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水曜日ディナー本番。
市井兄とエスコート。
しおりを挟む「ふふ、亮太、弟くんをあまりイジメては駄目だよ。」
「はーい。」
「りょーちんパパ好き~!!」
達観して遠くを見ていると、唐所長が健介に助け船を出していた。
エレベーターも目的地に着いたようだ。
亮太くんが、健介から手を離して、唐所長に続いてエレベーターを降りる。
健介も、見過ごせないセリフと共にエレベーターを降りていた。
いくら可愛い健介でも、『好き~♪』は聞き捨てならない。
今は亮太くんも居るから、どうしようもないが、帰ってからのミーティングが長くなりそうだ。
「「お待ちしておりました、唐様、市井様。」」
エレベーターフロアに出るとウェイターが2人待機していた。
出迎えの挨拶に唐所長が軽く相槌を返す。
俺と亮太くんもそれに倣って会釈した。
「わ~。こんばんは~♪」
一人可愛くご挨拶する健介に癒やされる。
ウェイター達も健介の可愛いご挨拶ににニッコリ微笑んだ。
そうだろう、ウチの天使可愛いだろう、超可愛いだろう、そうだろう。
唐所長が俺にチラッとアイコンタクトする。
ココで唐所長らとはお別れの様だ。
「唐様、ディナールームへご案内致します。」
「ありがとう。
亮太。」
「うん。」
「僕も~♪」
「健介、俺たちは違うよ。」
唐所長は、亮太くんと行ってしまった。
亮太くんにピョコピョコ着いていこうとする健介を急いで引き留める。
「市井様、ディナールームへご案内致します。」
「ありがとう。
俺達はこっちだよ。」
「そうだった♪
兄さん待って~♪」
瞳をキラキラさせた健介がルンルンで俺に着いて来る。
パタパタ揺れる尻尾が見える気がする、可愛い。
・・・さてと、一旦立ち止まり、自分の中でスイッチを切り替え、健介に向き直る。
「健。」
「兄さん何~?」
「私の姫君、お手をどうぞ。」
「・・・??」
まずはエスコートから始めよう、と手を差し出すと、健介がキョトン顔で固まった。
そんな所も可愛いけど、ソロソロ動いてくれないと、俺もツライしウェイターさんの目もイタい。
ディナールームに着いてからにすれば良かった、と今更気付いたが、始めてしまった物はもう仕方ない。
出していた手を一旦引っ込めコートを脱いで、タキシード姿になる。
ホテルのディナーで正装しているだけだ!
俺は恥ずかしくなどない!
恭しく一礼してから、もう一度健介に手を差し出す。
「私の姫君。
エスコートを受けて頂けますか?」
「!!!
うん~♪兄ちゃん!!」
健介が嬉しそうに俺の手を取った。
良かった、これで健介に意味が通じなければ
『今から私は王子様だよ。』
と恥ずかしい自己申告から始めないといけないところだった。
ウェイターさんが寄ってきて、俺のビジネスコートと健介の学校カバンを持ってくれた。
「コートとお荷物、お預かり致します。」
「ありがとう。」
「よろしくお願いしま~す♪」
健介お気に入りの生徒会副会長は『慇懃無礼な敬語キャラ』とゲームのパッケージ解説にあった。
が、意味が分からんのでスルーする事にした。
愛する健介に慇懃無礼な態度なぞ取れるか。
・・・と言うか、なぜ俺が二次元に寄せないといけないんだ。
ディナールームまで、健介は俺にエスコートされながらもキョロキョロ落ち着かない。
「鳥さんと亀さんが居る~♪」
「人間国宝、城ノ内文左衛門の作品の鶴と亀でございます。」
ウェイターの説明が速い。
「わんこも大きいよ~♪」
「エジプトの国宝にも指定されております像で、アヌビス神でございます。」
・・・国宝がそこいらに置いてあるのか・・・。
ウェイターの説明を聞き流しつつ、“帝王ホテルの最上階には王族専用の部屋がある”と言う都市伝説を思い出した。
・・・もうココが何処なのかを考えるのは辞める。
さ、晩飯だ。
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