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6 どうしよう

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「アルフォンソは、この辺りでは珍しい見た目をしていますでしょう? ご家族が全員金髪なのに、彼だけが黒髪で褐色の肌で。昔からいろんな人にいろんなことを言われたみたいなの。不倫で生まれたとか、拾われた子だとか」

 人々は無責任な噂を口にしてそれを広めていく。
 それが娯楽の一部だし仕方ない面があるのはわかる。私だって色んな噂を耳にしたし、聞いた話を誰かに喋っていたもの。
 私、もうそんな噂流すのやめよう。そしてしばらくパーティーには行かないで旅に出ようそうしよう。
 暇だと色んなこと考えてしまうから、お仕事探そうかな……
 最近は女性の社会進出が進んでいて、働く女性は増えている。
 公共施設は特に多いし、結婚や出産を機に辞める人も多いから、定期的に募集、出るのよねぇ。
 まず温泉地で一ヶ月休むとして。
 その手配もしなくちゃな……

「ほんと、どうしようもない噂を流す人、多いわね」

 呆れつつ言うと、クリスティは苦笑する。

「そうねぇ。昨日のパーティーも、貴方やアルフォンソのことを話す方が多かったみたいだし。私も興味津々、といった様子の人たちに聞かれたわ。何があったのか詳しく聞いてないかって」

 あー、そうなるのね。
 人の不幸は楽しいものね。

「確かに、私も色々と声を掛けられたわ。『大変でしたわね』なんて、心にないことをたくさん言われたもの」

 そう私が言うと、クリスティは頷く。

「そうねぇ。仕方ない面があることはわかっているんだけど、私が何も話さないと察するやいなや、話しかけにこなくなったのよ。わかりやすいわね」

 クリスティはさりげなく毒を吐く。そういうところ、好きなのよね。
 そもそもクリスティにも私は詳しい話をしていないし、彼女も聞いてこない。
 さすがに結婚式に呼ぶ話をしていたから報告しないわけにはいかないし、それ以上に怒りを爆発させたくて、婚約破棄された話はしたけど。
 まさかダニエルの結婚相手がクリスティの従兄の婚約者だったなんて……世間は狭いわね。

「私、しばらく温泉地でゆっくりして、仕事でも探すわ。パーティーにでても奇異の目で見られて居心地よくないし」

「それもいいわね。どうせ次の犠牲者が現れて、貴方達の話はすぐ風化するわよ」

「犠牲者って」

 私が苦笑して言うと、クリスティはにこにこ笑って言った。

「だってそうじゃないの。日々どこかで誰かが不幸になって、その話が一気に広まって、そこに新しい犠牲者が現れてどんどん新しい噂が生まれていくんだもの」

 それは確かにそうね。そしてその犠牲者を皆常に探し求めている。
 そう思うとほんと嫌になってくる。

「そうね。だから私、しばらく王都を離れて大人しくするわね」

「ゆっくりしてきて、パティ。不幸なことがあれば必ず幸せなことが起こるから」

 そしてクリスティは手を組んで祈って見せた。
 
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