39 / 189
一章.聖女と出会いと王宮と
王宮魔道士長
しおりを挟む「マーロウが行方不明だと? 何故、捜索願いを騎士団に提出しなかった? 」
「それが、その・・・最後にお会いした方が・・・」
「?」
アレク王子が
「あれ? マーロウが姉上の部屋に侍女に連れられて入っていくのを三日前に見かけたぞ。夕方だったかな? それ以外でも、何度も姉上と一緒にいるのを王宮内で見かけました」
「あー、私も王宮内で見かけましたね。一週間くらい前です。それと今日も。王子とハリーも一緒に確認しています。大広間に続く廊下で侍従服を着ていましたが、恐らくあれはマーロウだと思います」
更にクロードが手を挙げて発言した。
「「「「・・・」」」」
宰相が両陛下の方を向き直り
「いかが致しますか? 」
陛下が重々しく口を開いた。
「シンシアをここへ呼ぶように」
××××××××××
捕縛された後、別室に運ばれたティーダー伯爵を王宮侍医と魔道士長が診察した結果、魅了魔法に掛かっていただけでなく魔力の殆どを何者かに奪われていたらしい。
急激に気分が悪い状態になったのは、それが原因だという。
「魔力が枯渇すると、死ぬことはありませんが気絶します。気絶しない程度のギリギリのラインを残して魅了魔法を使われたようですね。中々出来る芸当ではありません・・・」
丸い眼鏡の奥で目を細くして報告するテイラー魔道士長と王宮侍医。
「魔力奪取も魅了も闇魔法ですから、恐らくは魔道士の仕業でしょう」
魔道士になるには基本的に闇魔法が使えるのが条件となり、闇の適正を持つ者は光程ではないとはいえかなり希少だ。
国に個人の適正魔力は記録されており厳重に保管されているので、割り出しは出来るはずだとテイラーは言いながら言葉を続けた。
因みに六歳の魔力検査以降は何も無ければ、十年毎に自主的に行うのが一般的慣習となっていて強制ではない。
「魔力操作にかなり長けている者ですね。気絶寸前まで魔力を奪い意識を保たせてチャームを施し、尚且、発動条件にミリアンヌ嬢だけと限定して暗示を与えています。しかもティーダー伯爵は、全ての術をほぼ同時にかけられたようです。普通の魔道士程度なら気絶させてしまうか、チャームが効力を成さないかのどちらかでしょう」
眉根を寄せて更に言葉を続ける王宮魔道士長。
「ただ、こんなデリケートな魔力操作が出来る魔道士はこの国でも少ないでしょう・・・私が知る限り、私か息子のマーロウぐらいでしょうか・・・ 」
力なく肩を落とすテイラー卿。
「テイラーよ、ミリアンヌ嬢が急に気絶したのも、魔力を一気に奪われたせいなのか? 」
国王陛下がテイラー卿に質問をする。
「恐らくは・・・見てみましょう」
席を立つと
「アークライド侯爵令嬢、お手を」
と言いながら片膝をミリアの前に付き、右手を差し出すテイラー卿。その手に左手を乗せるミリアンヌ。
「間違いなく魔力奪取でしょう。しかもコチラは間違いなくマーロウの魔力の痕跡があります。愚息が誠に申し訳ございません・・・しかしこれは・・・」
と言いながら手を離さないテイラー・・・じっとミリアを見つめている。
「? シンフォニア伯爵どうされましたかな? 」
アークライド侯爵が訝しげに声をかける。
「物凄い魔力供給量です。恐らくは聖王様とほぼ同等でしょう。普通は魔力を奪われると半日以上は起き上がれません。直ぐに目が覚めたという事は、魔力供給が通常の何倍もあるから助かったのでしょう」
「と、言うことは? 」
「普通のご令嬢でしたら恐らく問答無用で魅了で異常状態のティーダー伯爵に・・・」
その一言で、その場にいる全員の顔色が悪くなる。
『犯人絶対許さん! 』
鼻息荒く、決意を固め青筋を額に浮かべたミリアンヌである。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
テイラー・シンフォニアさんは伯爵位ですので、『伯爵』または『卿』『魔道士長』が正しく使われる敬称です。
作者としては、話の流れでなんとな~く使い分けをしてます~
11
お気に入りに追加
188
あなたにおすすめの小説
お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た
当て馬の悪役令嬢に転生したけど、王子達の婚約破棄ルートから脱出できました。推しのモブに溺愛されて、自由気ままに暮らします。
可児 うさこ
恋愛
生前にやりこんだ乙女ゲームの悪役令嬢に転生した。しかも全ルートで王子達に婚約破棄されて処刑される、当て馬令嬢だった。王子達と遭遇しないためにイベントを回避して引きこもっていたが、ある日、王子達が結婚したと聞いた。「よっしゃ!さよなら、クソゲー!」私は家を出て、向かいに住む推しのモブに会いに行った。モブは私を溺愛してくれて、何でも願いを叶えてくれた。幸せな日々を過ごす中、姉が書いた攻略本を見つけてしまった。モブは最強の魔術師だったらしい。え、裏ルートなんてあったの?あと、なぜか王子達が押し寄せてくるんですけど!?
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
女嫌いな辺境伯と歴史狂いの子爵令嬢の、どうしようもなくマイペースな婚姻
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
恋愛
「友好と借金の形に、辺境伯家に嫁いでくれ」
行き遅れの私・マリーリーフに、突然婚約話が持ち上がった。
相手は女嫌いに社交嫌いな若き辺境伯。子爵令嬢の私にはまたとない好条件ではあるけど、相手の人柄が心配……と普通は思うでしょう。
でも私はそんな事より、嫁げば他に時間を取られて大好きな歴史研究に没頭できない事の方が問題!
それでも互いの領地の友好と借金の形として仕方がなく嫁いだ先で、「家の事には何も手出し・口出しするな」と言われて……。
え、「何もしなくていい」?!
じゃあ私、今まで通り、歴史研究してていいの?!
こうして始まる結婚(ただの同居)生活が、普通なわけはなく……?
どうやらプライベートな時間はずっと剣を振っていたい旦那様と、ずっと歴史に浸っていたい私。
二人が歩み寄る日は、来るのか。
得意分野が文と武でかけ離れている二人だけど、マイペース過ぎるところは、どこか似ている?
意外とお似合いなのかもしれません。笑
サラシがちぎれた男装騎士の私、初恋の陛下に【女体化の呪い】だと勘違いされました。
ゆちば
恋愛
ビリビリッ!
「む……、胸がぁぁぁッ!!」
「陛下、声がでかいです!」
◆
フェルナン陛下に密かに想いを寄せる私こと、護衛騎士アルヴァロ。
私は女嫌いの陛下のお傍にいるため、男のフリをしていた。
だがある日、黒魔術師の呪いを防いだ際にサラシがちぎれてしまう。
たわわなたわわの存在が顕になり、絶対絶命の私に陛下がかけた言葉は……。
「【女体化の呪い】だ!」
勘違いした陛下と、今度は男→女になったと偽る私の恋の行き着く先は――?!
勢い強めの3万字ラブコメです。
全18話、5/5の昼には完結します。
他のサイトでも公開しています。
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。
天災
恋愛
美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。
とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる