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喧嘩の後に

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「怒ると思ったから、一応直前にヒントは出したでしょ」
「…そうですけど」

美咲さんと出会って以来、多分初めての口論というものが、今日--つまり3月31日の夜の出来事だ。

「…でも冴子、なんだかんだ言って悪い気しなかったんじゃないの?」
「……」

美咲さんが私のショーツを脱がせてそこに取り付けてあったリモコンローターを外してくれた。
私はその場から逃げ出したくて、下半身だけ裸の状態でベッドにうつ伏せに倒れる。

*-*-*-*-*-

「今日の今日で申し訳ないけど、二宮さん受付最終日だから、送別会には来てね、パスはなし」

受付の先輩社員が幹事を務める私の送別会。
当日に声をかけられたが、主賓である以上断るわけにもいかない。

本当は早く帰って明日からの秘書課勤務に向け準備を整えたい気持ちもある。それにねぎらいや励ましなら、美咲さんと二人だけで、美咲さんだけにされたいというのも本音だ。

こういう時、どういう訳だかどの人も、きっちり定時に上がるもので、そういう事なら実際問題会社で残業してる人って、やろうと思えばなくせるんじゃないのなどという余計な事も思ったりする。
まあ、受付担当業務において残業となる事の方が珍しい事ではあるけれど、それでも今日は年度末だ。

一応美咲さんに連絡しておこうか、とスマホを見るとちょうどその時美咲さんからメッセージが届いていた。

美咲「冴子、今日送別会でしょ」
冴子「なんで知ってるんですか」
美咲「ちょっとね」

知っているならまあ良いかと思い「そういう事なので少し遅くなります」とメッセージを送りスマホをバッグにしまった。

ところがその送別会に、あろう事か美咲さんがやって来るという展開が待ち受けている事を、その時の私は知らなかったのだ。
しかも美咲さんは更に二人の人物を伴い、会社近くの居酒屋に現れ受付女子たちの歓声を浴び、皆の注目をかっさらってしまった。
連れていたのは夏川さんという秘書課の主任と、進藤部長という開発部の部長だった。美咲さんは特にこの人たちとは親しいようだった。

夏川さんは「フライングしちゃってごめんね」などと詫びつつも、一瞬にして受付女子の卓に溶け込んでしまうような空気読みの達人っぷりを発揮しているし、進藤部長は、美咲さんが入社後間もない頃からとてもお世話になった、いわば父というか兄というか、戦友のような存在らしい。

私の知らない、でも私以上に美咲さんを知っている人が二人も現れて、それだけでも私は大混乱だったのに、挙句狭い居酒屋のトイレで美咲さんに待ち伏せされて、そこで美咲さんは私のショーツの中にリモコンローターを仕込んで「このまま外しちゃダメよ」などと命じてくるのには焦った。

「そもそもなんでここにお姉さまが来てるんですか」
「呼ばれたから、だけど」

小さなトイレの、これまた小さな手洗いスペースで鉢合わせた時、私はまずそれを美咲さんに確かめた。

「だからなんでお姉さまが呼ばれたのか、という話で」
「それは冴子のお仲間に聞いてもらわないと」

問いただすまでもなく、それについては既に幹事が冒頭述べていた事だ。
受付女子の大半の人気を独占している美咲さんを招集しようとは彼女らの思いつきそうな事だし、その口実として私の異動先が秘書課だから、とかなり強引にこじつけて美咲さんに声をかけたのだろうとは思うけど、だからと言って乗ってどうする、と私は思う。

「ま、みんな盛り上がったしいいじゃないの」
「……」

いろんな人に話しかけられ、笑顔で受け答えする美咲さんを目の前で見ているとどうにももやついて仕方ない。
更に言えば美咲さんの連れ二人も、これはこれで社内でそこそこ名の通った人でもあり、その人たちと美咲さんとの距離感の近さも目の当りにさせられて、虫の居所が悪いのも事実だった。

「こっちに来て、早く」

美咲さんがトイレの個室へと手招きしてくる。
ちょっと嫉妬心に火がついている最中にこういう事をされると、普段より高揚するのは何故だろう。

黙ってその個室に入ると、美咲さんは素早く扉の鍵をかけて私にキスしてきた。

…どうしたんだろう?と思ってそれに応えていると、美咲さんが例の艶っぽい声で、しかも悪戯っぽく「持って来ちゃった」と囁いてくるではないか。

「何を…ですか」

同じぐらいの小声で返すと、美咲さんはどこからかリモコンローターを取り出して「これ」と見せてくる。

「お姉さま、本気ですか」
「うん、本気」

成す術もなく美咲さんにショーツを下ろされリモコンローターを股間にセットされてしまう。
ここはトイレだし、誰か来たらまずいと思うあまり、早く出なくてはという気持ちが勝って抵抗できなかった。

「信じてますけど…その」
「大丈夫」

頭の中では「何が大丈夫なんだ」と突っ込んでいるのに、美咲さんにあのいやらしい声色で囁かれてしまうと、何も言えなくなってしまった。

私たちはそそくさとトイレを出て、もといた席に戻る。
私は時計を確認し、せいぜいあと1時間程度我慢すればいいのだ、と、心の中でカウントダウンを始めた。
それは、飲み会そのものの終わりを待っているというよりも、美咲さんのいやらしい悪戯のえじきになる残り時間を数える、という意味合いで。

大丈夫、美咲さんはそこまで無謀な事をするような人じゃない。それだけを頼りに残りの時間を過ごそうとしたけど、誰かとの会話が途切れて私がふいに卓にいる人全員の視界から外れたタイミングで、絶妙に股間のローターが震え出した。

…大した振動ではないのに、なぜか強烈に興奮する。
この卓には今日初めて挨拶した人もいるけど、友紀をはじめよく見知った人がほとんどを占めている。
私の隣には友紀が座っているし、近くには夏川さんもいる。それまでの話から、夏川さんは現在美咲さんや進藤部長など複数の部長を担当している人なのだとわかった。

以前美咲さんが言っていた、「冴子に似てるかも」というその人と初めて会ってみて、そんなに似ているのだろうか、と疑問に思ったけど、あまり派手そうでない所は似ているのかもしれないと思う。
ただ、夏川さんは目立たないタイプながら顔はめちゃくちゃ綺麗な人だ。私よりも長くちょっとくせ毛っぽい黒髪を後ろで一つに編んでいて、ぱっと見た時に保育士さんにこんな人がいたら最高だなと思ってしまうような、人を癒す力のある人だと思う。

でもこんな所に出てきてしまうあたりはきっと、好奇心もそれなりにある人なのだろう。
…なんで身近にこんないい人がいるのに美咲さんは手を出さないのだろうか、とずっと考えてしまうほどだ。

とにかく友紀と夏川さんに、このいやらしい悪戯が露見するのだけはまずい。
まずいと思えば思うほど、私の下半身は熱くなるばかりだった。

ふいに友紀が私の顔を覗いて「冴子大丈夫?具合でも悪い?」と尋ねてくる。

「え、なんで?」
「なんかちょっと顔が赤いような気がするから」

…無理だ。洞察力の鋭い友紀にはもう絶対ばれる。
涙が出そうになった所で股間のローターはぴたりと止まった。

「だ、大丈夫だよ」
「まあ明日から秘書課だし、緊張もするわよね」

さりげなく夏川さんがフォローしてくれる。その気の利いた感じさえ大変胸が痛くてならない。

「どうしたの?二宮さん」

そしらぬ顔で美咲さんまで話の輪に入ってこようとするので私はきつめに「何でもありません」と話しを打ち切った。
ひょっとすると、かなりの冷たい対応に受付女子から顰蹙を買うかもしれないけど、それもどうせ今日までの事だ。

「早めにお開きにしましょうね、あ、呼ばれてもなくて混ざった私が言うのも変だけど」

夏川さんがそんな風に言うので、私はむしろ夏川さんにしがみついて泣きたくなった。
しかし今度はそんな私の心を見透かしたかのように再び股間のリモコンローターが振動を始める。これは静かなものではなく、私だけにわかる事だがぐぃんぐぃんと強弱を繰り返しながら徐々に強くなるようなパターンだった。

「っ……」

思わず目を閉じてしまいそうになるが、ぐっとこらえる。
そもそも夏川さんに甘えたいと思わせる要因を作っているのは美咲さん本人なのに、いざ実際それらしい場面が出現したら私に仕置きって。倒錯もはなはだしい。

しかし程なくしてローターの動きは止まり、それきり動く事はなく、送別会はお開きとなった。

*-*-*-*-*-

「冴子~~」

ふてくされてベッドにつっぷしている私の背後から美咲さんの声がする。

「ったくお尻丸出しじゃないの」

何かされるかもと思い私は首をねじって背後を振り返った。

「布団汚すから、かぶってないんでしょ、見えてるわよ」
「……」

私はまた枕に顔を埋めた。
そう、私はあんな事をされたにも関わらず、確かに強烈に興奮してしまったのだ。

「ごめんね、いきなり色々あってワケわかんなくなったよね」

小さくベッドがきしんで、美咲さんがベッドに腰かけた気配がする。

「冴子の気持ちがわからないでもない、悔しいんだよね、多分」
「…はい」
「うん」

美咲さんは申し訳なさそうに私に向かって頭を下げているようだった。
私がほんの少し顔を上げた瞬間、そんな美咲さんの姿が目に入る。

「…なんで謝るんですか、お姉さまが」
「…だって」

美咲さんはこうやって、年下で分別のない私のような人間にも頭を下げられる人なのだ。
そこは美咲さんの美点だと十分わかってはいるけれど、私はただ、本当に単純に、美咲さんがそんな相手に謝罪をしている絵面を見たくない。どんないきさつがあるにせよ、そんな姿は美咲さんには似合わないと思う。

「…いいんです、本当は、そんなに怒ってないです」
「…うん」
「でも、どうにもならないのに、お姉さまの昔の事とか、今の事とか、もっと近くで見ていて知ってる人たちにかなわないなって思ってしまって」

「何言ってるの」
「……」
「今一番近くで私を見ているのは、冴子でしょ」
「…そうだけど、そうじゃないんです」

美咲さんは突然服を脱いで私の傍らに寝そべってきた。
密着されてよく見てみると、一糸纏わぬ姿でびっくりする。

「あの人たちが知ってる事は、明日からたくさん、実際にわかる事だから」
「はい……」
「今は悔しいかもしれないけど、本当にすぐにそんなの忘れちゃうわよ、きっと」
「…はい」
「冴子、顔上げて」

私が枕に埋めていた顔をほんの少し美咲さんの方に向けて持ちあげると、眼鏡を外した美咲さんと目が合った。
その時の美咲さんの表情を、多分私はしばらく忘れないだろうと思う。

「……っ…ん」

これまでで一番、と言っていいくらい美咲さんに優しくキスされた。それから美咲さんは「焦らないで」と声をかけてくれる。
…こんな優しいキスをしておいて、私のような人間に焦るなと言うのか。そんなの無理だ。

私は勢いよく美咲さんの首にしがみついて、あえて乱暴に美咲さんの唇を吸った。美咲さんは抵抗もせず受け入れている。
私のキスに応えながら、美咲さんは私の身体に回した手をゆっくり動かして、後ろ側からそっと指先で私の秘部を、確かめるように触れてくる。
そこが、ものすごく濡れているのはずっと前からわかっている事だ。
しかし直接触れられて、身体から力が抜けていく。自然と唇も離れかけてしまった。

「冴子」
「はい」
「…誰にも言ってない話、冴子にしてあげる」

私は、美咲さんの緩慢な愛撫を受けながら、過去の美咲さんの話を聞いた。
今の私よりももっと若い頃に、好きだった女性に裏切られたような気がした事、その人はあくまでも男性優先だった事など。

「…でも、本当に好きだったのかどうか、今となってはわからない、ただの意地だったようにも思うし」
「……」
「でも、めちゃくちゃ悔しかったんだ」

そう言う美咲さんは笑っていた。それが変に明るい笑顔で私は少し心配になる。

「人の心に、何一つ確かなものなんてないのにね。自分だけは違うと思っちゃうんだよね」

それは私にではなく自分自身の事として語っているようだった。
冴子にもそうであってくれとか、けれど冴子も違うんだからとか、そういう含みを一切感じない。

「…でも、お姉さまは、人を信じる事のできる人だと思います」
「どうかなあ」
「少なくとも信じてくれている人たちを裏切るような人じゃ、ないですよね…」
「…まあね」

私なりに、知っている限りの美咲さんの人柄を、きちんと伝えておきたい。
本人が思っているほど、冷めた人間ではないし、絶望してもいない。
自分だけはこうあろうという理想があって、それに届かないで落胆しているだけの事でしかないはずだ。

真面目に気持ちを伝えたいのに、美咲さんの指先がゆるゆると私の秘部を弄っているから、私は言葉に詰まりながら話していた。

「…だったら、それで十分じゃ、ないですか」
「…どうかなあ」
「あ……っん」

声が抑えられなくなり思わず甘い吐息が漏れてしまう。
それを受けて美咲さんはくすくすと笑って「気持ち良くなってきちゃったの?」と囁いてきた。

「…それは、…はい」
「じゃもっとしてあげる」

美咲さんの指が今までよりわずかに深く、第二関節の辺りまで花弁の内側に侵入してきたのがわかる。

「あぁ…ん……気持ちいいっ」
「可愛い声」
「…お姉さま、はぁ…ぁ……」

くちゅっという卑猥な水音が、身体の内側から聞こえてくるのかそうではないのかわからなくなる。

「やっぱり、これ聞くともっと鳴かせたくなるのよね」
「…鳴かせて、ください…」

潤んだ瞳ではあるけれど、しっかりと美咲さんの瞳を見つめてねだる。
そうすると美咲さんの体温が一瞬下がって、ほんのわずかな時間だけど、とてつもなく冷酷な表情を見る事ができるのを、私は知っている。
…だからこうして美咲さんを挑発するように、いやらしいおねだりをしてしまうのだ。

「…お願い、します…もっとしてください」

焦らされているのを承知の上で、私は美咲さんの身体にきゅっとしがみついた。

「困った娘ね」

これを言う時の美咲さんの表情は笑顔だったりする。
美咲さんは嬉しい顔で「困った」と言うのだ。

「…お姉さま、はやく」
「わかったから、煽らないで」

美咲さんが態勢を変え手、私の足元の方へと移動した。そして私を四つん這いにさせて後ろから私の秘部をしゃぶり始める。

「あ…だめっ」

恥ずかしいのと、泣きそうなぐらいに怒っていたのと、それらがごちゃ混ぜとなり私の感度はやたらと上がっている。
つい少し前までは、この場所にリモコンローターをあてがわれて強烈な羞恥に耐えていたのだ。

「ひゃ、あっ…あ…くぅ……ん」

美咲さんの、あのツルツルの唇と舌が私の花弁を揺らしては内側の蜜を掻き出して溢れさせていく。
何か別の生き物に愛撫されているみたいなのに、私のお尻や太腿を撫でているのは確かに美咲さんの手で、それが同じ人のしている事なのだと認識させられるとかえって興奮した。

既に身体はガタガタと震えてしまっていて、達しているのかどうかもわからない。今日は何だか変だ。
それを指摘されるより先に、自分から告白してしまう。

「今日、なんだかわたし、変です…」
「…そうね」

ぴちゃっという音の合間にそんな返事が聞こえてくる。
美咲さんはもう、とっくに気づいている事だろうに。

何も咎められもしていないのに、私はその理由を自分の口で言わなければならないような気がしていた。

「…お姉さま、私、やっぱり…っ…」

身体はビクッ、ビクッと大きく痙攣している。でも達しているのかどうか、よくわからない。

「…いいわよ、言わなくて」
「でも…っ…あ…」

恥ずかしさのあまり怒ってしまったけど、実際問題私はあの送別会の席でリモコンローターを仕込まれて弄ばれた事により、とてつもない刺激に耐えられないぐらいにまでなったのは事実だ。
それを素直に認めたくなくて、あんな風に振舞ってしまったけど。

どっと蜜が溢れてきたのか、美咲さんが音を立てて蜜を吸い取った。
ズズッという音の後から「…っん」と、何かを飲み下すような吐息が聞こえてきて、私は愕然とする。

「…あの、もしかして飲んでるんですか」

四つん這いなので振り返るのはきつい態勢だが、私は美咲さんの方を見ずにはいられなかった。

「…うん」

ぴちゃぴちゃという水音と、何かを飲み込む音の間に、美咲さんがそう応じてくる。顔は見えないけど、されている事ははっきりとわかるから、私は火が出るくらい恥ずかしくなった。

いや、これまでもどさくさで飲んでいた事はあったのかもしれないけど、こうもはっきりと「飲んでます」という音を出された事はなく、私は美咲さんが実際どうしているのかよくは知らない。

「そんな、やめ……あぁっ…」
「冴子はいつも飲んでるじゃない?」
「そ、そうですけど…違うんですっ…」

それに対する返答はなく、美咲さんは忙しそうに私の蜜を舐めてはすすって、こぼしそうになるとそれらを飲み込んでいく。

「だめ、そんな…されたら…あ、あい…っ……!」

雷に撃たれたように、というのはこんな感じだろうとその時初めて思った。
急激に、自分の身体が真っ赤に染まっていきなり大声を上げて崩れてしまう、そんな感じ。
…美咲さんには本格的に萌芽も、内側さえ触られていないのに。

「や、あ……はぁ…ん」
「凄いわね、冴子」
「…」

実際には、身体はどうにか四つん這いの態勢を保っていたようで、傍から見れば膝が笑っているような、そんな風に私は痙攣していた。時間差で花弁の間、それより後ろの方に感じてしまうのだけど、冷たい液体が噴き出していくのがわかる。
…潮が、美咲さんの顔面にかかる、そう思って腰を落とそうとしたが間に合わなかった。

「…冴子」
「ご、ごめんなさい…出ちゃってますよね…」
「中も触ってないのに…」

美咲さんの顔を見られない。汚していたら申し訳ない。

「大丈夫、そんなにかかってないから」

美咲さんは私の態勢を楽にさせるように促してきて、私はベッドの上で大の字になる。
少しだけ美咲さんの顔を見ると、実際顔にはあまりかかっていなかったようだが、下ろしている髪の左側だけがぺたっとなっている。

「…恥ずかしいの?」

美咲さんが顔を寄せてきてそんな風に聞いてくる。
私はと言えば、ふてくされてベッドにつっぷした時のまま、上半身は服を着たままの状態だ。

「…そりゃ、そうですよ」
「ふーん…自分はメチャクチャ引っかけられて喜んでるのに?」

言いながら美咲さんの指先は、今度は私の胸元へと伸びてきて、服の上からでも適格なタッチで乳首を刺激してくる。

「わ、私がかけられるのと、それとこれとは別ですっ」
「…そうなの?」

…だけど。
私がまき散らしたもので濡れている美咲さんの髪や肌は、なんだか特別なもののような気がして、不思議な気分ではある。
そして美咲さん自身が、それらを拭おうともせずに次なる愛撫を我慢できなくてそれに熱中しているのもまた、堪らないものがあった。
そうやって、直接的に欲望の対象にされる事が、かつては嫌だったはずなのに、美咲さんにだけはそうされて嬉しいと思っている自分に気付く。

「今度は、私がします」

普段なら、達したばかりの身体であろうとも私は機敏に動かせるはずなのに、今日はなぜだか身体が思うように動かせない。

「…あれ」

身体を起こす事ができず戸惑っていると、美咲さんがちょうど私の手の近くに横座りして、寝たままで触れるようにポジションを変え手くれた。相変わらず美咲さんの手は私の胸を揉んだり、乳首をコリコリとつまんだりしている。

指を伸ばして美咲さんの秘部をまさぐると、びっくりするほどベトベトに濡れていて、私ははっとした。
急いで指先を花弁の間に沈めてみると、中はものすごく熱い。
下から突き上げるように指先で内壁を擦った時、美咲さんは身体を揺らしながら気だるい喘ぎ声を上げてきた。
それを聞いてようやく記憶の時計が逆戻りし、あの居酒屋で、私を虐めていた時からずっと、美咲さんもすごく興奮していたんだな、という事を理解する。顔に出さないのが上手いから、全くそうは思えなかったが。

「…お姉さま、ごめんなさい…っ」
「何が?…あ、っ……」

そんな事もわからなかったのか、と言われそうだし多くは言うまい。
その代わり私は指を動かして美咲さんの内側も、萌芽も、くまなくヌルヌルにして執拗に弄り回した。

「あ、冴子ったら…やぁん」

掌に溜まってくるぐらいに、美咲さんは蜜をこぼしながら甲高く喘いでいる。
私は美咲さんの腕を引っ張ってこちら側に倒れさせ、夢中でキスしながら美咲さんの中を掻き回した。つられて美咲さんも再度、私の秘部に指を二本突っ込んできてめちゃくちゃに掻き回してくる。

「…んふ、ん…ぅ…」

自分がされたいように掻き回す、という感じもしないではないけれど、結局それは同じ事なのだ。
美咲さんの腰が自然に前後に揺れて、いやらしい。
そう思う私も、美咲さんの指をより深く受け入れたくて、わずかに腰を振っている。

潮で濡れた美咲さんの髪が落ちてきて、仰向けの私の髪と絡んでいく。それもまたどうしようもなく卑猥で、二人の境界が溶けてなくなっていくような錯覚に陥った。

互いに声にならない声で「イく」事を伝え合い、更に動きを激しくして、果てていく。
その時、意識は真っ白になるのだけれども、自分の中にもう一人、しっかりと染みこんでいくように互いの存在を認識できている。
タイミングはどうだか知らないけど、この時私は確かに「二人でイく」感覚を味わっていた。

*-*-*-*-*-

そのまま少しじっとして、そしてまたどちらからともなく挿入したままの指は抜かずに再び中を擦っていく。

ああ、繰り返すんだ、終わらないんだ、そういう事なんだ、と知らず理解していく自分がいて、そういう心のありようを、美咲さんもわかってくれているという確証がある。

「…何回、するんですか」
「何回だろうね」

二回目よりも三回目、それよりも四回目と、達するまでに要する刺激はどんどん少なく、短くなっていく。
それが0になった時に、二人とも「ああっ」と深い息を漏らしながら、眠りに落ちた。
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