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7 ベッドの上
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確かに、飛衣がどれだけ俺に愛を囁いても自分から好き、とか愛とか言ったことがなかった。
恋人って自分で言っては見たものの、正直恥ずかしくって仕方ない。
とはいえ他に表現のしようもないだろう。
「だ、だって、恋人以外になんて言えばいいんだよ? ただのクラスメイトで……あんなことしねえし、俺」
言いながら顔が紅くなるをの感じ、思わず飛衣から目を反らす。
なんだよ……これじゃあ、俺、飛衣に恋してるみてえじゃねえか。
あぁ、もう、恥ずかしい。
「あぁ、たぶん、普通はそうなんだろうね。恋人なんて俺、作ったことなかったし、身体だけなら何人もいるからあんまり気にしたことなかったけど」
さらっと言われて、俺の中になんとも言えない黒い感情が沸き上る。
いったいこいつ、クラスの何人と寝たんだろうか。
……そんなこと気にしても仕方ないのに、何考えてんだ、俺。
俺は飛衣の手から逃げ、彼に背を向けて毛布を被った。
「……朱里?」
「俺、まだ眠いから」
と、半分本当で半分嘘を言う。
俺は今、嫉妬してる。
そう自覚してるから、飛衣の顔をまともに見られない。
あー、嫌だ、こういう感情。自分が超、女々しく思えてしまう。
「もうすぐ六時半になるけど……夕食を食べるなら運んでこさせるし、帰るなら送っていくけどどうする?」
てっきり毛布をはがされるかと思ったけれど、そんなことはなく、でもすぐそばで飛衣の声が響く。
俺の能力……未来予知は、映像が長ければ長いほど副作用が強くなる。
だから俺はまだ身体が怠いし、眠気が強い。
……っていうか今布団から出る気にはなれなかった。
飛衣の匂いに包まれて俺……なにしたよ?
あーもう、抱くなら抱けばいいのに。
この今の状況は、俺にとって超辛い。
なんなんだよ、普段ならこ飛衣、俺を抱こうとしてるだろうに、なんで何にもしてこないんだよ?
俺は毛布をゆっくりとめくり、でも飛衣に背を向けたまま言った。
「……もうちょっとしたら帰る。夕飯は……大丈夫、だから」
と、何とか答える。
正直、今俺は腹がそんなに減ってない。
ヤりたい気持ちはあるけれど……今日はまだ火曜日だ。
学校、まだ三日もあるじゃねえか……それ考えるときつい。
「そう。じゃあ君はこのままそこで寝ていていいよ」
と言い、飛衣が動くのが気配でわかる。
「飛衣」
考えるよりも先に、身体が動いた。
俺は上半身を起こすと飛衣の方を振り返り、彼の手首を掴む。
飛衣は、ちょっとびっくりしたような顔をして俺の方を振り返り、にこっと笑って言った。
「何、朱里」
やばい、呼び止めたものの何にも考えてなかった。
えーと、どうしよう。
……駄目だ、頭の中が白い。
何が言いたい、何がしたい、俺。
「今週末は会わないのかよ?」
考えてやっと出た言葉はそれだった。
今週は第四土曜日で、いつもなら飛衣に呼ばれてこの部屋に泊まる日だ。
なのに、今週の約束はしていない。
「会いたいけど、今週は親の用事に付き合わないといけなくて。親の機嫌は取っておかないとね」
そう、淡々と告げた後、飛衣は俺の肩に手を置き俺をベッドに押し倒して覆いかぶさってくる。
そして、唇がつくかつかないかの距離まで顔を近づけて言った。
「だからその代り、来週末の俺の自由が保障されているんだよ。誰にも邪魔させないし、誰にも邪魔されない場所で君と過ごすために」
それってつまり、どこかに泊まるってことだよな……
去年のクリスマスは町の外のホテルに連れられて……ほとんどセックスして過ごしたはずだ。
また、セックスして過ごすんだろうか?
「邪魔されない場所ってどこだよ?」
「軽井沢のホテル。出掛けるにもちょうどいい……」
「まじで? 観光できんの?」
飛衣の言葉を遮り俺が声を弾ませて言うと、また飛衣は驚いた顔をする。
「だって、お前とどっかでかけたことなんてほとんどねえじゃん? ていうか昨日のカフェが初めてじゃね? ちょっとテンションあがって来たんだけど」
「……それは、俺と出掛けたいって意味でいいのかな」
微笑み問いかけられて、俺は目を瞬かせる。
……そう、なるのか、な。
「た、ぶん……」
恥ずかしさに曖昧な言葉が出てしまう。
「そう、ならよかった。ねえ、朱里」
まっすぐに俺の目を見つめ、切なげな声で飛衣が言う。
……なんかいつもと違わねえか、飛衣。
こんな状況でキスもしてこないし、服を捲られもしないとか……なんなんだよ、飛衣?
「な、何だよ」
俺の唇から零れ落ちた声はわずかに震えているのは何でだろうか。
やべえ、すっげードキドキしてるんだけど。
「見合いの話が少し来るようになって、その中には断りきれないものがあるんだよ。俺としては会うつもりもないんだけどそう言うわけにもいかなくて。だから朱里」
言いながら飛衣は俺の右手に左手を重ね、指を絡めてくる。
俺は迷い、そしてゆっくりとその手を握った。
「来週たくさん愛してあげるから、それまでお預けだよ。俺も、君も」
低く甘い声で囁くように言った後、飛衣はそっと唇を重ねた。
恋人って自分で言っては見たものの、正直恥ずかしくって仕方ない。
とはいえ他に表現のしようもないだろう。
「だ、だって、恋人以外になんて言えばいいんだよ? ただのクラスメイトで……あんなことしねえし、俺」
言いながら顔が紅くなるをの感じ、思わず飛衣から目を反らす。
なんだよ……これじゃあ、俺、飛衣に恋してるみてえじゃねえか。
あぁ、もう、恥ずかしい。
「あぁ、たぶん、普通はそうなんだろうね。恋人なんて俺、作ったことなかったし、身体だけなら何人もいるからあんまり気にしたことなかったけど」
さらっと言われて、俺の中になんとも言えない黒い感情が沸き上る。
いったいこいつ、クラスの何人と寝たんだろうか。
……そんなこと気にしても仕方ないのに、何考えてんだ、俺。
俺は飛衣の手から逃げ、彼に背を向けて毛布を被った。
「……朱里?」
「俺、まだ眠いから」
と、半分本当で半分嘘を言う。
俺は今、嫉妬してる。
そう自覚してるから、飛衣の顔をまともに見られない。
あー、嫌だ、こういう感情。自分が超、女々しく思えてしまう。
「もうすぐ六時半になるけど……夕食を食べるなら運んでこさせるし、帰るなら送っていくけどどうする?」
てっきり毛布をはがされるかと思ったけれど、そんなことはなく、でもすぐそばで飛衣の声が響く。
俺の能力……未来予知は、映像が長ければ長いほど副作用が強くなる。
だから俺はまだ身体が怠いし、眠気が強い。
……っていうか今布団から出る気にはなれなかった。
飛衣の匂いに包まれて俺……なにしたよ?
あーもう、抱くなら抱けばいいのに。
この今の状況は、俺にとって超辛い。
なんなんだよ、普段ならこ飛衣、俺を抱こうとしてるだろうに、なんで何にもしてこないんだよ?
俺は毛布をゆっくりとめくり、でも飛衣に背を向けたまま言った。
「……もうちょっとしたら帰る。夕飯は……大丈夫、だから」
と、何とか答える。
正直、今俺は腹がそんなに減ってない。
ヤりたい気持ちはあるけれど……今日はまだ火曜日だ。
学校、まだ三日もあるじゃねえか……それ考えるときつい。
「そう。じゃあ君はこのままそこで寝ていていいよ」
と言い、飛衣が動くのが気配でわかる。
「飛衣」
考えるよりも先に、身体が動いた。
俺は上半身を起こすと飛衣の方を振り返り、彼の手首を掴む。
飛衣は、ちょっとびっくりしたような顔をして俺の方を振り返り、にこっと笑って言った。
「何、朱里」
やばい、呼び止めたものの何にも考えてなかった。
えーと、どうしよう。
……駄目だ、頭の中が白い。
何が言いたい、何がしたい、俺。
「今週末は会わないのかよ?」
考えてやっと出た言葉はそれだった。
今週は第四土曜日で、いつもなら飛衣に呼ばれてこの部屋に泊まる日だ。
なのに、今週の約束はしていない。
「会いたいけど、今週は親の用事に付き合わないといけなくて。親の機嫌は取っておかないとね」
そう、淡々と告げた後、飛衣は俺の肩に手を置き俺をベッドに押し倒して覆いかぶさってくる。
そして、唇がつくかつかないかの距離まで顔を近づけて言った。
「だからその代り、来週末の俺の自由が保障されているんだよ。誰にも邪魔させないし、誰にも邪魔されない場所で君と過ごすために」
それってつまり、どこかに泊まるってことだよな……
去年のクリスマスは町の外のホテルに連れられて……ほとんどセックスして過ごしたはずだ。
また、セックスして過ごすんだろうか?
「邪魔されない場所ってどこだよ?」
「軽井沢のホテル。出掛けるにもちょうどいい……」
「まじで? 観光できんの?」
飛衣の言葉を遮り俺が声を弾ませて言うと、また飛衣は驚いた顔をする。
「だって、お前とどっかでかけたことなんてほとんどねえじゃん? ていうか昨日のカフェが初めてじゃね? ちょっとテンションあがって来たんだけど」
「……それは、俺と出掛けたいって意味でいいのかな」
微笑み問いかけられて、俺は目を瞬かせる。
……そう、なるのか、な。
「た、ぶん……」
恥ずかしさに曖昧な言葉が出てしまう。
「そう、ならよかった。ねえ、朱里」
まっすぐに俺の目を見つめ、切なげな声で飛衣が言う。
……なんかいつもと違わねえか、飛衣。
こんな状況でキスもしてこないし、服を捲られもしないとか……なんなんだよ、飛衣?
「な、何だよ」
俺の唇から零れ落ちた声はわずかに震えているのは何でだろうか。
やべえ、すっげードキドキしてるんだけど。
「見合いの話が少し来るようになって、その中には断りきれないものがあるんだよ。俺としては会うつもりもないんだけどそう言うわけにもいかなくて。だから朱里」
言いながら飛衣は俺の右手に左手を重ね、指を絡めてくる。
俺は迷い、そしてゆっくりとその手を握った。
「来週たくさん愛してあげるから、それまでお預けだよ。俺も、君も」
低く甘い声で囁くように言った後、飛衣はそっと唇を重ねた。
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