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一章.聖女と出会いと王宮と

ミゲルと望美と剣聖と。

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 ミゲル・ハイドランジア。
 現ハイドランジア国王フィリップの弟で現在十八才。冬で十九歳になる。

 美しい黒髪は肩までの長さのウルフカットで、光魔法の上級である聖属性魔法が使いこなせる証の金色の星が散った王家特有の濃いラピスブルーの瞳を持つ美丈夫である。


××××××××××


 幼少期より文武共に周りの同年代の貴族子弟より抜きん出て秀でており、六歳当時の王宮付教師陣に『神童』と言われる。

 十二才~十七才まで通う貴族学園も飛び級し十五才で卒業。その後一年間国内各地を視察という体で巡り辺境での魔獣討伐を単独で続ける。

 十六才で王都に戻り騎士団に入隊し。

 騎士団長ストレリチア伯爵の指導のもと一騎士として研鑽。

 十八才で『剣聖』の称号を国王より与えられる。

 これがミゲルの略歴なのだが実は十六才の騎士団入隊の直ぐ後で、前世である宮田望美の記憶を取り戻してしまった。

 その為それ以前の記憶が一時期失われかけたのだが王宮医師と王宮魔道士長の機転による退行魔術により、幼少期~少年期の記憶を辛うじて留めることに成功した。

 その代わり、前世である望美の記憶も融合したため半年程混乱し東の離宮にて静養と称して剣の稽古に没頭する。

 宮田望美は実家が剣道場を経営しており、幼少期より曾祖父、祖父、父の三人によってたかって鍛えられていた過去を持ち二十代後半で師範代の免許取得者となったツワモノである。

 又、曾祖父は居合術の達人でありそちら方面も随分鍛えられていたため、ミゲルと望美の記憶が統合された時に剣術の達人として目覚めてしまった。

 半年間の静養を経て仕上がったミゲルの太刀筋は、この国の主流を占めるロングソードでの殴り合いの様なほぼ力技というものでもなければ、サーベルでの突きや殴り、浅く切り付けるというものとは全く違っていた。

 彼の剣術は抜き身の刀を持ち続けることは少なく、抜いてすぐ鞘に納めその短い間に相手にダメージを与え動けなくするという魔力と気を練った居合い術に近いものであったため、騎士団での訓練で教えるものとは全く違っていたのである。

 もっとも、十六才半ばで騎士団に戻り普通とは違う太刀筋をからかって来た周りの陰湿な先輩騎士達を完膚無きまで叩きのめしたため、騎士団の中でのミゲルの地位は一年もしないうちに確固たるものになったのだが・・・

 東の離宮での静養期間にミゲルの十五年と宮田の三十年、合計四十五年が融合されてすっかり『剣術馬鹿』に仕上がってしまった年の離れた王弟に『剣聖』という英雄の称号を復活させて授与させたのは国王フィリップの苦肉の策である。

 まあ、規格外に強いし変わってるのは英雄だからねー という言い訳みたいなもんで、それに付いた『剣聖』という称号は免罪符みたいなものである。


××××××××××


「どうやって、って、お前見て分かんないのかよ。峰打ちってやつだよ」

「え、知ってますけど、どうやって・・・」


 目を見開いてキラキラさせながら、興奮で顔を薔薇色に染めて無自覚に攻撃を仕掛けて来るミリア。

 あ~、と呻きながら艶のある黒髪を掻き上げるミゲル。


「修行しろ」

「え、そんな~~ 」


 ぷうッと、膨れっ面になる美少女を見てその場にいた全員が


「「「「「「「ウッ」」」」」」」


 と、声を上げて悶えたのはこれまた不可抗力である。




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パパさんは、ニコニコしてるだけですよね~知ってる。
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