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side 亮太
外食と亀裂。
しおりを挟む父さんオススメのイタリアンは、本当に父さんの研究所の近くにあった。
テーブルに父さんと向かい合って腰掛け、メニューをめくる。
イタリアンと言いながら、メニューは豊富だ。
暫くすると、店員のお爺さんがオーダーを取りに来てくれた。
「ペペロンチーノのディナーセットとライス大、お願いします。」
ディナータイムのセットはステーキにサラダ、スープ、デザートが付いてる、空腹の成長期には魅力的だ。
「じゃぁ私は海鮮パスタとサラダを。」
「かしこまりました。」
お爺さんはニッコリ笑って奥の調理場に戻っていった。
「父さん、お腹空いてないの?」
父さんの注文がいつもより控えめな気がして心配になる。
俺の作った夕ご飯(量多め)は、全部食べるのに。
「いや、ココの店は結構な大盛りだから、私はコレで丁度いいよ。
亮太、全部食べられる?
しかもライス大・・・。」
えっ。
大盛りの店なの?
「父さん、大盛りの店なら、先に言っといてよ!
俺初めてだから分かんないよ!
でも超腹減ってるから全然大丈夫!
食べれる、任せて!!」
「ふふ、ごめんね。
頑張って食べてね。」
その後、本当にドドーンと大盛りのペペロンチーノセットとライス大が来たけど、すごく美味しくてペロッと食べられた。
「亮太、口元にソースが付いてるよ。」
父さんが俺の口元を親指で拭う。
「言ってくれれば、自分で拭けるし。」
顔を逸らせて、お手拭きでもう一度口元を拭いたけど、ちょっと嬉しい。
俺がせっせと食べてるのを、父さんがニコニコ見守ってくれて、何だかデートみたいだ。
更に嬉しくなった。
◆◆ ◆ ◆ ◆ ◆◆
・・・それは、退店時に起こった。
「ご馳走様、マスター。」
「ありがとうございます。」
お?
オーダーからお支払いまでずっと対応してくれたお爺さん、マスターだったのか。
「すごく美味しかったです。ご馳走様でした。」
マスターに笑いかけて挨拶する。
ここの大盛り美味い。
ランチタイムには格安の学生応援メニューもあるようだから、また来よう。
よし、愛想良くしとこう。
すると、マスターは父さんと俺を見比べてニッコリ微笑んだ。
「唐様のご子息様でいらっしゃいますか?」
ん?父さんの事知ってんの?
そりゃそっか、研究所の近くだもんな。
「ええ、息子の亮太です。お陰様で大きくなりました。」
父さんが俺を紹介してくれた。
するとマスターは更に笑みを深めて、
「亮太様は、奥様によく似ていらっしゃいますね。
唐様と奥様のプロポーズディナーを思い出します。」
・・・ぇっ・・・
「はは、お恥ずかしい。
あの頃は私も若くて、マスターには随分助けて頂きましたね。」
「いえ、唐様はあの頃も紳士でおいでましたよ。」
談笑してる父さん達を余所に、俺の楽しかった気持ちが萎んでいく。
「・・・」
俺と母さんを比べるなんて、マスターハゲろ。
母さんに似てることくらい言われなくても俺が1番よく知ってる。
写真の母さんは、『大人になった俺だ。』って自分で思うくらい似ているから。
・・・父さんも、俺に母さんを重ねているんだろうか。
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