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27 それでも会いたい
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僕はリモに再び尋ねた。
「なあリモ、あの日和ちゃんに憑りついているやつをどうにかする方法ってないの?」
「憑りつくってことはなにかしらの未練があるんじゃないかと! だから願いが叶えばきっと憑りついているやつは離れるんじゃないかなって思うんですけど」
化け物の願いってなんだよ……
この間会った幽霊は、腹をぶった切れ、だったしなあ……きっと想像の斜め上なんだろうなあ……
絶望しか感じねえんだけど?
「紫音君」
「はい、なんですか?」
「日和さんを追いかけて行った……臨君、大丈夫かな」
初芝さんは言いながら暗い森の方へと視線を向ける。
あいつが大丈夫かどうかって聞かれるとどうだろうか。
いいや、大丈夫だろう。そうあってほしい。
「臨なら大丈夫ですよ。あいつ、力使えるの嬉しいみたいだし。僕と違って戦う方法、知ってるから」
言いながら僕は自分を落ち着かせる。
戦う方法を知っているかっていうと、どうなのか疑問を抱くけど、さっきの動きからしてたぶん何かしらの訓練を受けているのかもしれない。
僕は戦う術を知らない。だけど臨は違うだろう。
あいつは普通じゃないし、だからそう簡単に死にはしないだろうけど……
だめだ、死ぬ、とか考えたら身体が震えてくる。
「君たちはほんと、不思議だね。電撃使いと……君は何だっけ。記憶がどうのって言っていたよね」
そう言えば僕の力について、臨が話していたっけ。
「僕は人の辛い記憶や哀しみの記憶だけ消せるんです。完全に消えるわけじゃないみたいですけど、でもそう簡単には思い出せなくなります。今の所思い出した人はいない……かな」
人の記憶っていうのは鎖のようなもので連綿と繋がっていたりする。だから僕が記憶を吸い上げたとしても、それにつながる記憶がある限り思い出す可能性は否定できないんだよな。
今の所思い出したって話しはきかないけど、いつかそう言う人、現れるかもしれない。
「そうか、そうなんだ。だから臨君は俺に、記憶を消せるとか言ったのか。あれ、冗談だと思っていたけど」
「僕は吸い上げた記憶を少しの間なら覚えていられるんですよ。そのうち忘れちゃうけど。それで、今回の化け物を目撃した人がいて、その記憶が僕が消したんです。それで頼まれて化け物の正体を探ることになったんです」
「そうなんだ……でも僕は君に記憶を消してほしいとは思わないよ」
と言い、初芝さんは笑う。
「あの姿を見ても、彼女の事……受け入れられるんですか?」
僕が問うと彼は頷いた。
「うん、そりゃあね……ずっと会いたかったし。まさか妖怪だとは思わなかったけど。それでも俺は、今でも彼女に会いたいって思うよ」
僕には理解できない考えだけど、そう言うものなんだろうか。
そもそも僕、ろくに恋なんてしたことないしな……わかんねえな。
でも初芝さんがその記憶を消したくないことだけはわかったし、彼女に対して本気なんだなってこともわかる。
日和ちゃんのこと、助けねえとな。臨のやつ、無茶してなきゃいいけど。
いったいどれくらいたったか。
臨が森の中から姿を現した。
「臨!」
僕は思わず走りだす。
臨は首を振り、笑って言った。
「逃げられたよ」
「お前、怪我とかしてねえだろうな」
焦る声で問いかけると臨は一瞬驚いた顔をして首を横に振る。
「俺は大丈夫だよ、紫音」
そして、なぜか僕の頭に手を置いた。
「心配してくれてありがとう」
「し、心配なんてしてねえよ!」
恥ずかしさに思わず声を張り上げてしまう。
なんなんだよこいつ。なんで頭なんて撫でてくるんだよ?
「あはは、素直じゃないなあ、紫音」
「変なこと言うんじゃねえよ。僕は……お前に怪我してほしくねえだけだよ」
と言い、そっぽを向いた。
なんだよこれ、恥ずかしすぎるんだけど。
臨は僕の頭から手をおろすと、森の方へと視線を向けて言った。
「とりあえず、彼女はこの山のどこかに棲んでいるのかもね。あのヒトウバンが怯えるほど怖い何かになってしまってるみたいだけど」
「あぁ、どうにかして憑いてるやつを剥がさねえと」
「何か方法あるかなあ……」
と言い、臨は首を傾げる。
さっきリモは何か未練があるんじゃないかって言ってたよなあ……
ってことはどんな未練があるのかわかればワンチャンありそうだけど、あの様子で聞きだせるか?
……無理すぎだろそれ。俺たちを見て攻撃してきてたし。
臨は両手を上にあげて大きく伸びをして言った。
「とりあえず今日は帰ろうか。たぶん今日は出てこないでしょ」
「何でそう思うんだよ」
僕が問うと、臨は初芝さんの方に視線をやる。
「だって彼女、彼を見たら明らかに動揺していたし。もしかしたら初芝さんに今の姿を見られたくないんじゃないかな」
と言った。
なんだよそれ。乙女心ってやつ?
納得はできないけれど、初芝さんを見て動揺していたのは事実だし、逃げ出したのも事実なので俺たちは山を下りることにした。
「なあリモ、あの日和ちゃんに憑りついているやつをどうにかする方法ってないの?」
「憑りつくってことはなにかしらの未練があるんじゃないかと! だから願いが叶えばきっと憑りついているやつは離れるんじゃないかなって思うんですけど」
化け物の願いってなんだよ……
この間会った幽霊は、腹をぶった切れ、だったしなあ……きっと想像の斜め上なんだろうなあ……
絶望しか感じねえんだけど?
「紫音君」
「はい、なんですか?」
「日和さんを追いかけて行った……臨君、大丈夫かな」
初芝さんは言いながら暗い森の方へと視線を向ける。
あいつが大丈夫かどうかって聞かれるとどうだろうか。
いいや、大丈夫だろう。そうあってほしい。
「臨なら大丈夫ですよ。あいつ、力使えるの嬉しいみたいだし。僕と違って戦う方法、知ってるから」
言いながら僕は自分を落ち着かせる。
戦う方法を知っているかっていうと、どうなのか疑問を抱くけど、さっきの動きからしてたぶん何かしらの訓練を受けているのかもしれない。
僕は戦う術を知らない。だけど臨は違うだろう。
あいつは普通じゃないし、だからそう簡単に死にはしないだろうけど……
だめだ、死ぬ、とか考えたら身体が震えてくる。
「君たちはほんと、不思議だね。電撃使いと……君は何だっけ。記憶がどうのって言っていたよね」
そう言えば僕の力について、臨が話していたっけ。
「僕は人の辛い記憶や哀しみの記憶だけ消せるんです。完全に消えるわけじゃないみたいですけど、でもそう簡単には思い出せなくなります。今の所思い出した人はいない……かな」
人の記憶っていうのは鎖のようなもので連綿と繋がっていたりする。だから僕が記憶を吸い上げたとしても、それにつながる記憶がある限り思い出す可能性は否定できないんだよな。
今の所思い出したって話しはきかないけど、いつかそう言う人、現れるかもしれない。
「そうか、そうなんだ。だから臨君は俺に、記憶を消せるとか言ったのか。あれ、冗談だと思っていたけど」
「僕は吸い上げた記憶を少しの間なら覚えていられるんですよ。そのうち忘れちゃうけど。それで、今回の化け物を目撃した人がいて、その記憶が僕が消したんです。それで頼まれて化け物の正体を探ることになったんです」
「そうなんだ……でも僕は君に記憶を消してほしいとは思わないよ」
と言い、初芝さんは笑う。
「あの姿を見ても、彼女の事……受け入れられるんですか?」
僕が問うと彼は頷いた。
「うん、そりゃあね……ずっと会いたかったし。まさか妖怪だとは思わなかったけど。それでも俺は、今でも彼女に会いたいって思うよ」
僕には理解できない考えだけど、そう言うものなんだろうか。
そもそも僕、ろくに恋なんてしたことないしな……わかんねえな。
でも初芝さんがその記憶を消したくないことだけはわかったし、彼女に対して本気なんだなってこともわかる。
日和ちゃんのこと、助けねえとな。臨のやつ、無茶してなきゃいいけど。
いったいどれくらいたったか。
臨が森の中から姿を現した。
「臨!」
僕は思わず走りだす。
臨は首を振り、笑って言った。
「逃げられたよ」
「お前、怪我とかしてねえだろうな」
焦る声で問いかけると臨は一瞬驚いた顔をして首を横に振る。
「俺は大丈夫だよ、紫音」
そして、なぜか僕の頭に手を置いた。
「心配してくれてありがとう」
「し、心配なんてしてねえよ!」
恥ずかしさに思わず声を張り上げてしまう。
なんなんだよこいつ。なんで頭なんて撫でてくるんだよ?
「あはは、素直じゃないなあ、紫音」
「変なこと言うんじゃねえよ。僕は……お前に怪我してほしくねえだけだよ」
と言い、そっぽを向いた。
なんだよこれ、恥ずかしすぎるんだけど。
臨は僕の頭から手をおろすと、森の方へと視線を向けて言った。
「とりあえず、彼女はこの山のどこかに棲んでいるのかもね。あのヒトウバンが怯えるほど怖い何かになってしまってるみたいだけど」
「あぁ、どうにかして憑いてるやつを剥がさねえと」
「何か方法あるかなあ……」
と言い、臨は首を傾げる。
さっきリモは何か未練があるんじゃないかって言ってたよなあ……
ってことはどんな未練があるのかわかればワンチャンありそうだけど、あの様子で聞きだせるか?
……無理すぎだろそれ。俺たちを見て攻撃してきてたし。
臨は両手を上にあげて大きく伸びをして言った。
「とりあえず今日は帰ろうか。たぶん今日は出てこないでしょ」
「何でそう思うんだよ」
僕が問うと、臨は初芝さんの方に視線をやる。
「だって彼女、彼を見たら明らかに動揺していたし。もしかしたら初芝さんに今の姿を見られたくないんじゃないかな」
と言った。
なんだよそれ。乙女心ってやつ?
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