ぼくに毛が生えた

理科準備室

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第14話 秋の子

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 それは6年生も残り半分の折り返しになった秋のことだった。

 合唱部は穴実小文化祭や市内音楽会での発表を目指して、ぼくもアルトパートの一員として練習の真っ最中で毎日「秋の子」とか「もみじ」といった曲を練習していた。ぼくは担当のT先生も合唱部のみんなも歌うことそのものも好きだったから、一生懸命練習していたけど、主旋律を歌うソプラノパートにくらべて今一つ地味なのが少しフマンだった。
 でも、夏や秋の大会が終わったら6年生は引退するおきゅう部や水泳部と違って、卒業式でも歌う合唱部は最後まで練習するけど、それでもぼくが合唱部で歌えるのはあと半年になってしまった。しかも来年の4月になったら、大きな町にある付属中に行く学年トップの子一人を除いて、ぼくが含むみんなが進学する穴実市立穴見中(略してあなちゅー)には合唱部はなかった。

 この間初めてあった第一回目のオリエンテーションによると、あなちゅーには吹奏楽部を唯一の例外として体育部しかなくて部活は全員強制参加だった。しかも男子は全員丸刈りと校則で決まっていた。あなちゅーの体育部はおきゅう部と水泳部しかなかった穴実小と違い、その他にもテニス部や陸上部やサッカー部などいろいろあるそうだけど、おきゅう部みたいな坊主頭でテニスラケットを振り回している姿やトランペットを吹いている姿なんてぼくは想像するだけでぞっとした、でも、それはぼくの逃れようもない不愉快な未来だった。

 修学旅行が終わってからぼくに起きたできごとで、7月のはじめに祖母が突然亡くなった。おじさんおばさんや近所の人は「気さくで誰にもやさしい親切な人」だったとみんな悲しんでいたけど、ぼくにとっては祖母の死はあまり悲しいことには感じられなかった。 祖母は、ぼくが小さいころからお父さんとお母さんが共働きで忙しいのにいつも旅行ばかりでかけていて、あまり構ってくれる人ではなかった。昨年から旅行をしなくなって長く家にいるようになっても、祖母とほとんど会話することはなかった。
 これは大人になって知ったことだけど、葬式のあとで遺品を調べたら、祖母は、おじさんおばさんが生活が苦しくなったり家の修繕とかで、お金を無心するたびに、お父さんやお母さんが稼いだお金を無断で、それもかなりの金額を渡していたことが分かった。便所が臭突がついてない昔のままだったり、長く電話を入れなかったのも本当はそのためだったらしい。
 あと、夏休みの間にО先生とその奥さんの間に第一子が生まれた。女の子で名前を「のりか」と命名した。授業中、О先生は結婚したときとおなじようにのりかちゃんの写真をうれしそうにクラスのみんなに見せて回った。

 ぼくは5年生のときと同様に教材係だった。前の学年からやっているので、もう先生以上に教材室のどこに何があるかわかるようになっていた。それで、この仕事に関してはО先生にしっかり信頼されていた。

(続く)
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