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決心 ~リカルド視点~

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俺はとある決意を固めて帰途についた。

屋敷に帰り着くと、いつものように使用人達が出迎えてくれる。

「おかえりなさいませ、リカルド様」

「ああ、出迎えありがとう」

手荷物を使用人に預け、

「父上はおられるか?」

この家の当主である父の所在を尋ねる。

「はい。書斎にいらっしゃいます」

「わかった。ありがとう」

その足で父の書斎へと向かう。

書斎のドアをノックすると、「入れ」と返事があった。

中に入ると、父は書類に何か書き物をしているようだった。

俺をちらりと見て、それから顔を上げた。

「おかえり。どうした、深刻な顔をして」

俺が言い淀むと、父はペンを置いて正面から俺を見据えた。

「リカルドよ。お前はこのアドーア家……王家に次ぐ権威のある大家の三男だ。お前の兄二人は、貴族として政治を学び、立派に育っている。お前は三男だからと、貴族としての道を強制することなく、自由な道を歩ませてやったつもりだ。医者になると聞いた時も、あえて反対はしなかった」

「はい。感謝しています」

「それは、お前が子供の頃からあまり我儘を言わない性格だったせいもある。また、親として、リカルドなら自由にさせておいても困った事件を起こしたりしないだろう、という予測もあった」

父はそこでフッと笑い、珍しく優しげな目つきになった。

「だが、親というものは時として、子供に困らされたいという不思議な欲を持つものなのだよ。何か、我儘を言いにきたのだろう?」

そう言われて、もう俺にはためらう理由はなくなった。

「はい。俺は、竜の巣へ向かいたいと思います」

「竜の巣へ?いったい、なぜだ?」

「竜の巣の中に咲くという花を使うことでしか、治せない病気があるからです」

「ゴブリン病か……。以前話していたな。マルティネス家のマリー嬢だったか。不幸なことだが……。竜の巣か」

そこで、父の目が鋭くなる。俺を試すような、厳しい視線を向けてくる。

「お前がそこまでしなければならない女なのか?」

わかっている。
父はわざとこのような言い方をしているのだ。
しかし、俺は胸の中に湧き上がる熱いものを抑えることができなかった。

思わず、父の視線を睨み返す。

「はい。俺にとって彼女は特別な人なのです」

父の視線が氷解する。

「……そうか」

父はため息をついて椅子に座り直した。

「ならば何も言うまい。好きにするがいい。儂は親として、お前の恋路を応援しよう。剣でも鎧でも馬でも、持っていくがいい」

父はニヤリと笑って言う。

頼もうと思っていたことを先回りされ、俺は苦笑した。

深々と頭を下げる。

「ありがとうございます!」

「いい、いい。早く行け」

飛び出すようにして父の書斎を出る。

俺は走り出した。

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