僕の恋、兄の愛。4

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水曜日。深夜から朝

市井兄と朝食。

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唐所長のメッセージを受け、“王子”の役作りに本気になったのは、ディナー当日早朝2時頃の事だった。

俺は健介の夫だぞ!
嫁の為なら中途半端な役作りなんぞするか!!

健介!
兄ちゃん、完璧な王子を仕上げるから待っててね!(健介は寝室で爆睡中)

そこからは、深夜の謎ハイテンションランナーズハイでぐんぐんを吸収し、空が明るくなった頃には、俺の王子様は完璧に仕上がっていた(気がする)。

今の俺の立ち振る舞い・気品は、もう王子だ(と思う)!

ヨシ!イケル!

そこからイソイソと衣装、もとい今日の本番用の服装を準備し、配達を頼むべくコンシェルポートに出向いた。
これも、今日の“王子様サプライズ”の為の演出だ。

普段は送りたい物をリビングに置いて、コンシェルポートにメールしておくと、コンシェルジュが部屋まで荷物を取りに来て、荷造りして送ってくれる。

今日は健介に衣装スーツを入れたスーツバッグを見られる訳にはいかない。

それに、家のスーツバッグを持ち出したら、健介にバレるかも知れない。

細工は流々、念には念を、備え在れば憂い無し。

謎のハイテンション継続中の俺は、衣装スーツをそのままコンシェルポートに持ち込んだ。

「おや、市井様。おはようございます。」

「配達の依頼をしたいんですが。」

「そうでしたか。
メールでも内線でも、ポートへご連絡頂きましたら、お部屋までお荷物を取りに伺いましたのに。」

「早く目覚めてしまって。
運動がてらに荷物を持って来たから気にしないで下さい。」

「左様ですか。
ではお荷物お預かりします。
配達はどちらへ?」

「あ、私の職場へ。
配達時間は・・・

早朝(朝4時半)のコンシェルポートにウキウキで入ってきた俺を、コンシェルが不審がっていた・・・事には気付かなかった。

家に帰りベランダへ出る、朝日だ。

“王子様”をトレースし終わったからか、寝てないのに何故か爽やかな気分だ。

だが俺がいまから王子様キャラだと健介が怪しむだろう。

専門書でも読んで日常へ一旦気持ちをリセットしよう。

リビングで本を読んでいると、あっという間に時間が過ぎて6時半。

いつもの朝と同じ時間に、
「兄ちゃんおはよう♪
今日は早起きなんだね。」
とご機嫌の健介が起きて来た。

「おはよう。
今日も健は可愛いね。」

「ふふん♪
すぐ朝ご飯作っちゃうね♪」

鼻歌を歌いながらキッチンに入っていく健介を見送る。

今日の夕食、随分楽しみにしてるんだな。と、思いながら再び本に視線を戻した。

しばらくすると朝食のいい匂いがしだす。

今朝は和食のようだ。

ああ、幸せだな。

さて、俺も朝の支度にかかるか。

夕飯の特別感ディナーを演出するために、今はまだ張り切ってはいけない。

出勤はいつものスーツといつもの髪型、いつもの鞄で行こう。

今日昼の予定は、昼休みに唐所長に気になることを相談して、ヘアメイクに出る、そして衣装スーツの受け取り最終確認を行う、と。
ちょっとタイトだがいけるだろう。

それと健介との朝ご飯で、ディナーの話題はできるだけ避ける、かな。

今日ほんばんが始まる。













※唐所長の手の平で転がされる市井兄。
絶対考え事しちゃいけないダメな時間帯を狙ってメールを送った唐所長。

※コンシェルポートは24時間対応中です。
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