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たくさん焦らされて
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友紀とたくさん飲んで食べて喋って、そして美咲さんの待つ部屋に向かう。
いつもと同じはずなのに、マンションへと向かう路地に入って、その静けさを改めて実感する。きっとさっきまで友紀とたくさん話して、自分が賑やかにしていたからだろう。
そっと部屋の玄関ドアを開けると、美咲さんが出迎えてくれた。
「おかえり」
「…ただいま、でいいんでしょうか」
「いいんじゃない?」
玄関でこうして美咲さんに迎えられて、あの日の事が蘇る。
美咲さんと初めて会った時、美咲さんはドアを開けて迎えてくれたんだったな、と。
靴を脱ごうとして屈む瞬間、美咲さんに「待って」と止められ、そのまま抱きすくめられてしまう。
「あの…靴が」
美咲さんの胸に向かって呟くが、離してくれる気配はない。
私は特に抵抗せずその状況を受け入れた。
…多分、キスされる、そう思って身構えていると、美咲さんは私の顔を覗き込んで「楽しかったみたいだね」と言った。
「はい」
「良かったね」
友紀にどんな話をして、それを友紀がどう受け止めたのかはまだ話していないのに、私の表情だけでそこまで見通したとでも言うのだろうか。
「…でも、もっとちゃんとお姉さまを捕まえておかないとダメだとも、言われました」
「え?」
言いながら反芻する。
あの電話の時、美咲さんにもっと本気を伝えなければと考えた自分の気持ちを。
更に友紀にも確かにそう言われたのだ。事実敵は袴田氏に限らず多い事だろう。
同棲に慢心して気を抜いてはいけないのだ。特に私の場合、けちらすべきライバルは概ね働き盛りのハイスペ男子とか、その辺になるのだから。
「……」
美咲さんは何も言わずただ唇を重ねてくる。
まだアルコールが抜けていない私の口の中は大丈夫だろうかと心配になるが、そういう理性もすぐに吹き飛びそうなほど、美咲さんとのキスが気持ち良くて、私は夢中になって美咲さんの唇を食んだ。
「冴子は余計な事考えなくていいのよ」
「…そうでしょうか」
「だって、これからは秘書課勤務でしょ?」
「…はい」
正直な所、「余計な考え」は美咲さんとのキスでけっこうどうでも良い事となりつつあったけど、美咲さんの方も何か気にしているかもしれない、そういう素振りを感じた。
「電話で言った事、気にしてる?」
「してません」
若干食い気味に答えてしまい、まずかったかなと思う。
「私は、気にしてる、後悔もしてるかな」
「……え」
美咲さんはもしかしたら、自分の表情を見られたくなくて、この狭い玄関でいきなり抱き付いてこんな話をしているのかもしれないと思った。狭いと言っても、他の部屋に比べたら、という比較の話で、私のバッグは無造作に上がり框の縁に落とされたまま転がっている。
私の気持ちを確かめるまで、部屋には上げないと言われているかのようで、私の背筋に冷たいものが走った。
…当たり前じゃない、この関係は簡単に壊れるんだ。
「ごめんね、冴子」
美咲さんの身体が離れていく。私は、なぜか靴を脱ぐ態勢に入れずそのまま玄関に立ち尽くしていた。
「なんでお姉さまが謝るんですか」
「……」
何か様子がおかしい。今度は胸のあたりがざわざわするような感じだ。
美咲さんは、そのまま身体を引いて先に部屋に向かおうとして歩き出す。私は慌てて靴を脱ぎその後ろを追いかける。
「どうかしましたか、何か…」
美咲さんの態度に違和感はあるが、それは何故そうなっていてどうすれば解決できるのか、私にはわからない。
「水かお茶、どっち飲む?」
美咲さんはキッチンに足を進めてそんな事を聞いてくる。
さっきの違和感はもう消えている感じがする。いや消えたのではなく消したのではないか、という不安がかえって私を焦らせた。
答えずにいると突き放されそうな気がして、「お水で」と答えながら、私はキッチンまで美咲さんを追いかけた。
美咲さんは「何やってるの」とでも言わんばかりに、焦燥感いっぱいの私を見ている。その態度に、私だけが何か勘違いしているような気もしてきて、ひるんでしまいそうになるけれど、さっき確かに感じた違和感を見逃すわけにはいかなかった。
「…座ったら?」
「はい」
けれど美咲さんの言葉に、私は無条件に従う。それを無視できるほど、私は美咲さんに対して強くものを言える気がしなかった。特に今は。
とりあえずそのままキッチンで手を洗ってソファに移動すると、すぐに美咲さんが水の入ったコップを持ってきてくれた。
「大した事じゃないんだけど、冴子にそこまで真剣に心配されると、困っちゃうな」
「…」
水を飲む私に、美咲さんが話を切り出した。
だけど、美咲さんはなぜか一人で笑っている。
「…こんなじゃ、仕事中の私なんて見られたら終わりかも」
「どうしてですか?」
「だってこの程度の気持ちの変化に気付かれるようじゃね、冴子が私の代わりに部下を怒鳴る勢いになりそうで」
「…そんな事、しませんよ」
「…本当?冴子はやりそうな気がする」
「いえ、その…実際見ていないのでわかりませんが」
「ほら」
美咲さんが私の顔を指さして笑う。
改めて美咲さんの恰好を見てみると、スウェット素材のネイビーのパーカーに短めの淡いブルーのプリーツスカートを合わせていて、その下にレギンスを履いている、部屋着だけどちょっとコンビニぐらいなら出られるような服装だった。
一方の私は、私服とは言え仕事帰りでもあるので、いわゆる最近の通勤スタイルとなっている白のシャツワンピースにカシミアニットのグレーのロングカーディガンを羽織っているという恰好だ。
仕事となれば美咲さんは基本スーツスタイルだし、こういう部屋着姿をむしろ見慣れている私からしたら、スーツスタイルの美咲さんの方が新鮮でちょっとときめくぐらいなのだ。
だけどきっと、美咲さんが普段どういう恰好で寛いでいるのか、会社の人たちは知らないんだな、と思うと奇妙な感覚を覚える。
「ほんと、大した事じゃないのよ」
断りを入れてから美咲さんは呆れたように呟く。
「…いつも冴子はこういう感じで待ってるのかなーって、そういう事考えたら、なんか色々思っちゃった、それだけ」
「……」
根本的に、社会的な立場が違うのだから、私が美咲さんを待つ事に対して、特別な感慨なんてない。
「ね、それなのに、私が遅く帰って来ても、冴子はいつも私の身体を気にしてくれてるのが、凄いなーって思って」
「はぁ…そうですか?」
「そうだよ」
別に気遣うと言っても、結局それはその時だけで、寝る前には美咲さんの身体をガツガツ求めているのだが、それは関係ないのだろうか。
美咲さんにとって「誰かの帰りを待つ」という行為が、不慣れ過ぎるという事なのだろうか。
「それであんな事言っちゃった」
電話の話の事か。私が美咲さんを捨てる、という話。
あれはあくまでも客観的事実について述べただけだ、と私はとらえていて、美咲さんが感情的になって発した言葉だとは、受け取っていなかったけれど、美咲さん自身にとってはどうやら失言らしい。
「こんな事さえ我慢できなくなるっていう自分の器の小ささに、愕然としてるのよ」
「…いいんです」
「え?」
私は空になったグラスをテーブルに置くと、美咲さんにきちんと向き直りきっぱりと宣言した。
「そういう気持ちがあったとして、お姉さまが自分を責める必要はないですし、私はちょっと嬉しいぐらいです」
そう、そのものズバリを口にはしないが、美咲さんに気付いてもらわなければならない。
多分その感情の正体は、寂しさか、または嫉妬という言葉で表現されるものだから。
「……」
美咲さんはちょっと混乱しているようだった。こういう表情は、公司共におそらくまず人に見せないだろうから、これまた新鮮で私の独占欲を満たしてくれる。
「私は、お姉さまだけのものなんですから」
美咲さんが不安だと言うなら言葉にしてなるべく伝えるまでの事だ。そのためだったらどんな恥ずかしい事でも、何度でも言いたい。
「私が…?」
嫉妬してるって言うの?という言葉が後に続くのだろう。
これまでに、美咲さんは自分が嫉妬心を持っているという類の事は過去に何度も発言している。だけど今回はそれらの発言と矛盾する態度だ。
わからない、という風に美咲さんは瞳を閉じてソファの背もたれに背中を預けた。
「…友達に話した事、良くなかったですか」
「そうじゃない、それはいいの」
「…」
「冴子が楽しい時間を過ごして、私も嬉しいのよ?」
「はい」
「友達にも、応援してもらえたんでしょ?」
「…はい」
「でも、家で冴子を待っている間、もやもやしてるのよ、私が」
「…それは」
それはきっと、私の所為だ。だから素直にこう伝える。
「もやもやするのは、きっと…私とお姉さまとの繋がりが、まだまだ弱いからではないでしょうか」
「…」
美咲さんは目を細く開けて、私の話を聞くでも聞かないでもないような様子だ。
婉曲に、どちらとも取れる言葉を選んで私は提案する。
「お姉さま、優しいから…思う通り縛って閉じ込める事ができない人だから」
「…うん」
ここまでは、精神的に、の意味で言った。美咲さんは人を束縛していいと言われても、できる人じゃない。
だったら物理的に縛るぐらいはしても良いではないか。そういう思いを込めて、「私は、物理的に縛られるの、多分大丈夫です」と告げる。
「冴子は、縛られたいの?」
「お姉さまになら、されたいです」
「…」
美咲さんの中にある混乱が、加虐心に切り替わるのは割と簡単かもしれない、などと私は冷静に推測までできている。
実際に縛るかどうかは別としても、もっと美咲さんの支配欲を満たすような交わりがあっても私には何ら問題はないし、そうされてみたいかと言われれば答えはイエスだ。
いつかの、「女王様モード」未遂事件を思い出す。あの先にきっと美咲さんのそういう顔が隠れていて、出る寸前だった。
あれを引き出す事ができたら、どれだけ私は興奮するだろう。
柔和で優しい美咲さんは勿論魅力的だが、それはみんなが見知った姿だ。それに対して、冷徹で有無を言わせない、絶対権力者たる美咲さんの顔は、きっと誰も見ていない。
私はそこが見たくてたまらないし、それを見せる相手として私が選ばれ、それを見る事を許されるという事に、どれだけ優越感を覚える事だろう。考えただけでもものすごく惹かれる。
「…いいの?」
「もちろんです」
眼鏡の奥の美咲さんの瞳に冷たい光が宿った気がして、それだけで私は卒倒しそうになる。
確かめるまでもない、いいに決まっているではないか。
*-*-*-*-*-
「ん…もう、許してください」
「ダメよ」
温存していた、リモコンローターを装着された私は、ひたすら涙目で美咲さんに懇願する。
あの後シャワーを浴びる事も許されず、私のショーツの中には美咲さんの手によりリモコンローターが装着され、ついでに両手首もロープで縛られてしまった。
その状態で、ひたすらに焦らされて、もう限界を迎えそうになっている私を、美咲さんは楽しそうに見つめているのだ。
最初のうちは立ったままの状態で我慢しろと言われて、身体中を愛撫された。不規則に振動するリモコンローターの刺激と、美咲さんの愛撫やキスで、私は立っていられないほどに感じてしまう。
服を着たまま手首を拘束されているので、美咲さんの手でボタンを外されたシャツワンピースや緩んだブラが床に落ちる事はない。だらしなく肩や腕に衣服が絡んでいる状態で、美咲さんの舌が私の胸の先端をしゃぶってきたので、私はいよいよ大きな喘ぎ声をあげてしまう。
「あ、だ…め……」
そんな、小さな抗議など全く耳に入っていないような様子で、美咲さんはやりたいだけ私の乳首に吸い付き舌先で嬲り尽くす。
「っ…あぁ…ん……」
美咲さんの舌使いがやけにいやらしく感じるのは、手首を拘束されているからか、それとも股間にリモコンローターを仕込んでいるからか。
「だ…もう、いっちゃいそうです…お姉さま」
「…?」
下から美咲さんに一瞥され、それだけでも危うく達しそうになる。
視線は「まだダメよ」と言っているからだ。
その証拠に、リモコンローターの振動がいきなり弱弱しく、しかも間の抜けたリズムに変わってしまった。これでは達するのは無理だ。
「ね、冴子…その顔」
「……」
自分がどんな顔をしているかなんて、今の私にわかるわけがない。
そういう思考が透けて見えたのか、わざとらしく美咲さんはこう付け加えた。
「物欲しそうな顔」
「……っだって…」
「だって、何?」
「…こんなに、焦らされたら…」
口にはなんの拘束もされていない。だから私は何を言っても、どれだけ喘いでも良いはずなのに、思いついた言葉をそのまま口にはできなかった。今の美咲さんからは、そういう威圧感が漂っているから。
それに何か言えば上げ足を取られて更にきつい仕置きが待ち受けている気がしてならない。
「何、物欲しそうな顔してるのが恥ずかしい?」
「……それは」
一応頷くが、美咲さんは乾いた笑い声を立てた。
「バカね」
「…え」
「すっごいイイ顔なのよ」
「…はい」
「だからもっと焦らしてあげる」
「やめて…ください」
「やだ」
その一言で私は地獄に突き落とされたぐらいに絶望する。
達する事を許されない、許可なく達すれば仕置きが待っている。
「ちょっと…冴子、床が汚れるわよ」
「す、すみません」
本当に涙が落ちそうな目になったまま、それを拭う事もできず詫びる。
床の状態はどうなのか、私にはわからない。
目の前に美咲さんが座り込んでいて、私たちはフローリングに敷いたラグの上で行為に及んでいる。
おおよそ私の蜜が垂れているのだろうとは思うけど、そこには指一本触れてもらえないのだ。
「パンツ履いててこれだけ垂らすって、どういう事なのよ」
「知りません」
「…」
知らない事ではない。単純に、ショーツの中に溜めておけない量になったから、それ以外の理由があるものか。
「…他の振動パターンもあるんだけど、試す前にダメになりそうね、冴子は」
「だ、大丈夫です…頑張ります」
「ふーん」
美咲さんは無造作にリモコンスイッチのボタンを繰る。
どんな振動が来るのかわからないので私は身体を硬直させて構えた。
今度は、強めの振動が、ブーッと長い時間オンになり、リズムを刻まない。振動しっぱなしという事か。
「あ、あぁぁ……あ…」
「立ってられないの?困ったわね」
「すみません…」
美咲さんが私の太腿を抱えるようにして支えてくれるけど、やっぱり秘部には触れようとしない。
「だ、もう…っんふ…」
「可愛い声」
「や、もう…許してください」
「ダメよ」
それもそうか、と思う。ほんの数十秒前に「頑張る」と宣言した事は忘れていない。
その舌の根も乾かぬうちに、私は音をあげているのだ。
「じゃ、こっち来て」
相変わらずリモコンローターの振動は延々と止まる気配はないが、ようやく立った姿勢から変わる事ができると思うと多少ほっとする。
ふと見ると、美咲さんが自分の履いているレギンスとショーツを下ろしてソファに腰かけていた。
「そこに座って」
何も言われなくても、やるべき事は理解できる。
私は床に跪いて美咲さんの股間に正対し、目の前に広がる光景に陶然とした。
美咲さんの秘部も濡れているのが見て取れる。
舐めさせてもらえる、と思うとそれだけで嬉しくなった。
手が使えないのは残念だけど、それでも構わない。
私は両手を前について顔を前に出し、スカートの中にある美咲さんの秘部に舌を這わせた。
「あ、あ…んっ…」
私を虐めながら、美咲さんも興奮してくれている、それがこの秘部の状態と美咲さんの喘ぎ声でよくわかる。
「お姉さま、凄い…濡れてる」
「あっ…あ」
舌先を尖らせて美咲さんの萌芽の、やはり先端をくすぐると、美咲さんは甲高い声をあげた。
「冴子、それ…あ…はぁんっ」
美咲さんが欲しがっている刺激を、忠実に繰り出す。何度でも、美咲さんが飽きるまで止めない。
「あなた…自分がどういう状態か、わかってるの?」
「……」
美咲さんが私を「あなた」という二人称で呼ぶのはこれが初めてだと思うけれど、そういう呼ばれ方をされるのも新鮮でやたらと興奮してしまう。
自分が、二宮冴子ではなく、ただのいやらしい女の一人として扱われているようで。私の自我が消えてなくなる感じ。だからこそ、私が二宮冴子として美咲さんの記憶に残るように、更に口淫を重ねて尽くすのだ。
愛おしい、そういう気持ちを込めて美咲さんの萌芽にチュッ、チュッとなるべく可愛らしい音を立ててキスすると、美咲さんの手が動いてリモコンスイッチを繰った。
「……っ」
今度はリズムを伴う強めの振動。今までで一番感じるパターンかもしれない。私は一瞬呼吸が止まるのを自覚したが、それを美咲さんに見咎められたくないと思うのも虚しく、美咲さんがいたずら好きの子供のように笑った顔と目が合う。
…まずい。
「感じてきちゃった?冴子」
「それは…さっきからそうですけど…っ」
「ほら、もっと舐めてよ」
「…はいっ」
舐めている最中に振動パターンを変えられるのは非常に辛い。自分なりにやりたい愛撫、美咲さんの好きな舐め方を維持するのが難しくなるからだ。そういう困惑をわかった上で、美咲さんはリモコンスイッチを、絶妙なタイミングで繰っている。
「…ん…っ」
身体が震えてくる。両手を不安定な状態で床についている事も、リモコンローターの振動も、理由は色々あってよくわからない。
それでも私は美咲さんの秘部を舐め続けた。身体の震えを止められず、口淫に励みながらも時折「んあ」とか「うっ」という声が漏れて、それが美咲さんの身体にも響いているはずだ。
「…そうよ、感じながら舐めてる冴子、すっごくいやらしい…あんっ」
唯一の救いは、こんな惨めな姿の私を見ている美咲さんが、興奮しているというのがわかるから、だから私の心はくじけなかった。
「…お姉さま、おいしい」
言おうとしてではなく勝手にそんな言葉が出る。言ってから自分も妙に興奮して、ますます美咲さんの秘部を激しく舐め攻め立てた。
実際、そこはおいしいのだ。花弁の外側と内側を順番に舌先でなぞると、中から蜜が溢れてくる。そこに軽く舌先を沈めて、今度は上にある萌芽に蜜を擦りつけるように舐め回す。すると美咲さんの体温がぐっと上がって、内腿がピンク色に染まるのだ。その変化さえ愛おしく、私は内腿にも舌を這わせるけど、それは長くはしない。また美咲さんの秘部からどっと蜜が漏れてくるから、次はそこに口を付けて、ずるずると蜜を吸い取るのだ。
この時は、なるべく低い音を立てて、卑猥な感じに。そうすると美咲さんの甲高い嬌声が際立って、ますます甘美な響きを伴う。
私が立てている下品な水音と、美咲さんのか細く甲高い嬌声のコントラストがたまらない。そしてそういう、いやらしい器官と嬌声を出せる声を持つ美咲さんはものすごく美しい。
ずるずると秘部をしゃぶる合間に、私はそれを伝えずにはいられなくなり、「お姉さま、ほんとに綺麗です」と声に出して伝えた。
そう言う私を見下ろす美咲さんの表情は、我慢できないくらい感じている身体と、それに相反するように心や感情というものが混じり合っている、ちょっと冷静な表情に変わる。その顔が、私はものすごく好きだ。いちいち言葉にはしないけれど。
その分私は行為で返したいと思うから、美咲さんの秘部にがっちり吸い付いて離れようともせず、そして繰り出されるリモコンローターの振動に下半身をがたがたと震わせながらも、美咲さんの脚の間に顔を埋め続けていた。
「…これじゃ私がいっちゃうじゃない」
「…?」
美咲さんは何回達しても良いではないか。私は不思議に思って顔を上げる。
「舐めさせてると、かえって気が紛れてるみたいだけど」
「…そんな、事は…」
「ほんとに?」
「…はい」
黙っているが私だってめちゃくちゃ感じている。限界ギリギリの所で耐えているのだ。唯一、美咲さんに奉仕できるという喜びにより緩和されているだけの事で。
美咲さんの視線が下に落ちて、私の膝あたりに注がれる。
どうにか、床は汚していないはずだけど、それ以外は何の自信もない。
「…見えますか」
「いまいち」
そう言われて私は床に尻もちをつくような姿勢を取り、美咲さんによく見えるように両脚を開いた。
「…酷いわね」
「はい」
「でも、すっごくいやらしい」
「…はい」
それはそうだ。ぐしょぐしょに濡れたショーツの内側に仕込んであるリモコンローターが、リズムを刻んでいる音が漏れてきている。私の内腿はべっとりと蜜で汚れており、何度も塗り重ねた透明な塗料のように内腿が光っているに違いないのだ。
「…やっぱり、見てると指か何か突っ込みたくなるのよね」
美咲さんは少しぐったりした様子でそんな事を呟く。
なんとなく、美咲さんはプレイと言えども加虐心を長時間維持するのは疲れるタイプなのかな、と思った。根が優しい人だから。
「……」
「でも、私がイくまで、舐め続けなさい」
「はい」
「それまで我慢できたら、たっぷり可愛がってあげるから」
「はいっ」
私は俄然元気になり身体を起こして再び美咲さんの股間に顔を埋めた。
今度は美咲さんも、自分の快感のみに集中するようでもあり、私の奉仕に素直に感じている。
さっきまでは、感じていながらも私の様子を観察しているようだったけど、もうそれは止めた感じだ。
「冴子、もっと…激しくして」
「…はい…っ、んん……」
「そう、それ、いい…っ…あんっ…いいよ」
褒められると嬉しくなるのは人の常だ。
私はできる限り舌を伸ばして、美咲さんの内壁の、奥の方、お腹側の天井に届かせようと更に顔を強く押しあてた。
息ができないぐらい苦しいけど、それでも構わず美咲さんの中に侵入して舌で掻き回すように動かす。
「あ、あ…いっちゃう…冴子…」
美咲さんの手が私の頭にかかり、弱弱しい力でだが押さえつけられる。
その力の入らない感じさえも、美咲さんの優しさが現れているようで、私は涙が出そうになった。
だから行為で返すのだ。私の知り得る美咲さんの喜ぶ方法を、やり尽くす。
改めて唇で花弁を食んでずるずると蜜をすすってから、舌先を動かして穴の中をこじり蜜を呼び込む。
そうしてから萌芽にたっぷりと、蜜と唾液を絡ませて舌先でくるくると嘗め回す。
「きゃ、あ…いく…」
舌先から力を抜いて、唇も使いふわふわと柔らかく萌芽を包み優しく刺激する。
美咲さんも、次に何をされるのかわかっているはずだ。
「冴子、早く……」
いけない。自分が焦らされたせいか、今日は美咲さんを焦らしてしまっているようだ。いつの間にか美咲さんがおねだりする形になっている。
今日はリモコンローターを使っているから、もしかしたら美咲さんが達する所を見た瞬間自分も達してしまうかも、という予感にとらわれながらも、自分の口と舌はぶれる事なく美咲さんの萌芽を捉えていた。徐々に強く吸って、そこがぱんぱんに膨らんだ所で私はその場所に歯を立てた。本当に、ごくわずかに触れる程度に。
「はぁ、あ…あぁ……っ!」
美咲さんの矯正が更に甲高く跳ねて聞こえる。
何回見ても、本当にその姿は魅力的であり官能的だ。その場面に自分が居合わせている事が不思議なぐらいに。
達してぐったりとしている美咲さんの傍に這い上がる。
私はと言えば、服は前側をはだけてだらしなく崩れており、手首にはロープをかけられ、股間には未だ振動を続けるリモコンローターが付けられている。
そんな状態で私が美咲さんの顔に自分の顔を近づけると、本当に自分が犬にでもなったかのようで、言葉を発する事もできず、ただ美咲さんの表情をじっと見つめている事しかできなかった。
美咲さんは、そんな私の姿をうっとりと眺めつつ「冴子、可愛い」と呟いて私の身体を抱き寄せた。
手首が拘束されているから、私の方は美咲さんの身体に腕を回す事はできない。
「…このまま、してもいい?」
私は黙って頷く。
それから私は美咲さんの膝の上に座らされて、後ろから羽交い絞めにされさんざん胸を揉まれ乳首を弄られた。
「ここはどうなってるのかな」
ようやくショーツを下ろして、リモコンローターを外してもらえたけど、美咲さんはそのローターを手に握って改めて裸になった私の秘部に当ててきたりした。
「や、あ…っ」
「案外気に入っちゃったんじゃないの?これ」
「…う……」
「今度はこれを付けてドライブしようね」
思わず振り返って美咲さんの顔を見ると、美咲さんは楽しそうに笑っていた。
「…嫌なの?」
「そんなこと、ないです」
「じゃあ決まり」
秘部にローターを当てられたままで、私の唇と美咲さんの唇が重なった。思わずくぐもった喘ぎ声が出てしまう。
「ん…っ…はぁ」
「…また、その物欲しそうな顔」
「だって、欲しいから…あん」
美咲さんは、私の萌芽にローターを当てながら、もう片方の手で秘部を探り指を挿入してくる。
「っ…く…う……」
自分の鳴き声が、それこそ犬のようだと思った。
中に挿入された指がゆっくり動いて、内壁を擦る。ゆるゆると動いているだけなのに、私は一気に高みへと昇る思いがした。
「あ、いっちゃう…もう…だめです」
「ダメ?もういっていいのよ」
「は、はい…あぁんっ…あう……ん」
「可愛い声」
美咲さんも、私の身体のどこにどんな刺激を与えればいいかは熟知しているはずだ。
その部分を思い切り擦り上げられて、私の意識は飛びそうになる。
「ここでしょ」
「そこ、そこですっ…あぁ…お姉さまぁ…」
すがるような声をあげて、動かない手でそれでも美咲さんの腕を必死に掴んでしまう。
美咲さんは「感じてる冴子ってほんとに可愛い」と何度も囁きながら、そんな甘い囁きとは裏腹に激しく指で私の身体の内側を擦り続けた。
「お姉さま、多分もう…いってます…」
目を開ける事もできずそう呟く事しかできない。あとはただ喘いでいるだけだ。
「イってるの?でももっと欲しいんでしょ」
「…はいっ、あぁ…ん」
さんざん焦らされた挙句執拗に中を擦られ、前にはローターを当てられていて、もう自分の感度がまともかどうかも疑わしいくらいだった。
「…冴子のいく所がもっと見たい」
「見てください…っ…」
大人の女性は皆、こんなにしつこく長時間にわたって感じ続けるような行為が可能なのだろうか。
私の身体は、間違いなく美咲さんによって作り替えられていく、そんな気がする。
この、ねちねちとした攻めも、長時間にわたり延々と終わらないのではないかと思える時間の使い方も、私は好きだしもうそうでないと満足できなくなっている。
何秒間かは失神していたかもしれない。その不安と戦いながら、私は美咲さんを呼んで確かめる。
「お姉さま、また…いっちゃう」
「うん」
臨めばいくらでも、そういう言葉が聞こえてくるかのようだ。
私が尽くすはずだったのに、今は私が求めていて美咲さんが応えてくれている。いつからそういう反転が起こったのかもわからない。
「また、イってます…うぅ…ん……」
身体が痙攣する事もあれば、しない事もある。だから私はできる限り申告するのだ。達したという事を美咲さんにわかって欲しくて。
もうリモコンローターも外れて美咲さんの指がただ挿入されているだけなのに、たったその指の力だけで私は何度でも達する事ができる。
だけど、達していながらも私は美咲さんの事を思うのだ。これだけ与えられた分をどうやって返そうかと。
いつもと同じはずなのに、マンションへと向かう路地に入って、その静けさを改めて実感する。きっとさっきまで友紀とたくさん話して、自分が賑やかにしていたからだろう。
そっと部屋の玄関ドアを開けると、美咲さんが出迎えてくれた。
「おかえり」
「…ただいま、でいいんでしょうか」
「いいんじゃない?」
玄関でこうして美咲さんに迎えられて、あの日の事が蘇る。
美咲さんと初めて会った時、美咲さんはドアを開けて迎えてくれたんだったな、と。
靴を脱ごうとして屈む瞬間、美咲さんに「待って」と止められ、そのまま抱きすくめられてしまう。
「あの…靴が」
美咲さんの胸に向かって呟くが、離してくれる気配はない。
私は特に抵抗せずその状況を受け入れた。
…多分、キスされる、そう思って身構えていると、美咲さんは私の顔を覗き込んで「楽しかったみたいだね」と言った。
「はい」
「良かったね」
友紀にどんな話をして、それを友紀がどう受け止めたのかはまだ話していないのに、私の表情だけでそこまで見通したとでも言うのだろうか。
「…でも、もっとちゃんとお姉さまを捕まえておかないとダメだとも、言われました」
「え?」
言いながら反芻する。
あの電話の時、美咲さんにもっと本気を伝えなければと考えた自分の気持ちを。
更に友紀にも確かにそう言われたのだ。事実敵は袴田氏に限らず多い事だろう。
同棲に慢心して気を抜いてはいけないのだ。特に私の場合、けちらすべきライバルは概ね働き盛りのハイスペ男子とか、その辺になるのだから。
「……」
美咲さんは何も言わずただ唇を重ねてくる。
まだアルコールが抜けていない私の口の中は大丈夫だろうかと心配になるが、そういう理性もすぐに吹き飛びそうなほど、美咲さんとのキスが気持ち良くて、私は夢中になって美咲さんの唇を食んだ。
「冴子は余計な事考えなくていいのよ」
「…そうでしょうか」
「だって、これからは秘書課勤務でしょ?」
「…はい」
正直な所、「余計な考え」は美咲さんとのキスでけっこうどうでも良い事となりつつあったけど、美咲さんの方も何か気にしているかもしれない、そういう素振りを感じた。
「電話で言った事、気にしてる?」
「してません」
若干食い気味に答えてしまい、まずかったかなと思う。
「私は、気にしてる、後悔もしてるかな」
「……え」
美咲さんはもしかしたら、自分の表情を見られたくなくて、この狭い玄関でいきなり抱き付いてこんな話をしているのかもしれないと思った。狭いと言っても、他の部屋に比べたら、という比較の話で、私のバッグは無造作に上がり框の縁に落とされたまま転がっている。
私の気持ちを確かめるまで、部屋には上げないと言われているかのようで、私の背筋に冷たいものが走った。
…当たり前じゃない、この関係は簡単に壊れるんだ。
「ごめんね、冴子」
美咲さんの身体が離れていく。私は、なぜか靴を脱ぐ態勢に入れずそのまま玄関に立ち尽くしていた。
「なんでお姉さまが謝るんですか」
「……」
何か様子がおかしい。今度は胸のあたりがざわざわするような感じだ。
美咲さんは、そのまま身体を引いて先に部屋に向かおうとして歩き出す。私は慌てて靴を脱ぎその後ろを追いかける。
「どうかしましたか、何か…」
美咲さんの態度に違和感はあるが、それは何故そうなっていてどうすれば解決できるのか、私にはわからない。
「水かお茶、どっち飲む?」
美咲さんはキッチンに足を進めてそんな事を聞いてくる。
さっきの違和感はもう消えている感じがする。いや消えたのではなく消したのではないか、という不安がかえって私を焦らせた。
答えずにいると突き放されそうな気がして、「お水で」と答えながら、私はキッチンまで美咲さんを追いかけた。
美咲さんは「何やってるの」とでも言わんばかりに、焦燥感いっぱいの私を見ている。その態度に、私だけが何か勘違いしているような気もしてきて、ひるんでしまいそうになるけれど、さっき確かに感じた違和感を見逃すわけにはいかなかった。
「…座ったら?」
「はい」
けれど美咲さんの言葉に、私は無条件に従う。それを無視できるほど、私は美咲さんに対して強くものを言える気がしなかった。特に今は。
とりあえずそのままキッチンで手を洗ってソファに移動すると、すぐに美咲さんが水の入ったコップを持ってきてくれた。
「大した事じゃないんだけど、冴子にそこまで真剣に心配されると、困っちゃうな」
「…」
水を飲む私に、美咲さんが話を切り出した。
だけど、美咲さんはなぜか一人で笑っている。
「…こんなじゃ、仕事中の私なんて見られたら終わりかも」
「どうしてですか?」
「だってこの程度の気持ちの変化に気付かれるようじゃね、冴子が私の代わりに部下を怒鳴る勢いになりそうで」
「…そんな事、しませんよ」
「…本当?冴子はやりそうな気がする」
「いえ、その…実際見ていないのでわかりませんが」
「ほら」
美咲さんが私の顔を指さして笑う。
改めて美咲さんの恰好を見てみると、スウェット素材のネイビーのパーカーに短めの淡いブルーのプリーツスカートを合わせていて、その下にレギンスを履いている、部屋着だけどちょっとコンビニぐらいなら出られるような服装だった。
一方の私は、私服とは言え仕事帰りでもあるので、いわゆる最近の通勤スタイルとなっている白のシャツワンピースにカシミアニットのグレーのロングカーディガンを羽織っているという恰好だ。
仕事となれば美咲さんは基本スーツスタイルだし、こういう部屋着姿をむしろ見慣れている私からしたら、スーツスタイルの美咲さんの方が新鮮でちょっとときめくぐらいなのだ。
だけどきっと、美咲さんが普段どういう恰好で寛いでいるのか、会社の人たちは知らないんだな、と思うと奇妙な感覚を覚える。
「ほんと、大した事じゃないのよ」
断りを入れてから美咲さんは呆れたように呟く。
「…いつも冴子はこういう感じで待ってるのかなーって、そういう事考えたら、なんか色々思っちゃった、それだけ」
「……」
根本的に、社会的な立場が違うのだから、私が美咲さんを待つ事に対して、特別な感慨なんてない。
「ね、それなのに、私が遅く帰って来ても、冴子はいつも私の身体を気にしてくれてるのが、凄いなーって思って」
「はぁ…そうですか?」
「そうだよ」
別に気遣うと言っても、結局それはその時だけで、寝る前には美咲さんの身体をガツガツ求めているのだが、それは関係ないのだろうか。
美咲さんにとって「誰かの帰りを待つ」という行為が、不慣れ過ぎるという事なのだろうか。
「それであんな事言っちゃった」
電話の話の事か。私が美咲さんを捨てる、という話。
あれはあくまでも客観的事実について述べただけだ、と私はとらえていて、美咲さんが感情的になって発した言葉だとは、受け取っていなかったけれど、美咲さん自身にとってはどうやら失言らしい。
「こんな事さえ我慢できなくなるっていう自分の器の小ささに、愕然としてるのよ」
「…いいんです」
「え?」
私は空になったグラスをテーブルに置くと、美咲さんにきちんと向き直りきっぱりと宣言した。
「そういう気持ちがあったとして、お姉さまが自分を責める必要はないですし、私はちょっと嬉しいぐらいです」
そう、そのものズバリを口にはしないが、美咲さんに気付いてもらわなければならない。
多分その感情の正体は、寂しさか、または嫉妬という言葉で表現されるものだから。
「……」
美咲さんはちょっと混乱しているようだった。こういう表情は、公司共におそらくまず人に見せないだろうから、これまた新鮮で私の独占欲を満たしてくれる。
「私は、お姉さまだけのものなんですから」
美咲さんが不安だと言うなら言葉にしてなるべく伝えるまでの事だ。そのためだったらどんな恥ずかしい事でも、何度でも言いたい。
「私が…?」
嫉妬してるって言うの?という言葉が後に続くのだろう。
これまでに、美咲さんは自分が嫉妬心を持っているという類の事は過去に何度も発言している。だけど今回はそれらの発言と矛盾する態度だ。
わからない、という風に美咲さんは瞳を閉じてソファの背もたれに背中を預けた。
「…友達に話した事、良くなかったですか」
「そうじゃない、それはいいの」
「…」
「冴子が楽しい時間を過ごして、私も嬉しいのよ?」
「はい」
「友達にも、応援してもらえたんでしょ?」
「…はい」
「でも、家で冴子を待っている間、もやもやしてるのよ、私が」
「…それは」
それはきっと、私の所為だ。だから素直にこう伝える。
「もやもやするのは、きっと…私とお姉さまとの繋がりが、まだまだ弱いからではないでしょうか」
「…」
美咲さんは目を細く開けて、私の話を聞くでも聞かないでもないような様子だ。
婉曲に、どちらとも取れる言葉を選んで私は提案する。
「お姉さま、優しいから…思う通り縛って閉じ込める事ができない人だから」
「…うん」
ここまでは、精神的に、の意味で言った。美咲さんは人を束縛していいと言われても、できる人じゃない。
だったら物理的に縛るぐらいはしても良いではないか。そういう思いを込めて、「私は、物理的に縛られるの、多分大丈夫です」と告げる。
「冴子は、縛られたいの?」
「お姉さまになら、されたいです」
「…」
美咲さんの中にある混乱が、加虐心に切り替わるのは割と簡単かもしれない、などと私は冷静に推測までできている。
実際に縛るかどうかは別としても、もっと美咲さんの支配欲を満たすような交わりがあっても私には何ら問題はないし、そうされてみたいかと言われれば答えはイエスだ。
いつかの、「女王様モード」未遂事件を思い出す。あの先にきっと美咲さんのそういう顔が隠れていて、出る寸前だった。
あれを引き出す事ができたら、どれだけ私は興奮するだろう。
柔和で優しい美咲さんは勿論魅力的だが、それはみんなが見知った姿だ。それに対して、冷徹で有無を言わせない、絶対権力者たる美咲さんの顔は、きっと誰も見ていない。
私はそこが見たくてたまらないし、それを見せる相手として私が選ばれ、それを見る事を許されるという事に、どれだけ優越感を覚える事だろう。考えただけでもものすごく惹かれる。
「…いいの?」
「もちろんです」
眼鏡の奥の美咲さんの瞳に冷たい光が宿った気がして、それだけで私は卒倒しそうになる。
確かめるまでもない、いいに決まっているではないか。
*-*-*-*-*-
「ん…もう、許してください」
「ダメよ」
温存していた、リモコンローターを装着された私は、ひたすら涙目で美咲さんに懇願する。
あの後シャワーを浴びる事も許されず、私のショーツの中には美咲さんの手によりリモコンローターが装着され、ついでに両手首もロープで縛られてしまった。
その状態で、ひたすらに焦らされて、もう限界を迎えそうになっている私を、美咲さんは楽しそうに見つめているのだ。
最初のうちは立ったままの状態で我慢しろと言われて、身体中を愛撫された。不規則に振動するリモコンローターの刺激と、美咲さんの愛撫やキスで、私は立っていられないほどに感じてしまう。
服を着たまま手首を拘束されているので、美咲さんの手でボタンを外されたシャツワンピースや緩んだブラが床に落ちる事はない。だらしなく肩や腕に衣服が絡んでいる状態で、美咲さんの舌が私の胸の先端をしゃぶってきたので、私はいよいよ大きな喘ぎ声をあげてしまう。
「あ、だ…め……」
そんな、小さな抗議など全く耳に入っていないような様子で、美咲さんはやりたいだけ私の乳首に吸い付き舌先で嬲り尽くす。
「っ…あぁ…ん……」
美咲さんの舌使いがやけにいやらしく感じるのは、手首を拘束されているからか、それとも股間にリモコンローターを仕込んでいるからか。
「だ…もう、いっちゃいそうです…お姉さま」
「…?」
下から美咲さんに一瞥され、それだけでも危うく達しそうになる。
視線は「まだダメよ」と言っているからだ。
その証拠に、リモコンローターの振動がいきなり弱弱しく、しかも間の抜けたリズムに変わってしまった。これでは達するのは無理だ。
「ね、冴子…その顔」
「……」
自分がどんな顔をしているかなんて、今の私にわかるわけがない。
そういう思考が透けて見えたのか、わざとらしく美咲さんはこう付け加えた。
「物欲しそうな顔」
「……っだって…」
「だって、何?」
「…こんなに、焦らされたら…」
口にはなんの拘束もされていない。だから私は何を言っても、どれだけ喘いでも良いはずなのに、思いついた言葉をそのまま口にはできなかった。今の美咲さんからは、そういう威圧感が漂っているから。
それに何か言えば上げ足を取られて更にきつい仕置きが待ち受けている気がしてならない。
「何、物欲しそうな顔してるのが恥ずかしい?」
「……それは」
一応頷くが、美咲さんは乾いた笑い声を立てた。
「バカね」
「…え」
「すっごいイイ顔なのよ」
「…はい」
「だからもっと焦らしてあげる」
「やめて…ください」
「やだ」
その一言で私は地獄に突き落とされたぐらいに絶望する。
達する事を許されない、許可なく達すれば仕置きが待っている。
「ちょっと…冴子、床が汚れるわよ」
「す、すみません」
本当に涙が落ちそうな目になったまま、それを拭う事もできず詫びる。
床の状態はどうなのか、私にはわからない。
目の前に美咲さんが座り込んでいて、私たちはフローリングに敷いたラグの上で行為に及んでいる。
おおよそ私の蜜が垂れているのだろうとは思うけど、そこには指一本触れてもらえないのだ。
「パンツ履いててこれだけ垂らすって、どういう事なのよ」
「知りません」
「…」
知らない事ではない。単純に、ショーツの中に溜めておけない量になったから、それ以外の理由があるものか。
「…他の振動パターンもあるんだけど、試す前にダメになりそうね、冴子は」
「だ、大丈夫です…頑張ります」
「ふーん」
美咲さんは無造作にリモコンスイッチのボタンを繰る。
どんな振動が来るのかわからないので私は身体を硬直させて構えた。
今度は、強めの振動が、ブーッと長い時間オンになり、リズムを刻まない。振動しっぱなしという事か。
「あ、あぁぁ……あ…」
「立ってられないの?困ったわね」
「すみません…」
美咲さんが私の太腿を抱えるようにして支えてくれるけど、やっぱり秘部には触れようとしない。
「だ、もう…っんふ…」
「可愛い声」
「や、もう…許してください」
「ダメよ」
それもそうか、と思う。ほんの数十秒前に「頑張る」と宣言した事は忘れていない。
その舌の根も乾かぬうちに、私は音をあげているのだ。
「じゃ、こっち来て」
相変わらずリモコンローターの振動は延々と止まる気配はないが、ようやく立った姿勢から変わる事ができると思うと多少ほっとする。
ふと見ると、美咲さんが自分の履いているレギンスとショーツを下ろしてソファに腰かけていた。
「そこに座って」
何も言われなくても、やるべき事は理解できる。
私は床に跪いて美咲さんの股間に正対し、目の前に広がる光景に陶然とした。
美咲さんの秘部も濡れているのが見て取れる。
舐めさせてもらえる、と思うとそれだけで嬉しくなった。
手が使えないのは残念だけど、それでも構わない。
私は両手を前について顔を前に出し、スカートの中にある美咲さんの秘部に舌を這わせた。
「あ、あ…んっ…」
私を虐めながら、美咲さんも興奮してくれている、それがこの秘部の状態と美咲さんの喘ぎ声でよくわかる。
「お姉さま、凄い…濡れてる」
「あっ…あ」
舌先を尖らせて美咲さんの萌芽の、やはり先端をくすぐると、美咲さんは甲高い声をあげた。
「冴子、それ…あ…はぁんっ」
美咲さんが欲しがっている刺激を、忠実に繰り出す。何度でも、美咲さんが飽きるまで止めない。
「あなた…自分がどういう状態か、わかってるの?」
「……」
美咲さんが私を「あなた」という二人称で呼ぶのはこれが初めてだと思うけれど、そういう呼ばれ方をされるのも新鮮でやたらと興奮してしまう。
自分が、二宮冴子ではなく、ただのいやらしい女の一人として扱われているようで。私の自我が消えてなくなる感じ。だからこそ、私が二宮冴子として美咲さんの記憶に残るように、更に口淫を重ねて尽くすのだ。
愛おしい、そういう気持ちを込めて美咲さんの萌芽にチュッ、チュッとなるべく可愛らしい音を立ててキスすると、美咲さんの手が動いてリモコンスイッチを繰った。
「……っ」
今度はリズムを伴う強めの振動。今までで一番感じるパターンかもしれない。私は一瞬呼吸が止まるのを自覚したが、それを美咲さんに見咎められたくないと思うのも虚しく、美咲さんがいたずら好きの子供のように笑った顔と目が合う。
…まずい。
「感じてきちゃった?冴子」
「それは…さっきからそうですけど…っ」
「ほら、もっと舐めてよ」
「…はいっ」
舐めている最中に振動パターンを変えられるのは非常に辛い。自分なりにやりたい愛撫、美咲さんの好きな舐め方を維持するのが難しくなるからだ。そういう困惑をわかった上で、美咲さんはリモコンスイッチを、絶妙なタイミングで繰っている。
「…ん…っ」
身体が震えてくる。両手を不安定な状態で床についている事も、リモコンローターの振動も、理由は色々あってよくわからない。
それでも私は美咲さんの秘部を舐め続けた。身体の震えを止められず、口淫に励みながらも時折「んあ」とか「うっ」という声が漏れて、それが美咲さんの身体にも響いているはずだ。
「…そうよ、感じながら舐めてる冴子、すっごくいやらしい…あんっ」
唯一の救いは、こんな惨めな姿の私を見ている美咲さんが、興奮しているというのがわかるから、だから私の心はくじけなかった。
「…お姉さま、おいしい」
言おうとしてではなく勝手にそんな言葉が出る。言ってから自分も妙に興奮して、ますます美咲さんの秘部を激しく舐め攻め立てた。
実際、そこはおいしいのだ。花弁の外側と内側を順番に舌先でなぞると、中から蜜が溢れてくる。そこに軽く舌先を沈めて、今度は上にある萌芽に蜜を擦りつけるように舐め回す。すると美咲さんの体温がぐっと上がって、内腿がピンク色に染まるのだ。その変化さえ愛おしく、私は内腿にも舌を這わせるけど、それは長くはしない。また美咲さんの秘部からどっと蜜が漏れてくるから、次はそこに口を付けて、ずるずると蜜を吸い取るのだ。
この時は、なるべく低い音を立てて、卑猥な感じに。そうすると美咲さんの甲高い嬌声が際立って、ますます甘美な響きを伴う。
私が立てている下品な水音と、美咲さんのか細く甲高い嬌声のコントラストがたまらない。そしてそういう、いやらしい器官と嬌声を出せる声を持つ美咲さんはものすごく美しい。
ずるずると秘部をしゃぶる合間に、私はそれを伝えずにはいられなくなり、「お姉さま、ほんとに綺麗です」と声に出して伝えた。
そう言う私を見下ろす美咲さんの表情は、我慢できないくらい感じている身体と、それに相反するように心や感情というものが混じり合っている、ちょっと冷静な表情に変わる。その顔が、私はものすごく好きだ。いちいち言葉にはしないけれど。
その分私は行為で返したいと思うから、美咲さんの秘部にがっちり吸い付いて離れようともせず、そして繰り出されるリモコンローターの振動に下半身をがたがたと震わせながらも、美咲さんの脚の間に顔を埋め続けていた。
「…これじゃ私がいっちゃうじゃない」
「…?」
美咲さんは何回達しても良いではないか。私は不思議に思って顔を上げる。
「舐めさせてると、かえって気が紛れてるみたいだけど」
「…そんな、事は…」
「ほんとに?」
「…はい」
黙っているが私だってめちゃくちゃ感じている。限界ギリギリの所で耐えているのだ。唯一、美咲さんに奉仕できるという喜びにより緩和されているだけの事で。
美咲さんの視線が下に落ちて、私の膝あたりに注がれる。
どうにか、床は汚していないはずだけど、それ以外は何の自信もない。
「…見えますか」
「いまいち」
そう言われて私は床に尻もちをつくような姿勢を取り、美咲さんによく見えるように両脚を開いた。
「…酷いわね」
「はい」
「でも、すっごくいやらしい」
「…はい」
それはそうだ。ぐしょぐしょに濡れたショーツの内側に仕込んであるリモコンローターが、リズムを刻んでいる音が漏れてきている。私の内腿はべっとりと蜜で汚れており、何度も塗り重ねた透明な塗料のように内腿が光っているに違いないのだ。
「…やっぱり、見てると指か何か突っ込みたくなるのよね」
美咲さんは少しぐったりした様子でそんな事を呟く。
なんとなく、美咲さんはプレイと言えども加虐心を長時間維持するのは疲れるタイプなのかな、と思った。根が優しい人だから。
「……」
「でも、私がイくまで、舐め続けなさい」
「はい」
「それまで我慢できたら、たっぷり可愛がってあげるから」
「はいっ」
私は俄然元気になり身体を起こして再び美咲さんの股間に顔を埋めた。
今度は美咲さんも、自分の快感のみに集中するようでもあり、私の奉仕に素直に感じている。
さっきまでは、感じていながらも私の様子を観察しているようだったけど、もうそれは止めた感じだ。
「冴子、もっと…激しくして」
「…はい…っ、んん……」
「そう、それ、いい…っ…あんっ…いいよ」
褒められると嬉しくなるのは人の常だ。
私はできる限り舌を伸ばして、美咲さんの内壁の、奥の方、お腹側の天井に届かせようと更に顔を強く押しあてた。
息ができないぐらい苦しいけど、それでも構わず美咲さんの中に侵入して舌で掻き回すように動かす。
「あ、あ…いっちゃう…冴子…」
美咲さんの手が私の頭にかかり、弱弱しい力でだが押さえつけられる。
その力の入らない感じさえも、美咲さんの優しさが現れているようで、私は涙が出そうになった。
だから行為で返すのだ。私の知り得る美咲さんの喜ぶ方法を、やり尽くす。
改めて唇で花弁を食んでずるずると蜜をすすってから、舌先を動かして穴の中をこじり蜜を呼び込む。
そうしてから萌芽にたっぷりと、蜜と唾液を絡ませて舌先でくるくると嘗め回す。
「きゃ、あ…いく…」
舌先から力を抜いて、唇も使いふわふわと柔らかく萌芽を包み優しく刺激する。
美咲さんも、次に何をされるのかわかっているはずだ。
「冴子、早く……」
いけない。自分が焦らされたせいか、今日は美咲さんを焦らしてしまっているようだ。いつの間にか美咲さんがおねだりする形になっている。
今日はリモコンローターを使っているから、もしかしたら美咲さんが達する所を見た瞬間自分も達してしまうかも、という予感にとらわれながらも、自分の口と舌はぶれる事なく美咲さんの萌芽を捉えていた。徐々に強く吸って、そこがぱんぱんに膨らんだ所で私はその場所に歯を立てた。本当に、ごくわずかに触れる程度に。
「はぁ、あ…あぁ……っ!」
美咲さんの矯正が更に甲高く跳ねて聞こえる。
何回見ても、本当にその姿は魅力的であり官能的だ。その場面に自分が居合わせている事が不思議なぐらいに。
達してぐったりとしている美咲さんの傍に這い上がる。
私はと言えば、服は前側をはだけてだらしなく崩れており、手首にはロープをかけられ、股間には未だ振動を続けるリモコンローターが付けられている。
そんな状態で私が美咲さんの顔に自分の顔を近づけると、本当に自分が犬にでもなったかのようで、言葉を発する事もできず、ただ美咲さんの表情をじっと見つめている事しかできなかった。
美咲さんは、そんな私の姿をうっとりと眺めつつ「冴子、可愛い」と呟いて私の身体を抱き寄せた。
手首が拘束されているから、私の方は美咲さんの身体に腕を回す事はできない。
「…このまま、してもいい?」
私は黙って頷く。
それから私は美咲さんの膝の上に座らされて、後ろから羽交い絞めにされさんざん胸を揉まれ乳首を弄られた。
「ここはどうなってるのかな」
ようやくショーツを下ろして、リモコンローターを外してもらえたけど、美咲さんはそのローターを手に握って改めて裸になった私の秘部に当ててきたりした。
「や、あ…っ」
「案外気に入っちゃったんじゃないの?これ」
「…う……」
「今度はこれを付けてドライブしようね」
思わず振り返って美咲さんの顔を見ると、美咲さんは楽しそうに笑っていた。
「…嫌なの?」
「そんなこと、ないです」
「じゃあ決まり」
秘部にローターを当てられたままで、私の唇と美咲さんの唇が重なった。思わずくぐもった喘ぎ声が出てしまう。
「ん…っ…はぁ」
「…また、その物欲しそうな顔」
「だって、欲しいから…あん」
美咲さんは、私の萌芽にローターを当てながら、もう片方の手で秘部を探り指を挿入してくる。
「っ…く…う……」
自分の鳴き声が、それこそ犬のようだと思った。
中に挿入された指がゆっくり動いて、内壁を擦る。ゆるゆると動いているだけなのに、私は一気に高みへと昇る思いがした。
「あ、いっちゃう…もう…だめです」
「ダメ?もういっていいのよ」
「は、はい…あぁんっ…あう……ん」
「可愛い声」
美咲さんも、私の身体のどこにどんな刺激を与えればいいかは熟知しているはずだ。
その部分を思い切り擦り上げられて、私の意識は飛びそうになる。
「ここでしょ」
「そこ、そこですっ…あぁ…お姉さまぁ…」
すがるような声をあげて、動かない手でそれでも美咲さんの腕を必死に掴んでしまう。
美咲さんは「感じてる冴子ってほんとに可愛い」と何度も囁きながら、そんな甘い囁きとは裏腹に激しく指で私の身体の内側を擦り続けた。
「お姉さま、多分もう…いってます…」
目を開ける事もできずそう呟く事しかできない。あとはただ喘いでいるだけだ。
「イってるの?でももっと欲しいんでしょ」
「…はいっ、あぁ…ん」
さんざん焦らされた挙句執拗に中を擦られ、前にはローターを当てられていて、もう自分の感度がまともかどうかも疑わしいくらいだった。
「…冴子のいく所がもっと見たい」
「見てください…っ…」
大人の女性は皆、こんなにしつこく長時間にわたって感じ続けるような行為が可能なのだろうか。
私の身体は、間違いなく美咲さんによって作り替えられていく、そんな気がする。
この、ねちねちとした攻めも、長時間にわたり延々と終わらないのではないかと思える時間の使い方も、私は好きだしもうそうでないと満足できなくなっている。
何秒間かは失神していたかもしれない。その不安と戦いながら、私は美咲さんを呼んで確かめる。
「お姉さま、また…いっちゃう」
「うん」
臨めばいくらでも、そういう言葉が聞こえてくるかのようだ。
私が尽くすはずだったのに、今は私が求めていて美咲さんが応えてくれている。いつからそういう反転が起こったのかもわからない。
「また、イってます…うぅ…ん……」
身体が痙攣する事もあれば、しない事もある。だから私はできる限り申告するのだ。達したという事を美咲さんにわかって欲しくて。
もうリモコンローターも外れて美咲さんの指がただ挿入されているだけなのに、たったその指の力だけで私は何度でも達する事ができる。
だけど、達していながらも私は美咲さんの事を思うのだ。これだけ与えられた分をどうやって返そうかと。
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