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一章.聖女と出会いと王宮と
ミリアンヌのドレス
しおりを挟むミリアンヌ十四才。彼女は今、非常に悩んでいる・・・
何に悩んでいるかというと、『ミリアのドレス』のデザインを母と侍女が、二人がかりで決めようとするのを阻止する方法である。
ミリア自身は十歳前後からの『茶会』と称する貴族階級特有の『婚約者候補探しの水面下バトル』を思い切り回避してきた。
そりゃあもう切実に回避した。
ケツをまくって逃げ出した。
主に神殿に・・・
だが、十五歳を迎えるこの春。
今回こそは逃さないと、母とマーサがタッグを組んで毎日のように『ファッション手帳』と呼ばれる、お抱え服飾デザイナーによるカタログと布見本を持参し、ミリアの自室に攻め込んでくるのである・・・何故か?
それは、デビュタント。
要するに貴族子女として社交界デビューを果たす為の儀式が近づいてきているからである。
通常十二才から通う貴族学園には、神殿教育(大神官様御用達)を言い訳に、通う必要はなくなった。しかしミリアは未だ聖女認定がまだされていないのである。
何故かというと、筋肉を鍛え過ぎて、全体的に小柄に育ってしまったため、初潮がまだ訪れていないのである。
実は、第二次性徴期を過ぎて大人の身体になり魔力が安定してからでないと、聖女も、聖王(大神官の別称)も認定できないという規則があるらしいのだ。
頭を抱えたミリアに
「女の子が、筋肉鍛え過ぎちゃ駄目ってあれ程言っといたでしょうがっ!」
と、エロ爺ちゃんもとい、大神官様が『激おこ!』になり現在、筋肉を脂肪に多少なりとも戻すべく筋トレ禁止令が出ている最中である。
「だから脳筋は考えなしって言われるのよ! 聖女認定が、できないじゃないのっ!」
流石のお爺ちゃんもそこはスルーできないらしい。
ミリアは前世は男だったので、そういった知識が足りなかった・・・ 聖女認定さえしていれば無理に社交デビューなんぞする必要も無かったのだが、ここに来て計画が頓挫した。
・・・ ミリア痛恨のミスである。
「ドレスはスースーするから嫌なんだけどなあ~」
「何言ってるのミリアちゃん! デビュタントはドレスで、って決まってるのよ~」
「乗馬服、せめてタキシード・・・」
「お嬢様、それは、男性用です」
マーサはそう窘めながら、チョッピリだけタキシードを着たミリアを脳内で想像した。
「似合いそうですけどね・・・」
「・・・ ホントね」
つい母も同意した。母も思わず脳内で想像したようだ。
「じゃあ、タキシードで・・・」
「でも、駄目! そんな事したら、ダーリンが困っちゃう!」
「そうですよお嬢様。アークライド侯爵家の恥になります。幾ら似合ってても・・・ 惜しいですけど・・・」
「ホント、似合いそうよねえ~って、そうじゃないわよう! デビュタントは白いドレスが決まりなんだからねっ!」
「デビュタントだけ?」
「うん。其れだけはドレスよ!」
「じゃあ、ほかは?」
「「うっ・・・」」
母と侍女を、斜め下四十五度の角度から可愛くお強請りポーズでみつめるミリア。大サービスで目をパッチリさせてウルウルさせてみる。
こーいうスチルがあったなあ、と頭の中がシラケているのは内緒だ。
「じゃ、じゃあ、ドレス一着につき、フロックコートと、モーニングを作ってあげるわっ!」
「奥様・・・ 墓穴・・・」
「やった~ お母様ありがとう~♡」
結局のところ、母も可愛いミリアに甘いのであった。
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