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一章.聖女と出会いと王宮と

王宮魔道士長

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 「マーロウが行方不明だと? 何故、捜索願いを騎士団に提出しなかった? 」

「それが、その・・・最後にお会いした方が・・・」

「?」


 アレク王子が


「あれ? マーロウが姉上の部屋に侍女に連れられて入っていくのを三日前に見かけたぞ。夕方だったかな? それ以外でも、何度も姉上と一緒にいるのを王宮内で見かけました」

「あー、私も王宮内で見かけましたね。一週間くらい前です。それと今日も。王子とハリーも一緒に確認しています。大広間に続く廊下で侍従服を着ていましたが、恐らくあれはマーロウだと思います」


 更にクロードが手を挙げて発言した。


「「「「・・・」」」」


 宰相が両陛下の方を向き直り


「いかが致しますか? 」


 陛下が重々しく口を開いた。


「シンシアをここへ呼ぶように」


××××××××××



 捕縛された後、別室に運ばれたティーダー伯爵を王宮侍医と魔道士長が診察した結果、魅了魔法に掛かっていただけでなく魔力の殆どを何者かに奪われていたらしい。

 急激に気分が悪い状態になったのは、それが原因だという。


「魔力が枯渇すると、死ぬことはありませんが気絶します。気絶しない程度のギリギリのラインを残して魅了魔法を使われたようですね。中々出来る芸当ではありません・・・」


 丸い眼鏡の奥で目を細くして報告するテイラー魔道士長と王宮侍医。


「魔力奪取も魅了も闇魔法ですから、恐らくは魔道士の仕業でしょう」


 魔道士になるには基本的に闇魔法が使えるのが条件となり、闇の適正を持つ者は光程ではないとはいえかなり希少だ。

 国に個人の適正魔力は記録されており厳重に保管されているので、割り出しは出来るはずだとテイラーは言いながら言葉を続けた。

 因みに六歳の魔力検査以降は何も無ければ、十年毎に自主的に行うのが一般的慣習となっていて強制ではない。


「魔力操作にかなり長けている者ですね。気絶寸前まで魔力を奪い意識を保たせてチャームを施し、尚且、発動条件にミリアンヌ嬢だけと限定して暗示を与えています。しかもティーダー伯爵は、全ての術をほぼ同時にかけられたようです。普通の魔道士程度なら気絶させてしまうか、チャームが効力を成さないかのどちらかでしょう」


 眉根を寄せて更に言葉を続ける王宮魔道士長。


「ただ、こんなデリケートな魔力操作が出来る魔道士はこの国でも少ないでしょう・・・私が知る限り、私か息子のマーロウぐらいでしょうか・・・ 」


 力なく肩を落とすテイラー卿。


「テイラーよ、ミリアンヌ嬢が急に気絶したのも、魔力を一気に奪われたせいなのか? 」


 国王陛下がテイラー卿に質問をする。


「恐らくは・・・見てみましょう」


 席を立つと


「アークライド侯爵令嬢、お手を」


 と言いながら片膝をミリアの前に付き、右手を差し出すテイラー卿。その手に左手を乗せるミリアンヌ。


「間違いなく魔力奪取でしょう。しかもコチラは間違いなくマーロウの魔力の痕跡があります。愚息が誠に申し訳ございません・・・しかしこれは・・・」


 と言いながら手を離さないテイラー・・・じっとミリアを見つめている。


「? シンフォニア伯爵どうされましたかな? 」


 アークライド侯爵が訝しげに声をかける。


「物凄い魔力供給量です。恐らくは聖王様とほぼ同等でしょう。普通は魔力を奪われると半日以上は起き上がれません。直ぐに目が覚めたという事は、魔力供給が通常の何倍もあるから助かったのでしょう」

「と、言うことは? 」

「普通のご令嬢でしたら恐らく問答無用で魅了で異常状態のティーダー伯爵に・・・」


 その一言で、その場にいる全員の顔色が悪くなる。


『犯人絶対許さん! 』


 鼻息荒く、決意を固め青筋を額に浮かべたミリアンヌである。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


テイラー・シンフォニアさんは伯爵位ですので、『伯爵』または『卿』『魔道士長』が正しく使われる敬称です。

作者としては、話の流れでなんとな~く使い分けをしてます~


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