僕の恋、兄の愛。4

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水曜日昼休み。

市井兄と町の美容室。

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◆◆ ◆水曜日 12時半頃◆ ◆◆


行きつけの美容室へ急ぐ。

「いらっしゃい、ゆーくん。
今日もカット?」

俺の専属美容師兼友人がにこやかに出迎えてくれた。

いつも予約せずに来ている。

普段も、職場から近いココに仕事に余裕ができた昼休み、前振りなしでカットに来ている。

少しでも早く健介の所わがやへ帰りたいのだから仕方ない。

友人が怒らないから、つい甘えてしまっている。

でも、ココで俺が髪を切ると、健介が凄く褒めてくれるのだ。

『兄ちゃん格好いい~!
兄ちゃんの美容師さん~、兄ちゃんが格好よくなるカット~ちゃんと分かってる~!』

俺の新しい髪型は毎度大絶賛だ。

因みに、健介の髪は子供の頃からずっと俺が切っている。
切る度に、健介の髪のサンプルを少しづつ取ってある。
いつかどこかで、愛する妻の成長記録として、この作品(髪の毛)を発表したい。

「慎吾久しぶり、今日も急にすまん。
カットはしない。
セットだけ頼む。
昼休憩中の用事が残ってる、急ぎでたのむ。」

今日の衣装は、昼休みの時間帯に研究所へ届く様手配している。

宅配便だし、自分で受け取らないといけない。

更に、最終確認とできれば今夜のエスコートのイメトレもしたい。

「急ぎね、オッケー。
何系がご希望?
それにしてもセットだけなんて珍しいね。
なになに?仕事終わりでデート?
彼女できたの?
超ブラコンなのに?
ウケル~。」

慎吾は大学時代からの友人で美容師としての腕もいいし、勘もいい。

「宝塚の男役トップスターの髪型にしてくれ。」

「え?

・・・。

ナンダッテ?」

希望を口早に伝えた。

あれ・・?

この友人しんごが聞き返すなんて珍しい。

「宝塚の男役トップスターの感じで。」

「幻聴じゃなかった。
OKわか・・・
・・・
・・・っ!!
ゆーくん何でヅカ!?
ゆーくん午後から仕事休みなの!?」

「おぉ?
午後からも通常業務けんきゅうだけど?」

俺の希望を聞いて豹変した慎吾の鬼気迫った勢いに、つい答える。

急いでるんだけど。

「ゆーくん午後も仕事なの!?
なのにヅカ!?
ゆーくん研究職だよね!?
ゆーくんヅカヘアでナニ研究する気!?
ゆーくん美容院ココから研究所まで徒歩だよ!?
いいの!?
ゆーくん面白くなっちゃうよ!?
ゆーくんいいの!?
大分面白い感じのゆーくんになっちゃうよ!?」

おおう。慎吾がご乱心だ。

後、ゆーくん言い過ぎだ。

お前そんな取り乱すキャラじゃ無いだろ。

俺そんなに似合わないかな、宝塚(の髪型)。

「ゆーくん、罰ゲームか何か?
まさかパワハラ?
ただの美容師だけど、僕も一緒に戦うよ!?」

何故か深刻な声色で激しく心配される。

・・・そんなにか。

そんなに駄目か、宝塚の男役の俺。

『王子様 髪型 画像 写真』でネット検索かけて、行き着いた王子様が宝塚の男役だったんだけど・・・。

「パワハラでは無いよ、慎吾、落ち着け。」

「落ち着かなきゃいけないのはゆーくんだよ!」

そんなに駄目か。

・・・そんなにか。













※慎吾さんは市井兄の大学時代の友人で芸術学科の造型専攻から美容師になりました。芸術活動もしています。

宝塚を馬鹿にしてる訳ではありません。ただ市井兄には恐ろしく似合わない髪型なだけです。慎吾くんは髪のプロとして必死なだけです。
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