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苺と木苺のケーキ
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「ふう、もう読み終わってしまいました。」
ユーク様に突然言い渡された休暇。
精霊王様に呼ばれているそうです。
凄いですね!ユーク様!
ですので書庫の本を拝借し、読書に徹しようと考えましたが…
すぐに読み終わってしまいました。
「アルカは…今頃旦那様から逃げ回っていますね。」
暇があれば買い物についてきてもらおうと思ったのですが…
お仕事が優先ですし、我儘も言ってられません。
それに、弟念願の魔術師になれたのですから迷惑をかけてはかわいそうです。
なので買い物はまたの機会にしましょう。
ですが、これから何をしましょうか?
少し前まで、ユーク様がご不在の時はディアン様の惚気を聞いていましたが、ディアン様は王都。
本当にすることがありませんね…
ああ、あれを作ってみましょう!
買い物はまた今度と思っていましたが…少しだけ買いに行きましょう。
「ええと、これくらいで大丈夫ですかね?」
私が用意したのは卵、砂糖、小麦粉、バター、洋酒、生クリーム、苺、そして木苺。
まずはミスリルに卵と砂糖を入れ、器に魔力を流し込みながら混ぜます。これユーク様に教わりました。
そして温かいと思う温度になってから、今度は少しずつ冷まします。
その後、小麦粉を入れ、さっくり混ぜます。ユーク様から
「肩の力を抜いて、フワフワ混ぜてね~。」
ユーク様は不思議なお方です。
凄くおいしいお菓子を作り出し、精霊王様と契約されました。
何にも興味のなかったディアン様に感情が芽生えたのもユーク様のおかげです。
ディアン様からの寵愛は深いですが、ユーク様も嬉しそうですし、大丈夫でしょう。
そんなお嬢様だからこそ、皆から愛されるのですね。
私もそんなユーク様に仕えることができて光栄です。
おっと、もう混ぜることが出来ましたね。
そして、溶かしたバターを入れて、混ぜます。後は
「ほう…、上手く生地が焼けました。」
私はあまり魔力の調整が得意ではないので、お菓子作りの手伝いは他の人の方が、と提案したのですが、
「私はシャーサと作りたいの」
という優しいお言葉を頂き、練習した結果、少し上達できました。
お菓子作りて魔法が上手くなるとはすごいです。
「そして、砂糖と水と洋酒を煮詰める…。うん、美味しくできました。」
少しすくって口に含むと、スッキリとした甘さに洋酒の深みのある味が広がる、美味しいシロップが出来ました。
そしてこれを先ほどの“けーき”の断面にたっぷりと塗ります。
“けーき”にシロップが染み込む瞬間は、言葉に表すことのできない満足感に浸ることができますね。
「あとは生クリームに砂糖と洋酒を入れ、泡立てる。」
シロップが少し余ってしまったので生クリームに入れてしまいましょう。
少し甘くなってしまいましたが、やはり甘いクリームは幸せの味がします。
これを“けーき”にまんべんなく塗ります。瞬く間に薄茶色の土台が白に染まってきます。
最後に苺と木苺をのせていきます。
本当は苺だけを買ってこようと思ったのですが、寡黙な店の主人が饒舌に勧めていたので、買ってきました。
黒と赤の粒が、鉱石のようです。
大粒の苺、コロコロしている黒と赤の木苺が白い“けーき”に映え、まるで装飾ですね。
「では、一切れ頂きましょう。」
まずは一口。
いつもより甘めのクリームの味がしたと思えば、“けーき”の素朴な味がし、シロップがじゅわっと染み出てきます。
洋酒が良い刺激となっていますね。
そして木苺。
プチッとした触感のあと、甘酸っぱい味が…あら?あまり酸っぱくない。
いえ、酸味はあるのですが、鼻の奥で微かに香る、くらいのものでした。
さすが店主の一押しの果物だけありますね。
さて、あっという間に一切れ食べてしまいました。
もう一切れ…やめておきましょう。
また、ユーク様が、私のお仕えする世界一のお嬢様がお帰りになられてから、ご一緒させていただきましょう。
それが、わたしの幸せですから。
この後ユーク様と美味しく頂きました。
ユーク様に突然言い渡された休暇。
精霊王様に呼ばれているそうです。
凄いですね!ユーク様!
ですので書庫の本を拝借し、読書に徹しようと考えましたが…
すぐに読み終わってしまいました。
「アルカは…今頃旦那様から逃げ回っていますね。」
暇があれば買い物についてきてもらおうと思ったのですが…
お仕事が優先ですし、我儘も言ってられません。
それに、弟念願の魔術師になれたのですから迷惑をかけてはかわいそうです。
なので買い物はまたの機会にしましょう。
ですが、これから何をしましょうか?
少し前まで、ユーク様がご不在の時はディアン様の惚気を聞いていましたが、ディアン様は王都。
本当にすることがありませんね…
ああ、あれを作ってみましょう!
買い物はまた今度と思っていましたが…少しだけ買いに行きましょう。
「ええと、これくらいで大丈夫ですかね?」
私が用意したのは卵、砂糖、小麦粉、バター、洋酒、生クリーム、苺、そして木苺。
まずはミスリルに卵と砂糖を入れ、器に魔力を流し込みながら混ぜます。これユーク様に教わりました。
そして温かいと思う温度になってから、今度は少しずつ冷まします。
その後、小麦粉を入れ、さっくり混ぜます。ユーク様から
「肩の力を抜いて、フワフワ混ぜてね~。」
ユーク様は不思議なお方です。
凄くおいしいお菓子を作り出し、精霊王様と契約されました。
何にも興味のなかったディアン様に感情が芽生えたのもユーク様のおかげです。
ディアン様からの寵愛は深いですが、ユーク様も嬉しそうですし、大丈夫でしょう。
そんなお嬢様だからこそ、皆から愛されるのですね。
私もそんなユーク様に仕えることができて光栄です。
おっと、もう混ぜることが出来ましたね。
そして、溶かしたバターを入れて、混ぜます。後は
「ほう…、上手く生地が焼けました。」
私はあまり魔力の調整が得意ではないので、お菓子作りの手伝いは他の人の方が、と提案したのですが、
「私はシャーサと作りたいの」
という優しいお言葉を頂き、練習した結果、少し上達できました。
お菓子作りて魔法が上手くなるとはすごいです。
「そして、砂糖と水と洋酒を煮詰める…。うん、美味しくできました。」
少しすくって口に含むと、スッキリとした甘さに洋酒の深みのある味が広がる、美味しいシロップが出来ました。
そしてこれを先ほどの“けーき”の断面にたっぷりと塗ります。
“けーき”にシロップが染み込む瞬間は、言葉に表すことのできない満足感に浸ることができますね。
「あとは生クリームに砂糖と洋酒を入れ、泡立てる。」
シロップが少し余ってしまったので生クリームに入れてしまいましょう。
少し甘くなってしまいましたが、やはり甘いクリームは幸せの味がします。
これを“けーき”にまんべんなく塗ります。瞬く間に薄茶色の土台が白に染まってきます。
最後に苺と木苺をのせていきます。
本当は苺だけを買ってこようと思ったのですが、寡黙な店の主人が饒舌に勧めていたので、買ってきました。
黒と赤の粒が、鉱石のようです。
大粒の苺、コロコロしている黒と赤の木苺が白い“けーき”に映え、まるで装飾ですね。
「では、一切れ頂きましょう。」
まずは一口。
いつもより甘めのクリームの味がしたと思えば、“けーき”の素朴な味がし、シロップがじゅわっと染み出てきます。
洋酒が良い刺激となっていますね。
そして木苺。
プチッとした触感のあと、甘酸っぱい味が…あら?あまり酸っぱくない。
いえ、酸味はあるのですが、鼻の奥で微かに香る、くらいのものでした。
さすが店主の一押しの果物だけありますね。
さて、あっという間に一切れ食べてしまいました。
もう一切れ…やめておきましょう。
また、ユーク様が、私のお仕えする世界一のお嬢様がお帰りになられてから、ご一緒させていただきましょう。
それが、わたしの幸せですから。
この後ユーク様と美味しく頂きました。
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