71 / 115
〈Another Story〉story of duke and wife
11 続・城下町
しおりを挟む
フロイライン王女の望むがままに服飾店、宝石商、陶器店、菓子店・・・ とまあ、呆れる程に高級店を巡った一行。
途中で足が痛いと何度も何度も文句を云う度に近衛騎士が抱き上げるという信じられない様な出来事が目の前で展開されるのに頭痛を覚え、それとなく何度も城への帰還を勧めたオフィーリアとアンドリュー。
しかし、彼女は頑として譲らず街をもっと堪能したいと言って耳を貸さない。
それどころか、近衛騎士に抱えられたまま散策を続けると言い張り一行を困らせる。
「このままではいつまで経っても視察が終りませんわ」
「確かに」
申し訳無いと頭をペコペコと下げる侍女を他所に、ご機嫌で美形の近衛に横抱きにされたままブティックを指差すフロイラインを見て、静かに美しい額に青筋が立つオフィーリア。
そしてそれを宥めるアンドリュー王子。
「ここまで自由奔放な王女様をなぜ親善大使に選ばれたのか、彼の国お考えが分かりませんわ」
『バシャッ!』と音をさせて例の扇を広げて口元を隠すと
「これで私より一歳年上・・・」
小声だが、確実に軽蔑の色が隠せない。
「アンドリュー様、これが普通なのでしょうか? 私は少々普通のご令嬢より逸脱している自覚は御座いますが、同じ王族のお義姉様ともかなり違うように感じますわ」
「うん。私も同感だよ・・・」
もはや目が泳ぐどころか光を失っているアンドリュー王子。
「又勝手に違う場所に行けと近衛に指示しようとなさっていますわ。侍女も止めております。行きましょう」
腕を組んだままだったオフィーリアが王子の腕から自分の手をスルリと外し、早足で彼女の元へと進み始める。
「あの大きな門は何?」
王女は見上げるような高さの物見櫓のようになった門を指さし近衛に問う。
「この門を潜ると平民街へと繋がっておりまして、これ以上は進む事は予定にありませんので引き返します」
両手を塞がれてしまい護衛も出来ない状態の近衛騎士が若干困り気味で答えている。
当然周りには他にも護衛が控えているが近衛以外は爵位が低い、若しくは爵位のない一般の護衛騎士であり一定の距離を取る必要があり不用意に王女へ近付く事は出来ない。
王女の間近で近衛騎士が守れない以上、貴族街から出るような危険は犯せないので正常な判断である。
「えぇ~、そんなぁ。庶民の暮らしを見ないと視察になりませんわぁ~」
「「「「「・・・・・」」」」」
オフィーリアだけでなく、全員の額の血管が『プチッ』と切れたような気がした。
「フロイライン殿下、予定のお時間が迫っておりますので」
頭を下げすぎで顔色の悪い侍女が彼女に近寄り、予定を告げるが
「えぇ~、だってぇ」
―― 子供かよッ!!
口を尖らせ言い訳をしようとするフロイライン王女に向かって、何かが凄い勢いで飛んできたのを目視確認したのは王女と侍女以外の全員だったが、飛んでくるモノの軌道上にいたのはオフィーリア。
目にも止まらない早い動きでブルーのスカートを蹴り上げ、その手にあっという間に掴んだ編み上げ鞭で飛んできたモノを素早くはたき落とした。
それは彼女が片足で蹴り上げたスカートがフワリと元の形に戻るまでの瞬きする程度の間の出来事で、直ぐ様何事もなかったようにオフィーリアは元の背筋を伸ばした美しい姿勢に戻ったのである。
但し片手には物騒な得物を持ったままだったが。
途中で足が痛いと何度も何度も文句を云う度に近衛騎士が抱き上げるという信じられない様な出来事が目の前で展開されるのに頭痛を覚え、それとなく何度も城への帰還を勧めたオフィーリアとアンドリュー。
しかし、彼女は頑として譲らず街をもっと堪能したいと言って耳を貸さない。
それどころか、近衛騎士に抱えられたまま散策を続けると言い張り一行を困らせる。
「このままではいつまで経っても視察が終りませんわ」
「確かに」
申し訳無いと頭をペコペコと下げる侍女を他所に、ご機嫌で美形の近衛に横抱きにされたままブティックを指差すフロイラインを見て、静かに美しい額に青筋が立つオフィーリア。
そしてそれを宥めるアンドリュー王子。
「ここまで自由奔放な王女様をなぜ親善大使に選ばれたのか、彼の国お考えが分かりませんわ」
『バシャッ!』と音をさせて例の扇を広げて口元を隠すと
「これで私より一歳年上・・・」
小声だが、確実に軽蔑の色が隠せない。
「アンドリュー様、これが普通なのでしょうか? 私は少々普通のご令嬢より逸脱している自覚は御座いますが、同じ王族のお義姉様ともかなり違うように感じますわ」
「うん。私も同感だよ・・・」
もはや目が泳ぐどころか光を失っているアンドリュー王子。
「又勝手に違う場所に行けと近衛に指示しようとなさっていますわ。侍女も止めております。行きましょう」
腕を組んだままだったオフィーリアが王子の腕から自分の手をスルリと外し、早足で彼女の元へと進み始める。
「あの大きな門は何?」
王女は見上げるような高さの物見櫓のようになった門を指さし近衛に問う。
「この門を潜ると平民街へと繋がっておりまして、これ以上は進む事は予定にありませんので引き返します」
両手を塞がれてしまい護衛も出来ない状態の近衛騎士が若干困り気味で答えている。
当然周りには他にも護衛が控えているが近衛以外は爵位が低い、若しくは爵位のない一般の護衛騎士であり一定の距離を取る必要があり不用意に王女へ近付く事は出来ない。
王女の間近で近衛騎士が守れない以上、貴族街から出るような危険は犯せないので正常な判断である。
「えぇ~、そんなぁ。庶民の暮らしを見ないと視察になりませんわぁ~」
「「「「「・・・・・」」」」」
オフィーリアだけでなく、全員の額の血管が『プチッ』と切れたような気がした。
「フロイライン殿下、予定のお時間が迫っておりますので」
頭を下げすぎで顔色の悪い侍女が彼女に近寄り、予定を告げるが
「えぇ~、だってぇ」
―― 子供かよッ!!
口を尖らせ言い訳をしようとするフロイライン王女に向かって、何かが凄い勢いで飛んできたのを目視確認したのは王女と侍女以外の全員だったが、飛んでくるモノの軌道上にいたのはオフィーリア。
目にも止まらない早い動きでブルーのスカートを蹴り上げ、その手にあっという間に掴んだ編み上げ鞭で飛んできたモノを素早くはたき落とした。
それは彼女が片足で蹴り上げたスカートがフワリと元の形に戻るまでの瞬きする程度の間の出来事で、直ぐ様何事もなかったようにオフィーリアは元の背筋を伸ばした美しい姿勢に戻ったのである。
但し片手には物騒な得物を持ったままだったが。
2
お気に入りに追加
2,972
あなたにおすすめの小説
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

婚約者が私のことをゴリラと言っていたので、距離を置くことにしました
相馬香子
恋愛
ある日、クローネは婚約者であるレアルと彼の友人たちの会話を盗み聞きしてしまう。
――男らしい? ゴリラ?
クローネに対するレアルの言葉にショックを受けた彼女は、レアルに絶交を突きつけるのだった。
デリカシーゼロ男と男装女子の織り成す、勘違い系ラブコメディです。

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

理不尽な理由で婚約者から断罪されることを知ったので、ささやかな抵抗をしてみた結果……。
水上
恋愛
バーンズ学園に通う伯爵令嬢である私、マリア・マクベインはある日、とあるトラブルに巻き込まれた。
その際、婚約者である伯爵令息スティーヴ・バークが、理不尽な理由で私のことを断罪するつもりだということを知った。
そこで、ささやかな抵抗をすることにしたのだけれど、その結果……。

【完結】仕事を放棄した結果、私は幸せになれました。
キーノ
恋愛
わたくしは乙女ゲームの悪役令嬢みたいですわ。悪役令嬢に転生したと言った方がラノベあるある的に良いでしょうか。
ですが、ゲーム内でヒロイン達が語られる用な悪事を働いたことなどありません。王子に嫉妬? そのような無駄な事に時間をかまけている時間はわたくしにはありませんでしたのに。
だってわたくし、週4回は王太子妃教育に王妃教育、週3回で王妃様とのお茶会。お茶会や教育が終わったら王太子妃の公務、王子殿下がサボっているお陰で回ってくる公務に、王子の管轄する領の嘆願書の整頓やら収益やら税の計算やらで、わたくし、ちっとも自由時間がありませんでしたのよ。
こんなに忙しい私が、最後は冤罪にて処刑ですって? 学園にすら通えて無いのに、すべてのルートで私は処刑されてしまうと解った今、わたくしは全ての仕事を放棄して、冤罪で処刑されるその時まで、押しと穏やかに過ごしますわ。
※さくっと読める悪役令嬢モノです。
2月14~15日に全話、投稿完了。
感想、誤字、脱字など受け付けます。
沢山のエールにお気に入り登録、ありがとうございます。現在執筆中の新作の励みになります。初期作品のほうも見てもらえて感無量です!
恋愛23位にまで上げて頂き、感謝いたします。

【完結】無能聖女と呼ばれ婚約破棄された私ですが砂漠の国で溺愛されました
よどら文鳥
恋愛
エウレス皇国のラファエル皇太子から突然婚約破棄を告げられた。
どうやら魔道士のマーヤと婚約をしたいそうだ。
この国では王族も貴族も皆、私=リリアの聖女としての力を信用していない。
元々砂漠だったエウレス皇国全域に水の加護を与えて人が住める場所を作ってきたのだが、誰も信じてくれない。
だからこそ、私のことは不要だと思っているらしく、隣の砂漠の国カサラス王国へ追放される。
なんでも、カサラス王国のカルム王子が国の三分の一もの財宝と引き換えに迎え入れたいと打診があったそうだ。
国家の持つ財宝の三分の一も失えば国は確実に傾く。
カルム王子は何故そこまでして私を迎え入れようとしてくれているのだろうか。
カサラス王国へ行ってからは私の人生が劇的に変化していったのである。
だが、まだ砂漠の国で水など殆どない。
私は出会った人たちや国のためにも、なんとしてでもこの国に水の加護を与えていき住み良い国に変えていきたいと誓った。
ちなみに、国を去ったエウレス皇国には距離が離れているので、水の加護はもう反映されないけれど大丈夫なのだろうか。
巻き込まれ召喚された上、性別を間違えられたのでそのまま生活することにしました。
蒼霧雪枷
恋愛
勇者として異世界に召喚されチート無双、からのハーレム落ち。ここ最近はそんな話ばっか読んでるきがする引きこもりな俺、18歳。
此度どうやら、件の異世界召喚とやらに"巻き込まれた"らしい。
召喚した彼らは「男の勇者」に用があるらしいので、俺は巻き込まれた一般人だと確信する。
だって俺、一応女だもの。
勿論元の世界に帰れないお約束も聞き、やはり性別を間違われているようなので…
ならば男として新たな人生片道切符を切ってやろうじゃねぇの?
って、ちょっと待て。俺は一般人Aでいいんだ、そんなオマケが実はチート持ってました展開は望んでねぇ!!
ついでに、恋愛フラグも要りません!!!
性別を間違われた男勝りな男装少女が、王弟殿下と友人になり、とある俺様何様騎士様を引っ掻き回し、勇者から全力逃走する話。
──────────
突発的に書きたくなって書いた産物。
会話文の量が極端だったりする。読みにくかったらすみません。
他の小説の更新まだかよこの野郎って方がいたら言ってくださいその通りですごめんなさい。
4/1 お気に入り登録数50突破記念ssを投稿してすぐに100越えるもんだからそっと笑ってる。ありがたい限りです。
4/4 通知先輩が仕事してくれずに感想来てたの知りませんでした(死滅)とても嬉しくて語彙力が消えた。突破記念はもうワケわかんなくなってる。
4/20 無事完結いたしました!気まぐれにオマケを投げることもあるかも知れませんが、ここまでお付き合いくださりありがとうございました!
4/25 オマケ、始めました。え、早い?投稿頻度は少ないからいいかなってさっき思い立ちました。突発的に始めたから、オマケも突発的でいいよね。
21.8/30 完全完結しました。今後更新することはございません。ありがとうございました!

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる