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陽射しに咎められても(美咲SIDE)

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この一泊温泉旅行は「お祝い」のつもりでセッティングした。
だけど、冴子が本来何を喜ぶ娘なのか、私は何も知らない気がする。
現に旅行中の冴子は確かに楽しそうだし嬉しそうでもあるけれど、どこか違和感を覚えているような、場違いな所に来てしまったかのような、所在なさげな表情を時折見せていた。

冴子の、何かにつけ「つまらない」といった、感情の動かなさそうなイメージは、時に人を寄せ付けにくくさせる。
その雰囲気を打ち破ってくる物は大抵、あつかましくデリカシーに欠けた野蛮な男ばかりなのだろう。
冴子と二人で街を歩けば、そのようなあつかましい視線に晒される冴子を目撃する、それも始終という事とイコールであり、私にしてみればけっこうな苦行でもあった。
だから毎日のように一緒に通勤したりもしなかったし、二人きりで旅行するというのも、そんな冴子を見て気持ちがざわつく自分を認識するだけの事のようでもあり、どちらかと言えば嫌な事だと思われた。

かと言って冴子を誰の目にも触れない場所に閉じ込めておくなんて物理的にも無理だし、それは人として何か間違った発想のようでもあり、自己嫌悪した。
言葉の上では冴子を飼うなんて冗談も言うけど、そういう行為に優越感は覚えない。
唯一、それが許されて自分にとっても良いと思えるのは、ただ冴子がそれを願望として思い描き、実現できたらどんなに嬉しいか、という事を知った時だけである。

冴子が一時的に、絶対服従者として振舞う事にとてつもない恍惚を覚えたり、飼われているという状況に身を置いてその惨めさに涙しながらも性的に興奮している事を隠さないからこそ、私は思い切ってそういう行動に出られるけれど、それについて以外何を知っているのだろうか、と時々虚無に襲われる事もあった。

性的に満たされる事だけが、冴子の幸せなのだろうか。
…それは多分違う。

庭の露天風呂でお互いの秘部に指を沈めてまさぐり合った時、冴子は泣いていた。
達しながら冴子は「あまりに気持ち良くて、幸せで」と言い訳のように呟いていた。

「…誰かに聞こえちゃうかもって思うと怖いのに、お姉さまと一緒だと、それさえも…すごく興奮してしまうんです」

やはり、冴子には露出のスリルを快楽に変える能力があった。
いつも、あつかましい視線に晒されてそれを嫌悪しているのに、それを逆手に取り「感じている自分を見せつける」事に昇華させる事の甘美な味を知ったのだ。
やはり、冴子は自分の容姿が人並み以上である事に誇りを持っている。

この旅行では、冴子が喜ぶ事は何でもしてあげようと思っていた。
だけど、お土産も「渡す相手がいない」と固辞される。
そりゃ、異動もありそこでいきなり温泉まんじゅうを配るのもな、とは思うけど。

そういう事であれば仕方ない、家でもできる事ではあるけど、やっぱり冴子を可愛がる時間をたくさん取るより他にないじゃないか、と思った。

もう一つ、冴子はまだ知らないだろうけど、秘書課は実際に女の園である。私と年代が近くスペックも高い女子が揃っている部署だ。
…冴子がその中の誰かに目を奪われる事も、逆に誰かの目に留まり手を出される事も、両方あり得る事だと、私は真剣に危惧している。
仮にそうなるとしても、そうなる前にどうしても、冴子の思い出に刻まれるような事を、なんでもいいからしておきたかった。
だから冴子が恐縮、というか萎縮するであろう事も見越して、それでもこれだけの宿を選んだという訳だ。

少し酔った冴子の身体がほぐれるまでに時間はかからなかった。
露天風呂も内風呂も、その贅沢さを堪能するより先に、私たちはお互いの身体を求めてしまって、それどころではない。

「お姉さま、もっと…したいです」
「うん」

赤くなった顔で、苦しいはずなのにまだ冴子は懇願する。
一度スイッチが入ればとてつもなく貪欲になる、冴子のそういう顔を知っている者は今の所私が筆頭なのだろうけど。
羞恥に耐えながら私に甘えてすがってくる冴子はものすごく愛おしい。
そしてそんな冴子を見ていると、もっともっと深い快感の底に突き落としたくもなる。それは勿論、私と一緒にだ。

「冴子」
「…はい」
「部屋へ戻ろう、そこでいっぱいしてあげる」

冴子の中で期待感が弾けてそれがもろに表情に現れる。
少しぐったりとしている冴子の身体を支えてやりながら二人で部屋へと戻った。

*-*-*-*-*-

「ひゃあ、…あぁんっ……お姉さまぁ…!」

…若干こちらが引くほど、部屋へ戻った後の冴子は悲鳴にも近い大きな声で鳴いた。
アルコールと温泉ですっかり火照った身体に、いきなり「あれ」を突っ込むと、冴子は異常に感じてしまっているのか、叫んだり身体をくねらせたりして、自分の中に留めておけないぐらいの快感をどうにか外へと逃がすように反応する。

「冴子、…いつもより感じてるの?…」
「はいっ、あ…ん…はぁん」

大して動いていないうちからこの騒ぎではどうなる事かと思うけど、だからと言って半端に止めるわけにもいかない。
冴子自身こうまで出来上がっているようだと、簡単に納得できないだろう。

畳に敷かれた布団の上、小さな行灯に照らされた冴子の身体は、普段よりも妖艶に見えた。
温泉に浸かる時にはクリップで髪を止めていたけれど、知らないうちにそれが外れていて、枕の上には冴子の真っすぐな黒髪が広がっている。

「…もっと奥まで欲しい?」

冴子は黙って頷く。言葉を話す時間さえ惜しいのか、あるいは全ての体力を、性的な事に消費したいのか。
こういう時の冴子は、実はものすごく合理主義になる。

「わかった、じゃいっぱい突いてあげる」
「はい」

そこは声で返事するのか、と驚きつつ私は冴子の両脚を持ちあげてお尻の穴が見えるぐらいの所まで持っていった。冴子の身体が二つに折れて、肩の上まで脚を上げさせられている、そんな恰好だ。

本来この態勢だと奥までは入れにくいのだが、締まりを強くして摩擦を高めたかったからあえてそうさせる。
けっこうな力を入れて「あれ」をズブズブと押し込んでいくと冴子は小さく身体を震わせた。

「やぁ…っ、入ってくる…」
「そりゃ入れてるんだから、そうに決まってるでしょ」
「お姉さまだけなんでそんな冷静なんですかぁ」

冴子はそんな事を言いながらも、秘部に伝わる摩擦に強烈な快感を得たのか、またそれを逃がすように顔を左右に振った。

「動かすわよ」

返事は確認せずに、深く突っ込んだ状態で小刻みに「あれ」を前後に動かす。そうすると冴子は一瞬で飛ばされそうになるのをこらえながら「はぁ」と息を漏らした。

「冴子、可愛い声がいっぱい出ちゃうのね」

冴子の目が大きく見開かれ、すぐに伏せられる。
あえて余計な考え事をさせておいて急に現実へと引き戻すように、私は冴子の内側を激しく擦った。

「ああ…っ、だめ……いっちゃう」

私は瞬きをするのも惜しく思いながら、冴子が好きなリズムで中を擦り続ける。
この後は、後ろからもたくさん突いてやろう、それからまたお風呂でもイかせてあげようか、などと次々思いつく事を整理しながら。

「あぁ、あ……うぅ…ん」

冴子の喘ぎ声が一際甘ったるいものに変わる。媚びているようでそれがまた強烈に加虐心を煽ってくる。

一度達したであろう冴子を強引に四つん這いにさせて、いきなり激しく後ろから「あれ」を突き入れ大きく前後に振った。

「きゃぁ、あ、あ、う…んん……っ」

甘ったるい喘ぎ声がそのまま継続する。やっぱり、もっと欲しがっているように聞こえるから、後ろからでも容赦なく「あれ」で冴子を犯した。

「お姉さまぁ、凄い…気持ちいいっ」

冴子と交わっているとよくある事なのだが、根本的に冴子の身体はセックスに強いから、やっている間にむしろようやく身体がなじんで感じやすくなり、後から後から快感のピークというか、キャパが上がる感覚がある。
一回溢れたと思ったキャパが、その数分後には二倍以上のものとなりそこを満たそうと貪欲になるのだ。
それが一晩のうちに繰り返されていき、冴子は達するほどに受け止める快感の容量を増していく。

だから、激しく犯しているはずなのに、やっているうちに私の気が遠くなるような錯覚に陥ってしまうのだ。
冴子がセックスで消耗せず、達した後むしろ機敏に動けるのにはそういう資質が備わっているからだと思う。それでも体力はかなり消耗していくのだけれど。

「あ、あの…気持ち良くて、私…」

大丈夫よ、と答える代わりに私は冴子のお尻の肉を掴んで身体を固定させつつますます激しく冴子を犯した。

「あれ」をぬけばもっと明らかになるだろうけど、多分冴子は今潮を吹いているのだろう。

「あ…あ…っ」

冴子の声がだんだん消え入りそうになる。
また、失神するかもしれない。それはそれで、と思いながら、冴子の事が心配でもあり腰の動きを緩めたくなるのを抑えて、ペースを変えずに冴子の中に「あれ」を挿入し続けた。

「……」

がくっと冴子の身体が不自然に痙攣してそのまま態勢が崩れていく。
まるで寝落ちしたかのように。
…でもこれは眠ったのとは違う、それが私にはわかった。

うつ伏せでは苦しいだろうと思い、私はそっと冴子の身体を横に転がして仰向けにさせる。
さっきまでものすごくうるさかった冴子の声が急に止んでしまったから、部屋が随分静かだなと感じた。

「……」

冴子の静かな呼吸音を聞いていると、さっきまでの事がまるで何もなかったかのように感じられるけど、「あれ」にはべったりと冴子の蜜がまとわりついていて、それが現実の事だったと物語っている。

一分と経たないうちに冴子は覚醒し、じっと私の顔を見つめてきた。

「あれ、もしかして」
「…落ちた自覚あったんだ?」
「…ほんの少し、だけですけど…」

冴子は天井を向いて何か思い出そうとするかのように考え込んだ顔をしたけど、それをさほど続ける事もなく終わる。考えても無意味な事だ、と早々に諦めたようだった。

「…まだできる?」
「…全然、できます」

以前冴子が言っていたけど、落ちた本人にとっては落ちた自覚などない、という事である。自分が落ちるかも、とさえ思わず、記憶は繋がっているのだと。
今日は二回目だから、ほんの少し「落ちるかも」とは思ったのかもしれない。

私はそういう冴子の事が愛おしくて、でも自分の身体の下敷きにしたくはなくて、冴子の身体の下に入ってその態勢で冴子を抱きしめた。
まだ、交わりの痕跡が色濃く残っている、蜜まみれの場所を再び結合させると、冴子はまた「あぁん」と甘い声をあげた。

「冴子はこれも好きだよね」
「これだけじゃなくって…全部、好きです……っ」

下から突くとその動きに合わせて冴子の大きな胸が揺れる。
冴子は、上半身を起こしている時もあれば、前に倒して私にしがみついてきたりもする。
キスしたくなればいつでもできるし、自分の感じるポイントにしっかり擦りたければその角度に身体を起こす事もできる。
だから冴子の自由が多くて私もこの態勢は好きだ。

「…お姉さまぁ」

下から突かれる快感をたっぷり味わいながら、冴子が私の唇に吸い付いてくる。その合間に軽く冴子は喘いで、気持ち良さを伝えてきた。

「…好きです、お姉さま」
「私も、冴子の事が好き」
「はい」

嬉しそうな表情を見せたのも一瞬、突然中の感度が上がったのか冴子は「あぁっ」と追い詰められたような声をあげた。

「…いっちゃいそうなの?」
「…はいっ」

私は冴子の腰をつかんで、それまでより激しく冴子の中を穿つ。
冴子の、大きな胸も黒い髪も小刻みに揺れて、それが私の身体にさらに密着してくる。
腰から下だけは、互いに前後に動いて密着したり離れたりを繰り返してるけど、それがやっぱり卑猥な感じで私の頭の中は沸騰しそうになった。

「や……あんっ、いっちゃうっ」

イかせるためにこうしているわけじゃないけど、冴子が達したいならそれに近づけるまでの事だ。

「お姉さま、わたし…今日変なの」
「そうだね」
「う…ん…っ」

「はい」ではなく「うん」という相槌。途切れてたけど、多分そうだ。
それはおそらく初めての事ではなかろうか。
冴子は、基本的に私に対して最低限丁寧語を使うはずなのに。
その余裕すらなかったのか、もしくはそれ以上に私を近く感じたのか。

私にとっては衝撃的な出来事だけど、冴子はあまり意識していないだろう。
だからその事には触れずに、ひたすら冴子の欲しい場所に「あれ」を打ち込み続けた。

*-*-*-*-*-

どれだけ、二人の交わりが続くだろうかと思ったけれど、私たちは案外早く力尽きてしまい、結局5時間ぐらいはまともに眠っただろうと思う。

明け方に一人で改めて庭の岩風呂に入ってみると、やはりその広さには感嘆した。
明るい場所で改めて自分の身体を眺めてみると、所々に冴子に付けられた爪の跡や歯型がくっきりと浮かんでいて、この年になってこんな身体になるとは、と可笑しくなった。

「お姉さまを、独り占めしたい」と涙目で訴えられたので、特別に噛むのを許可したつもりだけど、派手にやられてしまったものだ。
飼い犬に、ということわざがあるけど、これでは到底飼い主たり得ないなあ、という可笑しさもある。

どうせ正気に戻った冴子がこれを見れば、違う涙を流して謝罪するんだろう。
と同時に、少しでも冴子のそういう気持ちが軽くなれば、と思い温泉の効能に期待するしかないかな、とお湯に浸かった。

隣に私がいない事にすぐに気付いたのか、冴子が後から内風呂に入ってきたようだった。
控え目に湯を流す音が聞こえてくる。続けて冴子が自己嫌悪するように「あー」とうめくような声が聞こえてきた。湯船に浸かって出る声とは違う響きがある。

心配になり内風呂を覗いてみると、冴子が苦し気に座り込んでいた。

「…大丈夫?」
「股間が痛いです」
「…なんだ」

なんだとは何だ、と言わんばかりに冴子が不満そうな顔を向けてくる。

「温泉に入ると、しみるかもしれないんですよ」
「まあ、そうかもだけど」
「……」

冴子はそれでもどうしても湯船に浸かりたいらしく、ものすごくゆっくりとした動きで檜の湯船に入っていった。
こちらも気が気ではなく、息を飲んでそれを見守る。

「…大丈夫でした」
「何よ、もう」
「すみません」

ようやくほっとして肩をすくめていると、冴子が急に私の裸の身体に視線を走らせる。

「あ…」

言うより先に冴子の顔に「すみません」の表情が浮かぶ。
私はやはり可笑しくなった。

「謝るのはまだ早いわよ」
「…え」

私は冴子に自分の背中が見えるように身体の向きを変えた。冴子の息が詰まる様子がわかる。

「私、なんでそんな場所噛んだんでしょうか」
「知らないわよ」

実際そこにどうやって跡がつけられるのか、大変難しい場所にも冴子の跡が残っていた。
例えば肩甲骨の近くだとか、腰の辺りだとか。
あと、多分お尻にも付けられたような気がする。

「ちゃんと消えてくれたらいいんですけど」

冴子が消え入りそうな声でそんな事を言っているが、一方で私の身体についた跡を見て少し興奮しているようでもあった。

「年取ると消えるのに時間かかるのよ」
「……」

笑って良いのかどうかわかりにくい事を言ったろうか。
そして冴子はますます静かになってしまった。

「私は冴子の身体を、そこ以外傷つけてないからね」
「は、はい」
「だからしみるのぐらい我慢しなさい」
「我慢します」

私は冴子とは距離を置いて、同じ檜の内風呂に浸かった。
申し訳なさからか、冴子はちょっかいを出しては来ない。

「朝食は7時からだけど、レイトチェックアウトにしてるから、ご飯の後また襲っちゃおうかなあ」
「…」

冴子は、はいともいいえとも言わない。嫌ではないのだろうけど。

「これだけやられたし、私も冴子に証跡を残しちゃおうかなあ」
「…付けてください、お姉さまのならいくらでも欲しいです」

小さな声だけど、確かに冴子はそう言った。
そんな風に言われると、せっかくおさまりかけていた熱がまた復活してしまうではないか。

「あ……あんっ」

きれいに洗った身体を再び布団に横たえて、私はまた冴子の秘部を汚すような真似をする。
朝食の7時ぎりぎりまでこれを続けてやろう、と私は心に決めて、冴子の全身に指を這わせた。
昨夜何度も達して一度眠って、おそらく冴子の感度はものすごく高まっているはずだ。少しの刺激でも、これでもかというぐらい強い反応を返してくれる。

「冴子、いやらしいわね…触ってるだけなのにそんな声出して」

カーテンを開けているから、夜とは違い、朝の陽射しを受けて広大な庭がよく見えた。そして私たちの身体も朝の光に照らされて細かい所までよく見える。

「だって…っ」
「だって?」

聞き返すが冴子は答えない。代わりに私の指先が繰り出す刺激に小さく身体を震わせるばかりだった。

「…感じちゃうから?」
「はい」

さきほどの宣言通りに私は冴子の耳たぶを少し強めに噛んだ。冴子がぴくりと身体を震わせたけど、特に抵抗はしない。
それでも、私は冴子の、特に人から見える場所に自分の跡を残すなどという行為はエゴイスティックに思えてみっともないという考えだから、強めには噛むけど跡は残らないよう力は加減した。

冴子の耳たぶから離れて表情を確認すると、冴子は自分で驚いているような顔をしている。
不思議に思って見ていると、冴子は恥ずかしそうにこう言った。

「…痛いのに、気持ちいいんです、すごく感じちゃって」

なるほど、あれだけ人の身体を噛んだのは、自分がそうされたいからという事ね、と腑に落ちる。

「じゃ、もっとされたいわけね」

あえて冷たく言ってみるけど、冴子は否定せず「…はい」と小さく頷いてみせた。
朝食の時間が迫っているだけに、あまり後戻りのできない事をするのはまずいと思いつつ、これだけ煽られるとこちらも我慢がきかなくなりそうで困る。
悔しさ半分、憤り半分でやけになって裸の冴子の、乳首ではない旨の斜面の辺りも噛んだし、お尻の肉も噛んだ。
冴子はその都度「あんっ」と喘いで身体中を火照らせる。
…もう冴子の頭の中からは、食事の事など消え失せているのだろう。

「…これからご飯食べるんだからね」
「はい、わ…わかってます」

絶対忘れていただろう、と咎める視線を少しだけ注いで、冴子には「お風呂で流しておいで」と促した。

宿の朝食は、おかゆとちょっとしたおかずというシンプルな組み合わせである。それでも細々と工夫をこらしたおかゆのお供があって、一通り試すだけでもたくさんのおかゆを食べる必要があった。
冴子は、朝食はしっかり食べる派なのでかなりたいらげていたけど、私はまあまあの量を残した。
第一、気分的には食事どころではない。早く冴子との、いやらしい行為の続きをしたかった。そのためにここへ来たのだから。

それでも冴子が満足するまで食べる時間は確保する。
チェックアウトは14時、あと5時間以上もある。
昼食は抜いても構わないだろう、もしくは宿を出てから軽く済ませれば良い。そうするためにも冴子にはしっかり食べておいてもらいたかった。

もう一眠りしたいから、と宿の人に頼んで布団は敷いたままにしてもらっている。
食事の後だしあまり下半身に強い刺激を与えるのははばかられると思い、私は冴子を浴衣姿のまま押し倒して胸元だけをはだけさせ、冴子の乳首を軽く吸った。

「あ、はぁ…っ」

たくさん温泉に入った効能か、冴子の歯だはすべすべしている。だからと言うわけでもないけど、私はひたすらに自分の手で冴子の肌に触れていたくなり、その欲望に従っていた。
胸から脇腹、腰やお尻など身体の横のラインを撫でていると、冴子はくすぐったそうに身体をよじる。
あまり身体を動かされたくなくて、思い立って冴子の唇にキスしながら、私は冴子の肌の触感を楽しんだ。

「き、気持ちいい…です…」
「うん、私も」

当初は胸元だけはだけていた冴子の浴衣が、私の手の動きによってどんどん大きく剥がれていく。
もう、上半身のほとんどが見えてしまっているし、袖も肩から外れて、頼りなく腕に絡んでいるだけとなっていた。

私がそうさせておきながら、いやらしい恰好の冴子を咎めたくなる。
冴子は、なぜか自ら腰の紐を外して、横たわったままで浴衣を脱ぎ捨てた。脱いだ浴衣の上に冴子の肢体が横たわっている絵がまた変にいやらしく思える。

「…お姉さまも、脱いで……裸でくっつきたいです」

冴子に言われるまま私も浴衣を脱ぐ。そうすると、冴子に付けられた跡が丸見えになるから冴子にとっては恥ずかしいだろうと思ったけれど、冴子はそれ以上に私の肌に直接触れたいと願っているようだった。

あまり体重をかけないようにしながら冴子に覆いかぶさると冴子は気持ち良さそうに「はぁ」と息を漏らした。

「冴子、舐めて」
「はい」

ほんの少しだけ冴子を抱きしめてから、私は身体の位置を反転させお互いの秘部が顔の前に来るような態勢になった。

「お姉さま…ほんとに綺麗です」

冴子の視界に見えているのは私の秘部とお尻と太腿ぐらいではないか。それなのに冴子はそんな事を言う。
冴子の熱い指先がそっと私の内腿を撫でてくると、私の身体は反射的に蜜を溢れさせた。

「…凄い、こぼれてきそう」
「早く舐めて、冴子…」
「はい」

秘部に冴子の舌が届く位置まで、腰を落とす。同時に私も蜜でぐちゃぐちゃの冴子の秘部をすすった。
どこからか鳥のさえずりが聞こえてくる中、静かな部屋にはお互いの秘部を舐める事で発せられる小さな水音が響いていた。時折下品なぐらいにずるずると長く低いすすり音も混じり、その行為の卑猥さが際立っているように思える。

「…はぁ、あ…ん」

水音の合間に漏れるのは、苦しいながらも快感に耐える喘ぎ声だ。
実際には相手の秘部をしゃぶっているのに、まるで自分の秘部にしているのではないかと錯覚する瞬間がある。それはお互いの快感の高まりがリンクしている証拠だ。

「お、お姉さまの…舌が」
「…ん?」
「ああぁ…っ、舐めるのできなくなっちゃいます」
「…ダメよ」

冴子が音を上げるので私は一瞬だけ強く冴子の口元に自分の秘部を押し付けた。すかさず冴子の舌が動いて内側を掻き回されるので、私も肘から崩れてしまいそうになる。
互いの顔がより深く、相手の股間に埋まっていく、それもリンクしているのだ。

「…ほんとに上手いわね、冴子」
「……っ」

褒め言葉に対して冴子の秘部は敏感に反応する。花弁の内側に潜む、外側からは見る事のできない、隘路の入り口がひくひくと動いているのだ。そこを舌先でつつきながら、冴子にわからせるように付け加える。

「冴子のここ、ひくひくしちゃって可愛い」
「やめて…ください、そんな…」

先を言いたくないのか、冴子はわざとらしく音を立てて私の蜜を吸う。
それに呼応して私も「あぁっ」とこらえられず声が漏れてしまった。

澄んだ朝の光がだんだんと変かし、高く上った所から注がれる陽射しはエネルギーを伴って気だるい雰囲気を消そうとするけれど、私たちはそんな事などおかまいなしに淫らな行為にふけった。
陽射しに咎められる程度でこの行為を止められるわけがない。

「…お姉さま、もっと舐めさせて」
「…いいわよ、好きなだけ…っん」

冴子より先に私が達してしまった。それに気付いたから、冴子はわざわざ確かめてきたのだろう。
とろりと溢れ出る私の蜜を、冴子は盛大に音を立ててすする。そうするのが冴子はどうも好きらしい。

「…っ、また…来ちゃう」

私も必死で冴子の秘部に舌を這わせてはいる。けれども身体が震えてしまい、それをきちんと継続できなくなっていた。
均衡してリンクしていたはずの二人のバランスが崩れていく。
今度は私が落とされる番だ。

できる範囲で冴子の花弁に舌を潜り込ませて動かしはするが、それは冴子をイかせるための動きではない。
その代わりに冴子は自由を得て好きなだけテクニックを駆使しながら、私の中を弄んでいった。

「はぁ、あ…ん……冴子、もう…いっちゃいそう」

それを合図とばかりに冴子の口淫は更に激しくなり、私の身体を一気に強い快感が駆け抜けていった。

「んぐ…っ……」

冴子が溺れそうなうめき声をあげてきて、ようやく私は冴子の顔から少し腰を浮かせなければと意識を取り戻した。
そのまま、冴子の脚の間に自分の太腿を割り込ませて、冴子の身体を半分横に起こしながら、秘部同士が密着するように脚をかませていく。

「わ…凄い、ぬるぬるしてる」
「さっきまで舐めてたでしょ」
「そうですけど…あはぁ…ん」

陽射しの下で行うものとしては一番背徳的かもしれない、と思いながら、私は冴子の秘部に自分のそれを擦りつけた。
柔らかくて、でも小さな萌芽だけは硬く尖っていて、擦れるだけでも気持ちいい。その上互いの愛駅がどんどん溢れてきて、内腿から上は全て、どんどんぬめりを増していくのだ。

「…お姉さま、気持ち、いいです…」
「…私も」

ただ単にそこを擦っているだけなのに、どうしてこうも卑猥な音がするのだろうと考えてしまうぐらいに、私たちの股間はいやらしい水音を立てていた。

「う…んん……あぁ」

「あれ」を使っている時のような強烈な刺激はない。大きな質量も伴わない。
だから、細く長くこの快感は続き徐々に高まっていく。会話も交わす事ができる。
けれども私たちは言葉も交わす事なく夢中でその行為だけに集中していた。

唯一、達する時だけはそれを伝える、その事以外何も考えていなかった。

「…お姉さま、いっちゃいそうです…っ」

今度は冴子が先のようだ。だけど私も追いつきたい。
そう思って自分の快楽優先とばかりに腰を振ると、冴子は急に大声で喘いだ。

「そんな、急に…されたらっ…」

と言われてもこちらもにわかに動きを止める事はできない。
心の中で「ごめんね」と謝りながらも更に腰をスライドさせて冴子の秘部に自分の秘部を擦りつけた。

「あ、あ…いく…っ」
「お姉さま、あぁ…っ…!」

どうにか、ギリギリ冴子に追いつきほぼ同時に達する事ができた。

それからまた一緒にお風呂に入り、身体を洗って再びそれを触り合って喘ぐ、というのをその後何回繰り返したろうか。
結局チェックアウトぎりぎりまでそんな事をしていた所為で、私も冴子も疲れ果ててしまった。

*-*-*-*-*-

車の助手席で冴子は眠っている。それも致し方ない。
私も、普段なら休憩なしに東京まで帰れる道を、二回ほど休憩を挟んで運転した。

明日のスケジュールはどうだったか、となんとなく記憶をたどる。
確か冴子は明日有給を取っていたのではなかったか。それを今になって思い出したが、反面私自身がほっとしている。

…そうか、それがあったからあれだけ好きにやってしまったのか。

こんな状態で私は明日まともに働けるのか。つくづく自分が疑わしい。
冴子には申し訳ないけど、このまま帰宅したらすぐに眠る事にしようと思う。

休憩のために立ち寄ったパーキングで、簡単に食べられるパンやお弁当を買う。冴子を起こす事はしなかった。

恵比寿のマンションに戻ったのは、それでも午後5時前くらいだった。
温泉へ旅行しておいて、いや確かに温泉も堪能はしたけれど、新婚夫婦がするようなしょーもない過ごし方をしてしまった。
やっている最中はそれで楽しいし何の後悔もないけれど、一人になると微妙に大人げなかったと反省はする。

「着いたわよ」

地下の駐車場に車を止めて冴子を起こすと、冴子はきょろきょろと周囲を見回していた。

「もう、帰ってきちゃったんですか」
「うん」

冴子は一瞬だけ名残惜しいような顔をしたけれど、すぐに気を取り直して「本当に楽しかったです」と笑顔を向けてくる。
それを見て私も突然脱力してしまい、「うん」と返すのが精いっぱいで、あとはもう、あまり記憶がはっきりしない。
多分そのまま部屋で眠っていただけなのだろう。
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