさせこちらを見上げ、ミゲルに目を向ける。
「御主人様、発言をよろしいでしょうか」
「どうしたメル? 」
「御主人様とミリア殿は、ほぼ同じ魔力と同程度の魔力供給量をお持ちなのをひょっとしてご存知ないのでしょうか? 」
あ、生きてる魔力検査機がここにいた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
聖~~ ていう人は、確実に何か壊すんよな~
本来は国王の側室や、寵妃、庶子等が充てがわれていた離宮だが、ここ百年程は王妃以外の寵妃を娶りたがる国王は一人もおらず国王も一夫一妻制と制定されたのが、五十年ほど前である。
このような経緯がある為、この何十年か殆ど使われてこなかった離宮である。
現国王の弟であるミゲルが近年になり使用したことによって最近やっと稼働し始めた城であり、周辺の整備が追いつかず手入れ不足、警備不足が否めない場所もあったのだが今はメルヘンという聖獣が住み着き神殿並みに神聖結界が張り巡らされ難攻不落の間諜泣かせな建物に仕上がってしまった。
「最近は庭も美しく整備が整いました」
セバスが庭のガゼボにあるティーテーブルに可愛らしいイチゴの乗ったケーキを置く。
ここは離宮の南にある庭園。
今は春なので、ミニ薔薇の垣根の向こうにガーベラやラナンキュラス、チューリップやスミレといったありとあらゆる色の花々が咲き誇っている。
「以前はここまで手は入れられる時間的な余裕はなかったのですがメルがここに来て以来、色々と手間が省けるようになりまして・・・」
暗にスパイ排除の時間が無くなった、と言っているセバスチャン。
「良かったですね」
ニッコリと笑顔で返事をしながら膝の上のメルをモフる手は自動制御らしく、高速で撫で摩っている。
高性能掃除ロボットのようである。
「とても美しいお庭ですね」
「有難うございます」
ダニエルも香り高い紅茶を口にしながら、セバスチャンに笑顔を向ける。
ミゲルが着替に行っている間、天気も良いので庭園でのティータイムをと提案されここで寛いでいる次第である。
双子の王子達は先程セバスの置いたケーキを頬張りながら、イチゴの取り合い合戦に忙しそうだ。
「ごゆっくりお寛ぎ下さい」
と、恭しく礼をして下がっていくセバスと入れ替わりに、カッチリとした騎士服からうって変わった装いで王弟殿下がやって来た。
「スマン、待ったか? 」
第ニボタンまでを外しラフに着崩した白いスタンドカラーシャツにベージュのトラウザーズ、チャコールグレーのフラノ生地に金糸で小さな薔薇の刺繍が前立部分に入ったジャケットを肩に羽織った殿下は、生乾きの黒髪も相まって妙に色っぽい・・・
うーん、目のやりどころに困るなぁ、と考えて。
あれ、何で? と首を傾げるミリアンヌ。
「ミリー? どうした」
「は、ひゃい? 」
ジト目になるミゲル。
「何か気になるな。何だよ? 」
「いえ、何でもありません」
何故、ボケーッと見とれたり目のやりどころに困るのかは自分でも分からない・・・
「それよりミゲル様、神殿の再検査やったんですか? 馬車の中で王子殿下達がそんな事を仰ってましたが」
「ああ。なんか通達が来てな。いきなりジジイが転移魔法で王城に検査官を引っ張ってきて、客間で検査になった」
「・・・無茶苦茶ですね」
「俺もビックリしたぞ。陛下も宰相もジジイに無理やり引っ張ってこられて立ち会わされたんだがな~ 」
遠い目をするミゲル。
「? 」
「いやな、俺が触るとさ水晶が木端微塵にぶっ壊れて客間がボロボロになったんだよ。本気出せってジジイが言うもんだからさあ~ 」
ワハハと笑う、王弟殿下。
「検査官は気を失うし、宰相は部屋の修理費がって叫ぶし・・・陛下は真っ青だしさ。ジジイだけヘラヘラ笑ってたわ」
額に落ちてきた湿った黒い前髪を掻き上げる。
「一応俺の稼ぎから修理費用出すからって宰相に言っといたけどその後、なーんも言ってこねえからどうしたんだろうな」
・・・殿下、それって
「俺、よく演習場もぶっ壊すからさ、将軍に本気を出すなって言われてるんだよなぁ。ジジイが言うから本気でやったけど良かったんかな? 」
あ、そうか六歳の検査以降は強制じゃないし、聖女の条件も知らないから・・・
「ミゲル様、多分それ私と同じ魔力量と、能力だと思いますよ。私も六歳の検査で同じことやって部屋を半壊させたんですよね」
「え? 」
膝上のメルが髭をピクピクとさせこちらを見上げ、ミゲルに目を向ける。
「御主人様、発言をよろしいでしょうか」
「どうしたメル? 」
「御主人様とミリア殿は、ほぼ同じ魔力と同程度の魔力供給量をお持ちなのをひょっとしてご存知ないのでしょうか? 」
あ、生きてる魔力検査機がここにいた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
聖~~ ていう人は、確実に何か壊すんよな~
12
お気に入りに追加
188
あなたにおすすめの小説
お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た
当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。
可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」
行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。
相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。
でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!
それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。
え、「何もしなくていい」?!
じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!
こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?
どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。
二人が歩み寄る日は、来るのか。
得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?
意外とお似合いなのかもしれません。笑
サラシがちぎれた男装騎士の私、初恋の陛下に【女体化の呪い】だと勘違いされました。
ゆちば
恋愛
ビリビリッ!
「む……、胸がぁぁぁッ!!」
「陛下、声がでかいです!」
◆
フェルナン陛下に密かに想いを寄せる私こと、護衛騎士アルヴァロ。
私は女嫌いの陛下のお傍にいるため、男のフリをしていた。
だがある日、黒魔術師の呪いを防いだ際にサラシがちぎれてしまう。
たわわなたわわの存在が顕になり、絶対絶命の私に陛下がかけた言葉は……。
「【女体化の呪い】だ!」
勘違いした陛下と、今度は男→女になったと偽る私の恋の行き着く先は――?!
勢い強めの3万字ラブコメです。
全18話、5/5の昼には完結します。
他のサイトでも公開しています。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる