息子の運命、父の執着。3

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side 亮太

外食と亀裂。

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父さんオススメのイタリアンは、本当に父さんの研究所ラボの近くにあった。

テーブルに父さんと向かい合って腰掛け、メニューをめくる。

イタリアンと言いながら、メニューは豊富だ。

暫くすると、店員のお爺さんがオーダーを取りに来てくれた。

「ペペロンチーノのディナーセットとライス大、お願いします。」

ディナータイムのセットはステーキにサラダ、スープ、デザートが付いてる、空腹の成長期そだちざかりには魅力的だ。

「じゃぁ私は海鮮パスタとサラダを。」

「かしこまりました。」

お爺さんはニッコリ笑って奥の調理場に戻っていった。

「父さん、お腹空いてないの?」

父さんの注文がいつもより控えめな気がして心配になる。

俺の作った夕ご飯(量多め)は、全部食べるのに。

「いや、ココの店は結構な大盛りだから、私はコレで丁度いいよ。
亮太、全部食べられる?
しかもライス大・・・。」

えっ。

大盛りの店なの?

「父さん、大盛りの店なら、先に言っといてよ!
俺初めてだから分かんないよ!
でも超腹減ってるから全然大丈夫!
食べれる、任せて!!」

「ふふ、ごめんね。
頑張って食べてね。」

その後、本当にドドーンと大盛りのペペロンチーノセットとライス大が来たけど、すごく美味しくてペロッと食べられた。

「亮太、口元にソースが付いてるよ。」

父さんが俺の口元を親指で拭う。

「言ってくれれば、自分で拭けるし。」

顔を逸らせて、お手拭きでもう一度口元を拭いたけど、ちょっと嬉しい。

俺がせっせと食べてるのを、父さんがニコニコ見守ってくれて、何だかデートみたいだ。

更に嬉しくなった。



 ◆◆ ◆ ◆ ◆ ◆◆



・・・それは、退店時に起こった。

「ご馳走様、マスター。」

「ありがとうございます。」

お?

オーダーからお支払いまでずっと対応してくれたお爺さん、マスターだったのか。

「すごく美味しかったです。ご馳走様でした。」

マスターおじいさんに笑いかけて挨拶する。

ここの大盛り美味い。

ランチタイムには格安の学生応援メニューもあるようだから、また来よう。

よし、愛想良くしとこう。

すると、マスターおじいさんは父さんと俺を見比べてニッコリ微笑んだ。

「唐様のご子息様でいらっしゃいますか?」

ん?父さんの事知ってんの?

そりゃそっか、研究所ラボの近くだもんな。

「ええ、息子の亮太です。お陰様で大きくなりました。」

父さんが俺を紹介してくれた。

するとマスターおじいさんは更に笑みを深めて、

「亮太様は、奥様によく似ていらっしゃいますね。
唐様と奥様のプロポーズディナーを思い出します。」

・・・ぇっ・・・

「はは、お恥ずかしい。
あの頃は私も若くて、マスターには随分助けて頂きましたね。」

「いえ、唐様はあの頃も紳士でおいでましたよ。」

談笑してる父さん達を余所に、俺の楽しかった気持ちが萎んでいく。

「・・・」

俺と母さんを比べるなんて、マスターじじいハゲろ。

母さんに似てることくらい言われなくても俺が1番よく知ってる。

写真の母さんは、『大人になった俺だ。』って自分で思うくらい似ているから。

・・・父さんも、俺に母さんを重ねているんだろうか。




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