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裏切りの記憶(美咲SIDE)
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24歳、こんなにも若い娘が例のアプリに招待されている?…
彼女本人とメッセージを交換した時にその謎は解けた。24歳にして疎らではあるがエステ通いを習慣としていると聞いて、腑に落ちた。サロン名にも聞き覚えがある。まだこの年齢で会社勤めであるなら、それなりに稼いでいるにしても、かなり他を節約しながらでないとそこのサロン通いは難しいだろう。それほど自分自身のケアに力を入れている娘だと知って、部署は何だろうかと思案していた。
冴子はとても謙虚で、真面目そうな性格がにじみ出るようなメッセージに好感を持つ事ができた。このアプリのメインターゲット層から明らかに外れて若いからというのもあるだろうが、彼女が私にメッセージを送ってきた時には、動機がよくわからなかった。他に似たような経歴やプロフィールを載せている人物はたくさんいる。
しかも私は遊びオンリーを目的としてここでの出会いを楽しむつもりで、それも明示しているのだ。冴子は、真面目そうな言い回しをしながら自分の欲望を隠さない。はっきりと一晩の遊びという目的を持って相手を探しているようだった。
実は私にとって冴子は実際に会う事にした最初の相手で、これまでメッセージのやり取りをしてきた人はいたけれど、結局実際に会うという気にはなれなかった。勿論それは私の立場ゆえのリスクが伴う事だからに他ならない。
そして冴子には知らせていないけれど、彼女が自身の写真を送ってくれた時には私は仰天したのだ。おそらく人生の中で数えられる程度の「びっくり」度合だった。
まさかあの子だったとは。どう見ても男に不自由するタイプには見えないし、それなのにどこか闇を抱えているようでもある。男に傷つけられた経験があるのだろう。
「名前、冴子っていうんだ」
社の受付には何人か在籍しているので、冴子がそのうちの一人である事はすぐにわかったけれど、正直いつ誰がいて、という事までは詳しくわからない。受付担当が全部で何名なのかもはっきりと記憶はしていなかった。
実物の冴子の内面には、コンプレックスが渦巻いていて、そのギャップにもまた驚いた。同じ受付仲間と自分は違うととらえているようだが、外から見れば冴子は十分そちら側の人間である。しかし見た目の華やかさに反して内面は真面目だったり、性に旺盛な自分自身を嫌っていたりする所があって、どうもそのノリになじめない事を悩んでいるようだった。だから反動でこんな、半ば場違いレベルのマッチングアプリに登録するばかりでなくメッセージを送って相手を物色する事までやってのけている。
自分から私を探し当てておきながら、実際に直接会ってみるととにかく萎縮なのか恐縮なのか、そんな様子ばかりで、メッセージの時のあの決然とした勢いはすっかり消え去ってしまっていた。
本来冴子は、人を見た目だけで判断するような人間を嫌うはずなのに、私を目の前にした瞬間からすっかりそれまでの自分を見失ってしまっていた。あまりによそよそしくされるとかえってこちらも落ち込みそうになる。
でもその動揺の理由はシンプルだ。彼女の欲望はきちんと存在していて、それ故に戸惑っているはずなのだから。私は彼女の欲望に応えるつもりでその時を迎えていた。
冴子は、人からちやほやされる事が苦手な方なのだろうから、あまり直接的に言われる事はないのだろうが、実際問題彼女のビジュアルには目を見張るものがある。本人が自覚している通り派手な美しさはないが、年齢に似合わないほどの落ち着きと、しっとりとした色香のようなものが漂っていて、それが写真映えしないのは惜しい。それから顔のパーツはどこも整っていてバランスも良い。本人は、自身の評価の源は大きな胸ばかりであろうと勘違いしているふしもあるが、顔のつくりで言えば今いる受付担当の中でも1、2を争うほどに整っていると言えるだろう。それは私の個人的見解ではなく、見る者大半の総意だ。
「いやー、今日も美しいですねぇ二宮冴子嬢は」
本人に気付かれない場所から受付に立つ冴子を観察してはそのように無駄口を叩く男性社員も数多く存在しているのだ。
「俺は佐藤さんの方が~、好みだなぁ」
つられて他の男性社員もコメントしている。
「ちょっと、乗るのか乗らないのか、見ていたいのなら置いていくわよ」
「すみません、乗ります」
とエレベーターから怒鳴った事も数知れず。だがその事実をおそらく冴子は全く知らないのだろう。あの日私の前で顔を真っ赤にして恐縮する冴子の姿は、そんな男性社員の羨望の眼差しを受けても微動だにしない人物とはあまりにも違っていた。
私が冴子を相手に選んだのには、お互いの抱えるリスクが同等であると判断したから、というだけの事で実際それ以上の事は特に考えていなかった。こういう形で交わった事が外に知られると、私以上に冴子は立場を失うだろうと思った。だから秘密を共有するには丁度良い、ぐらいにしか考えていなかったのだ。無論偶然とは言えあれだけの美貌を持ち合わせている女性の肌に触れられるのはラッキーだとも思っていた。
ところが実際に会ってみると冴子の方が恐縮している。こちらは職位こそ高いが芸能人でもあるまいし、ただのビジネスマンにすぎないと言うのに、どうも受付含め女性社員の一部から私が話題にされているという事が特に冴子の周囲では顕著なようだった。女ばかりのチームだし、それもやむなしかと思うが。
単純に冴子は私の立場や、想像上の収入や、社での功績などに萎縮しているに過ぎない。素の人間として関わってきた中では、冴子は自分の性欲に応えてくれるかどうか、そこだけで相手を選んでいたはずなのだ。そこだけをシンプルに考えればいいのに。
そして冴子には、ビジュアルを称賛する言葉もおそらく直接的には届かない。彼女からはその旺盛な性欲の存在を受け止めて、逃げないという事こそが求められている気がした。ある意味残酷な要求である。これに太刀打ちできる男はそう多くはないだろうと感じた。
冴子の緊張がほぐれるのに多少の時間は必要だったが、冴子も子供ではないし、それなりの経験値は積んでいるだけあって、大人の対応を理解している風情だった。本人はやはり自覚していないと思うが、動揺したり困ったりした時の表情から醸す色香は独特のものがありおそらく多くの男を惑わせてきただろう。ついでに加虐心も煽ってくれる。つまり、冴子を見ていると、更に辱めて困らせたくなるのだ。
冴子との時間はとにかく濃密だった。私はいちいち本人には言わなかったけれど、最後に女性と交わったのは冴子の年齢の時よりも若かった頃の事で、経験なんて皆無に等しい。
どの時からか冴子が私に甘えてきて「お姉さま」と呼んでいいかと尋ねてきた時に、正直心臓を貫かれたような衝撃が走った。なぜそこまで、こういう形では初対面の私を信じて自分を明け渡す事ができるのか、不思議だった。それと同時に、冴子に「お姉さま」と呼ばれる事が強烈な快感を伴い支配欲を満たすような感覚があって、恍惚としたのだ。動機は本能や欲望だけかもしれない。思考や感情は一切なかったかもしれない。それが冴子にとって良いのか悪いのかはわからないが、とにかくその言葉に対しては、冴子を本当に自分だけのものにして、徹底的に快楽の底まで落としてやりたい衝動に、私自身が支配されて逃げられなくなったのだ。
そんな事を実際冴子が喜ぶのか、許すのかはわからない。でも私の本能を刺激したのは冴子の方だ。今更取り消されてももう手遅れだと思ったし、この一晩のうちにどれだけ冴子に快楽を与えてやれるのか、わからなくなりながらも、そこで欲しがる冴子が目の前にいる限りは与え続けるだけだと思った。
冴子は本当に旺盛だった。思い悩むのもわからないではない。達しながら「もっと」と欲しがる。それも一度や二度ではない。一度達するごとに、冴子の表面を覆っている何かバリアのようなものが剥がれていくような気がした。もっと本音の部分を晒して欲しいと思い、私は冴子の限界を知らないながらも一度や二度達した程度で行為を止めなかった。そうしていくと更に冴子の隠し持った色香が強く放たれるようで、それをもっと見たくなった。普段冴子自身が嫌悪しているに違いない、旺盛さからくる強烈なフェロモンのようなものが、刺激によってどんどん強く放出されていくのだ。どこまであるのか、探求したくなるのが人情だろう。
だからあの日、冴子が同僚から「漏れてる」と言われたという話をしてきた時にはしまったと思った。私は、日ごろ冴子があの色香をどの程度意識的に覆い隠して暮らしているのかよく知らない。私の前ではただでさえ緊張も相まって漏れているものは多かったと思われるし、あれが標準ならそれはそれで構わないのだが、それ以前の状態を私は知らなかったから、冴子のまとうバリアが普段どの程度まであるべきものかを知らずにあんな事までしてしまったのは失敗だった。
調子に乗って剥がせるだけ剥がしてしまったけれど、日曜日の半日だけで取り戻す事はできたのか。バリアを剥がした結果の冴子は、自分でもわかっていないうちに相当消耗していたから、私は心配になり体力的な余裕以前にそこが気になり冴子を帰したのだ。
そして月曜日の冴子から、人にわかる程度に「漏れている」と指摘されたと知り、バリアは完全には戻せないまま行ったのだな、と思った。多少申し訳なくなった。受付嬢の冴子にとって肉体的なコンディションは業務に直結する重要な問題なのに、私は自分の欲望に任せて冴子をいいように弄んだも同然なのだ。働く女性の先輩として、冴子が仕事を大切にしているのはすごく伝わってきたし、仮に自分の部下なら総合的にケアすべき人物だ。それが受付業務でフェロモンばら撒きとあってはさぞかしいたたまれない思いをした事だろう。考えただけでこちらも胃が痛くなる思いだった。
私は、その罪滅ぼしにではないけれど、あえてリスクを取り職場から冴子に電話をかけ、彼女のオナニーに付き合った。これまたやり過ぎると明日の業務に支障をきたすに違いないのでそこそこの所で切り上げ、冴子のコンディションを優先するように努めた。
通話を終えて、はたと「どうしようか」という感慨にとらわれる。冴子のバリアを剥がしてスイッチを押したのは私だ。後先考えずにそれをしてしまった。冴子にそうさせられたと言えば、それは彼女がこれまでに男たちから聞かされた言葉と同じになる。剥がしたのは、押したのは間違いなく私である。
私はふと、22歳のある日の事を思い出した。最後に女性と交わった時の事とその後の事だ。あの日の冴子のように、私も緊張しながらその人と会い、街を歩いたり食事をしたり、写真を撮ったりした。夕方にはその街の温泉旅館に二人で泊まる事になっていて、私は彼女と交わる、というよりかは彼女によって快感を与えられて私は女性の手によって達する経験をした。
その人と一緒に、生まれて初めてあわびのステーキを食べた。雪を見ながら当時は珍しい、立ったまま入れるお風呂に入った。生まれて初めてペディキュアを塗ってくれたのもその人だった。たった一度きりの逢瀬だったが、私の忘れられない思い出となっている。あの時あの人はおそらく35歳くらいではなかったか。しかも既婚女性だった。
でもその後私はあっさりと彼女に捨てられた。その人は、言わば奔放な女性なのだと思う。夫がいても私の身体を使って遊んでみたり、他にも男がいたようだった。
私は、その人の夫ではない「彼氏」のためになぜか捨てられたのだ。
「彼が嫉妬するから」ただそれだけの理由で、一時的にせよ繋がりのある人間をばっさり切り捨てる事のできる人だったのだ。私は裏切られた思いがした。
私は既にセカンドだったではないか。あの人にとってのファーストが入れ替わったから、それの意向に合わせるのだと言うのは理解できなかった。納得がいかず食い下がったが、結果はやはり「ごめんね」と言われ、それで私はあの人を嫌うようになった。今思えば、そのまま待っていればどうせいずれファーストは別人になったろうしそうなれば再びチャンスは巡ってきたかもしれないけれど、彼女にとってやはり女より男なのだ、という事は動かしがたい価値観のようだったし、私自身もその当時彼氏がいたから、あまり強くも言えなかった。その後私は彼氏とも別れる事になる。こちらも他の女の子との関係が発覚して逃げるように捨てられた。
誰かに相談しようにもできなかった。「彼女がそういう事なら仕方ない」という答えしかないだろうと思っていた。でもそれで終わらせるのはどうしても寂しかったのだ。
その時に思ったのは、私がもし将来彼女と同じような事をしたとして、それぞれの相手とどういう関係でいる事が最善だったのか、という事だ。答えは出ない。でも私はあの時悲しかったし、裏切られた思いは感じたのだ。
例のアプリを使っていても、安易に直接相手と会う事をしなかったのはそれが理由でもある。関係が始まってしまったら、その先があるからだ。案外、メッセージのやり取りだけでもそれなりに満足できていたし、何より互いにリスクを取らずに済むのは気楽で良かった。
ただ、私が冴子に会おうと思ったのは、リスクの問題もあったけれど、根底の部分では、自分が冴子に惹かれたから、それでいいと思ったのかもしれない。自分が裏切られる分には、特に何も思わなかった。相手を裏切る事は避けたいけれど。
冴子が自分を覆うバリアを脱ぎ捨てていく過程の中で、はっきりと迷いの感情を表す瞬間があった。深入りすれば離れ難くなる。そうなるのはまずいという感情が見て取れた。私は冴子に惹かれていたし、戻るつもりはないと思っていたから、それが一夜限りだろうと何だろうと構わないと思っていたが、冴子はまだ気持ちの整理がついていなかったのだろう。冴子は、やはり私に捨てられ裏切られる事を恐れて、踏み出せない状態にあるのだと感じられた。しかし私はそんな冴子を強引に快楽の底まで突き落とすような真似をしたのだ。
実際に底まで行ったのかどうかはわからない。まだあるような気もする。むしろ底は堕ちれば落ちるほどに深さを増すのかもしれない。
快感と刺激で冴子を縛り支配しているのは私だ。怯えながらも冴子はある程度明け渡してくれた。そして冴子は歪んだ妄想の話を私に披露しながら自分を慰める様を聞いて欲しがるのだ。私は胸の痛みを覚えたが、それは冴子なりに私に伝えようとしている何かなのだと思う。22歳の頃の自分にはこのような勇気はなかった。
「お姉さまぁ」
週末私は再び冴子を部屋に呼び出した。今日は玄関扉を閉めるなり冴子が抱き付いてきて、すぐに唇を重ねる。お互いの舌が激しく絡んでどちらのものかわからないくらいだった。
「ベッドに行こう」
「はい」
私たちはお互いの服を乱雑に脱がせ合って裸になり抱き合った。再び唇を重ねながら、指先で冴子の髪やうなじに触れると、冴子は過敏に反応した。
「あれ、もう濡らしてるんだ」
そっと冴子の内腿から秘部に指を這わせると、もうかなり濡れていた。焦っていてきちんと確認しなかったが、下着は履かずにここへ来るようにと伝えていたのを実行したのだろう。
「…あ…ん」
あの日私が感じていた、冴子を覆うバリアは既に何階層も剥がれた状態になっている。ここへ来るまでの間にそうなったのか、それともこの一週間これに近い状況だったのか、内心心配になった。
指を話してすぐに冴子の股間に顔を埋めると、冴子が苦し気に「お姉さまぁ」と甘えた声を出してくる。それを合図に私は両手で冴子の太腿を思い切り開いた状態で押さえつけて固定した。
「…っ」
ふいに冴子の視線を感じて見上げると、私の顔に向けて冴子が指を伸ばしてきた。その時にうっかり眼鏡を外していなかった事を思い出す。これまでの行為の中で冴子に眼鏡をぶつけたかもしれない。私は、自分の爪や口で冴子の肌に傷を付ける事にはさほど抵抗を感じないのに、眼鏡をぶつけて肌を傷つけてしまうのはとてもいけない事のように感じられた。
「ごめんね」
言いながら眼鏡を外してサイドテーブルに置いた。冴子はどちらでも構わないといった様子で私を見ていた。急にその余裕ありげな表情に腹が立って、つい冴子の中に指を激しく挿入してかき回してしまう。
「あぁ…ん…お姉さま」
「何?」
「もっと…っ」
冴子の内側の、一番感じる部分を指で圧迫しながら萌芽を口に含んで盛大に吸った。
「あ!っ…んぅ…あふ…」
指の動きを激しくすると、蜜とは別種の液体が吹き出してきた。冴子はこれに気付いているのだろうか。先週、道具を挿入している最中にもそれがあったので、冴子は潮を吹く娘なのだと私は知っている。
「あぁ…いっちゃう」
私はただ頷いて指での圧迫と舌での萌芽への愛撫を続けた。ほどなくして冴子の身体が弛緩していく。達する時のサインだ。
「ああぁ……ん…いい…」
「いったの?でももっと欲しいよね」
冴子が焦点の定まらない瞳で私を見上げている。私は冴子が本当に星がっているものを与える準備をした。自分自身にそれを装着して、ぐしょぐしょになった冴子の穴に一気に差し込んでいく。
「あうっ…!あ…」
「これ欲しかったでしょ」
「はい、欲しいです…っ…んあ…!」
冴子が一生懸命言葉を発しようとするが私は煩わしくなり冴子が黙ってただ喘ぐだけになるよう激しく出し入れを繰り返した。これ以上ないほど奥まで突き入れて、わざと腰を密着させながら身体をねじると、冴子はそれまでとは違うわっという声をあげる。
「奥はだめ…あっ…そこだめ…」
「だめそうには見えないけど」
「…んん…っ!」
冴子の身体がぴくりと跳ねる。そこで竿をギリギリの所まで引き抜くと、「あぁっ」と切なそうな声で冴子が悶えた。
もう一度、一番奥まで。密着させて先端でぐりぐりと冴子の子宮口を擦るように動かす。冴子はまた「だめ」と言いながら涙を流した。
「これ好きなの?」
「うん、好き…もっと」
瞳に涙を溜めながら冴子は求めてくる。私は同じ刺激を何回も与えて冴子が落ちていくのを観察した。そうせずにはいられないものが冴子には宿っていると思う。
「そうだ、奥が好きだったら…」
私は冴子と入れ替わるようにベッドに仰向けになり、冴子に上にくるよう促した。
「自分で入れてみて」
「はい…っ…」
冴子が私をまたぐように座り徐々に腰を沈めていく。8割方入った所で私は腰を浮かせて冴子の中に全部を収めた。
「あっ…ん…」
「動いてみて」
冴子はどうにか自分の身体を支えつつ腰を動かし始める。そのうち腰を振るのに夢中になり喘ぎ声も大きなものとなった。
「あ、ん…はんっ…」
冴子の大きな胸が揺れて卑猥な眺めだった。冴子がどんどん上下運動を激しくしていくので、私は少し身体を支えてやりながら冴子の様子を見守った。壊れた人形のようでもあるが、能動的に腰を動かして快楽を貪っている。
私は冴子の身体を固定しながら腰を激しく振りたててやる。
「あぁぁぁっ…う…」
冴子はうめくような声をあげた。更に蜜がどっと溢れてくるのがわかる。
「…っだめ、いっちゃう」
冴子の両脚がだんだんと外に開いていくように崩れていった。私は更に大きなストロークで冴子の中に竿を出し入れする。
「い…っちゃう…あぁ…!」
冴子が私の上に倒れ込んでくる。そっと抱き止めてやり冴子の身体を撫でた。落ちてきた冴子の髪を掻き上げながら、はぁはぁと息をする彼女の唇にキスをする。
「っ…」
そうしなければならないとどこかで教わったのか、本能的にそうしているのかは知らないが、冴子は一生懸命に舌を絡めてくる。唾液が私の口内に流れ込んできているのだが、おそらく自覚はないだろう。全身が弛緩すると冴子はそれこそ物理的にも「漏らす」傾向がある。
今日もそうだが、私がしている事は疑似的な男とのセックスの再現に近い。その方が快楽の作り方を知っているからだ。でもそれだけではつまらない。冴子にはそうでない部分も楽しんでもらいたかった。
まだここへ来てからさほど時間は経過していないのに、冴子は軽くぐったりとしている。私は冴子の身体が起こせる程度に回復したのを見計らって、冴子の片足を持ちあげ自分のそれと交差させた。
「…これって」
「そう、擦るのよ」
二人の、大切な部分がぴったりと密着する。冴子自身から相当量の蜜が溢れているから、それほど抵抗もなく始める事はできるだろう。
「気持ちよくなるように動いてみて」
「はい…あ…ん」
竿のようなものを挿入した時に比べて、この状態で響く粘着質な接触音の方がいやらしく感じるものだと思った。冴子が身体を思い切り押し付けてきて、花弁の内側を直接触れさせてくる。自然と両手を後方につくような恰好で、交差させた足がより深くかみ合うように、冴子は身体を前後に動かした。
「んんっ…気持ちいい」
「私も気持ちいい」
「ほんとですか、あ…っ」
冴子は動きになんとなく慣れてきて無心になっていくようだった。私も腰を使ってより深い接触を求めるように冴子の動きに合わせた。冴子はもう勝手に動くといった様子で夢中になっている。
「あ…っん…あ!」
冴子の声が一際高くなる。また軽く達するのかもしれない。私は同じ動きを繰り返しながら自分自身を襲う快楽に耐えた。
互いの萌芽が擦れる感触があって、その刺激を執拗に求め合う。今度は冴子は何も言わずに達したようだった。
「…っ」
「こっち」
再び冴子が私の上に倒れ込んでくる。今度は自分から唇を寄せてきて、「キスしてもいいですか」と聞いてくる。さっきからしている事なのに何故今だけ許可を求めているのかはわからない。冴子自身もなんとなく、そうしただけの事だろう。
私が軽く頷くと、冴子は勢いよく私の口にしゃぶりついてきた。甘える子猫のような息を漏らしながら夢中で私の唇を味わっている。
「ねえ、冴子」
「はい…」
「いっぱい舐めてくれる?」
「はい」
冴子が自ら私の身体に触れる時には、まるで壊れ物でも扱うように慎重に、かつ私の反応を逐一観察するような優しさで触れてくる。冴子は手で刺激を与える事よりも口淫が上手い。だから舐めてと命じる方が彼女も気が楽だろうと思った。
こんな事してもいいんですかと問いたげな目をしながらおそるおそる冴子は私の首筋や鎖骨あたりを舐め始める。その表情は歓喜と恍惚に満ちているようで、舐めている冴子の方がむしろ興奮しているのではないかと思われるほどだ。
「…あの」
ふいに冴子がわずかに唇を浮かせて何か言おうとするので私は続きを促した。
「お姉さまの肌は本当にきれいです」
「…そう?」
「はい」
特に、と言いながら冴子が指先で私の身体をなぞるように触ってくる。冴子の指は感触を確かめるように、胸の谷間や脇の下といった皮膚の薄い部分を撫でてきた。くすぐったさと、それとは違う興奮も同時に覚えてしまう。
「ここも舐めますね」
言いながら冴子は私の乳房をぎゅっと掴んで、舌先を使って乳首を舐め始める。意外と強い力で乳房を掴まれているのだが、先端に与えられる刺激はソフトなもので、私はこういう刺激に弱いのだなと知った。
「あっ…」
私の反応を確認して冴子は更に行為を続けた。なんとなく、自分の内側から蜜が溢れてくるのがわかる。冴子は、今度は子供がするように乳首をきゅっと吸ってきた。舌先でチロチロと舐めるのと交互にそれを行っている。私は思わず、行為に集中している冴子の胸元に手を伸ばし指先で冴子の乳首を軽く弾いてみた。
「ちょ、…っん」
冴子は一瞬過敏に反応したが、すぐに気を取り直してさきほどの行為を再開する。丁寧に左右両方の胸に同様の愛撫を行ってくれた。
少しずつ、冴子の様子が何か我慢している気配を伴ってきたが、とりあえず今はまだ様子を見ておこうと思う。
それから冴子は私の腰の辺りも舐めてきて、更には「お尻も舐めたいです」と言うのでうつ伏せの態勢になって冴子のしたいようにさせた。
「お尻も本当にきれいですね」
言いながらマッサージするようにお尻を揉んで、次に舌を這わせてくる。そうしているうちに冴子が何かに気付いたように動きを止めた。何か迷っているようだ。
「…どうしたの?」
「あ、その…」
冴子は迷いながらも指先を割れ目の付近までもってきて、
「その、ここの割れ目とか、お尻の穴も舐めてみたいなと思ったので…」
と恥ずかしそうに、でも欲望を抑えられないといった様子で告げてくるのだ。
「そんな所も舐めたいんだ?」
「その、すごく綺麗なので、ここの奥もきっとそうなんだろうなと思って、知りたくなってしまって」
私は、わかった、と答えながら膝を曲げてお尻を浮かせるような態勢を取った。冴子は珍しいものでも見るように息を止めていた。冴子自身が客観的な視点でこういう状態の私を見るのは今が初めてかもしれない。
「いいんですか」
「いいよ」
「…」
冴子は途中からは言葉が聞こえていないような集中力で私の下半身を凝視していたが、ふいに両手を使ってぐいっとお尻を掴んできて軽く左右に開いた。秘部が空気に晒される感触に、それらが冴子にも見えているだろうと思うと興奮もした。
「見えてるでしょ」
「はい、見えます」
冴子はしばらくの間それを見つめていたが、その後舌だけを伸ばして割れ目に這わせてきた。
「あっ…ふぅっ…」
慣れない感覚に身体が震えてしまう。でも気持ちがいい。冴子の舌が穴の辺りを触れるか触れないかぐらいの距離で移動していくのがわかった。
「やっぱり、ここもすごく綺麗です」
冴子が至近距離で声を出したので、その振動が股間全体に響いた。つい反応してしまう。
「ここも…」
冴子が、言いながら私の蜜を指ですくいお尻の割れ目に伸ばしてくる。その動きだけでも十分気持ちよかったが、冴子が再びそこに舌を這わせてきたので、私は必死で快感に耐えた。
「…すごい、下から溢れてくる」
冴子は舌を這わせながら指で秘部を刺激してくる。
「冴子…っ…」
冴子はまた黙って舌と指での刺激を続けた。
「んっ…ああ」
快感の波が高くなり私も声をあげた。私が軽く達したのを確かめると冴子は顔を離した。
「冴子、今度はこっち」
「…はい」
再び仰向けになり私は秘部を指さした。冴子の視線ははじめからそこに固定されている。さきほど後ろからの愛撫を行った時からそこが気になっていたのだろう。
「…」
冴子はやはり何も言わず秘部にたまっていた蜜を吸い取っている。それが終わると次は蜜を溢れさせるように花弁を舐めたり、萌芽を指でつついてきた。子供がいたずらをするような動きにかえって私は翻弄される。
「冴子」
「はい」
言わなくてもおそらくわかるはずだ。この間も冴子はここを何度も舐めている。私は無言で「噛んで」という指示を送った。
冴子は私の秘部に浅めに指を挿入しながら、口で萌芽を探り当てて吸いだす。そうしてから膨らんだその萌芽をごく軽く上下の歯で挟み、そのまま舌先で先端を舐めた。
「そう、それ…いい…」
それ以上力が入れば激痛が走るかもしれないギリギリの力加減を冴子は理解しているようだった。冴子自身も興奮しながら、指と舌での行為にふけっている。
「あ、あ…いっちゃいそう」
しばらくの間冴子は同じ動きを続けていたが、ふいに顔の向きを変えたので、萌芽を挟んでいる歯が表面に擦れた。その瞬間私は達してしまう。
「あっ……!」
とろりと蜜が溢れる感触があり、冴子の指は抜かれる事なくそのまま出し入れされる。さっきよりも激しく。
「あ、あ…冴子…そこは」
「…これで、いいですか」
「うん、それ…続けて」
「はい」
指の数が増えていくような感触があった。中でばらばらに動かされるとたまらなくなる。
「…っい…また…」
身体から力が抜ける。下半身を後ろも前も愛撫され、意識が飛ぶかもしれないと思った。冴子は時々、萌芽に口をつけて吸ったり甘噛みしたりという刺激を加えてくる。そして私が深く達する瞬間を、一瞬たりとも見逃すまいと構えているようでもあった。さっき私が攻めている時には焦点さえ定まらないような瞳で私を見ていたのに、今の冴子の視線には射貫かれるほどの威力を感じる。
「っ……ああ…!」
冴子が私を視姦しているではないか、と自覚した瞬間に果ててしまった。
「すごい、お姉さまのイく所素敵です」
言葉で反応できるほどの余裕がない。しかし冴子はますます昂ってしまったようだ。女同士では終わりがない、とよく言われるけれど、こういう事なのだろうと思った。互いが与える役割を代わり続けるのだ。体力の続く限り。
私は冴子に与えてもらった快感を返すように、指や道具で冴子の中をかき回したし、与えられた快楽に冴子は声を上げて喜んでいた。夜の間中それらを繰り返した。本当に終わらないのではないかと思うほどに。
彼女本人とメッセージを交換した時にその謎は解けた。24歳にして疎らではあるがエステ通いを習慣としていると聞いて、腑に落ちた。サロン名にも聞き覚えがある。まだこの年齢で会社勤めであるなら、それなりに稼いでいるにしても、かなり他を節約しながらでないとそこのサロン通いは難しいだろう。それほど自分自身のケアに力を入れている娘だと知って、部署は何だろうかと思案していた。
冴子はとても謙虚で、真面目そうな性格がにじみ出るようなメッセージに好感を持つ事ができた。このアプリのメインターゲット層から明らかに外れて若いからというのもあるだろうが、彼女が私にメッセージを送ってきた時には、動機がよくわからなかった。他に似たような経歴やプロフィールを載せている人物はたくさんいる。
しかも私は遊びオンリーを目的としてここでの出会いを楽しむつもりで、それも明示しているのだ。冴子は、真面目そうな言い回しをしながら自分の欲望を隠さない。はっきりと一晩の遊びという目的を持って相手を探しているようだった。
実は私にとって冴子は実際に会う事にした最初の相手で、これまでメッセージのやり取りをしてきた人はいたけれど、結局実際に会うという気にはなれなかった。勿論それは私の立場ゆえのリスクが伴う事だからに他ならない。
そして冴子には知らせていないけれど、彼女が自身の写真を送ってくれた時には私は仰天したのだ。おそらく人生の中で数えられる程度の「びっくり」度合だった。
まさかあの子だったとは。どう見ても男に不自由するタイプには見えないし、それなのにどこか闇を抱えているようでもある。男に傷つけられた経験があるのだろう。
「名前、冴子っていうんだ」
社の受付には何人か在籍しているので、冴子がそのうちの一人である事はすぐにわかったけれど、正直いつ誰がいて、という事までは詳しくわからない。受付担当が全部で何名なのかもはっきりと記憶はしていなかった。
実物の冴子の内面には、コンプレックスが渦巻いていて、そのギャップにもまた驚いた。同じ受付仲間と自分は違うととらえているようだが、外から見れば冴子は十分そちら側の人間である。しかし見た目の華やかさに反して内面は真面目だったり、性に旺盛な自分自身を嫌っていたりする所があって、どうもそのノリになじめない事を悩んでいるようだった。だから反動でこんな、半ば場違いレベルのマッチングアプリに登録するばかりでなくメッセージを送って相手を物色する事までやってのけている。
自分から私を探し当てておきながら、実際に直接会ってみるととにかく萎縮なのか恐縮なのか、そんな様子ばかりで、メッセージの時のあの決然とした勢いはすっかり消え去ってしまっていた。
本来冴子は、人を見た目だけで判断するような人間を嫌うはずなのに、私を目の前にした瞬間からすっかりそれまでの自分を見失ってしまっていた。あまりによそよそしくされるとかえってこちらも落ち込みそうになる。
でもその動揺の理由はシンプルだ。彼女の欲望はきちんと存在していて、それ故に戸惑っているはずなのだから。私は彼女の欲望に応えるつもりでその時を迎えていた。
冴子は、人からちやほやされる事が苦手な方なのだろうから、あまり直接的に言われる事はないのだろうが、実際問題彼女のビジュアルには目を見張るものがある。本人が自覚している通り派手な美しさはないが、年齢に似合わないほどの落ち着きと、しっとりとした色香のようなものが漂っていて、それが写真映えしないのは惜しい。それから顔のパーツはどこも整っていてバランスも良い。本人は、自身の評価の源は大きな胸ばかりであろうと勘違いしているふしもあるが、顔のつくりで言えば今いる受付担当の中でも1、2を争うほどに整っていると言えるだろう。それは私の個人的見解ではなく、見る者大半の総意だ。
「いやー、今日も美しいですねぇ二宮冴子嬢は」
本人に気付かれない場所から受付に立つ冴子を観察してはそのように無駄口を叩く男性社員も数多く存在しているのだ。
「俺は佐藤さんの方が~、好みだなぁ」
つられて他の男性社員もコメントしている。
「ちょっと、乗るのか乗らないのか、見ていたいのなら置いていくわよ」
「すみません、乗ります」
とエレベーターから怒鳴った事も数知れず。だがその事実をおそらく冴子は全く知らないのだろう。あの日私の前で顔を真っ赤にして恐縮する冴子の姿は、そんな男性社員の羨望の眼差しを受けても微動だにしない人物とはあまりにも違っていた。
私が冴子を相手に選んだのには、お互いの抱えるリスクが同等であると判断したから、というだけの事で実際それ以上の事は特に考えていなかった。こういう形で交わった事が外に知られると、私以上に冴子は立場を失うだろうと思った。だから秘密を共有するには丁度良い、ぐらいにしか考えていなかったのだ。無論偶然とは言えあれだけの美貌を持ち合わせている女性の肌に触れられるのはラッキーだとも思っていた。
ところが実際に会ってみると冴子の方が恐縮している。こちらは職位こそ高いが芸能人でもあるまいし、ただのビジネスマンにすぎないと言うのに、どうも受付含め女性社員の一部から私が話題にされているという事が特に冴子の周囲では顕著なようだった。女ばかりのチームだし、それもやむなしかと思うが。
単純に冴子は私の立場や、想像上の収入や、社での功績などに萎縮しているに過ぎない。素の人間として関わってきた中では、冴子は自分の性欲に応えてくれるかどうか、そこだけで相手を選んでいたはずなのだ。そこだけをシンプルに考えればいいのに。
そして冴子には、ビジュアルを称賛する言葉もおそらく直接的には届かない。彼女からはその旺盛な性欲の存在を受け止めて、逃げないという事こそが求められている気がした。ある意味残酷な要求である。これに太刀打ちできる男はそう多くはないだろうと感じた。
冴子の緊張がほぐれるのに多少の時間は必要だったが、冴子も子供ではないし、それなりの経験値は積んでいるだけあって、大人の対応を理解している風情だった。本人はやはり自覚していないと思うが、動揺したり困ったりした時の表情から醸す色香は独特のものがありおそらく多くの男を惑わせてきただろう。ついでに加虐心も煽ってくれる。つまり、冴子を見ていると、更に辱めて困らせたくなるのだ。
冴子との時間はとにかく濃密だった。私はいちいち本人には言わなかったけれど、最後に女性と交わったのは冴子の年齢の時よりも若かった頃の事で、経験なんて皆無に等しい。
どの時からか冴子が私に甘えてきて「お姉さま」と呼んでいいかと尋ねてきた時に、正直心臓を貫かれたような衝撃が走った。なぜそこまで、こういう形では初対面の私を信じて自分を明け渡す事ができるのか、不思議だった。それと同時に、冴子に「お姉さま」と呼ばれる事が強烈な快感を伴い支配欲を満たすような感覚があって、恍惚としたのだ。動機は本能や欲望だけかもしれない。思考や感情は一切なかったかもしれない。それが冴子にとって良いのか悪いのかはわからないが、とにかくその言葉に対しては、冴子を本当に自分だけのものにして、徹底的に快楽の底まで落としてやりたい衝動に、私自身が支配されて逃げられなくなったのだ。
そんな事を実際冴子が喜ぶのか、許すのかはわからない。でも私の本能を刺激したのは冴子の方だ。今更取り消されてももう手遅れだと思ったし、この一晩のうちにどれだけ冴子に快楽を与えてやれるのか、わからなくなりながらも、そこで欲しがる冴子が目の前にいる限りは与え続けるだけだと思った。
冴子は本当に旺盛だった。思い悩むのもわからないではない。達しながら「もっと」と欲しがる。それも一度や二度ではない。一度達するごとに、冴子の表面を覆っている何かバリアのようなものが剥がれていくような気がした。もっと本音の部分を晒して欲しいと思い、私は冴子の限界を知らないながらも一度や二度達した程度で行為を止めなかった。そうしていくと更に冴子の隠し持った色香が強く放たれるようで、それをもっと見たくなった。普段冴子自身が嫌悪しているに違いない、旺盛さからくる強烈なフェロモンのようなものが、刺激によってどんどん強く放出されていくのだ。どこまであるのか、探求したくなるのが人情だろう。
だからあの日、冴子が同僚から「漏れてる」と言われたという話をしてきた時にはしまったと思った。私は、日ごろ冴子があの色香をどの程度意識的に覆い隠して暮らしているのかよく知らない。私の前ではただでさえ緊張も相まって漏れているものは多かったと思われるし、あれが標準ならそれはそれで構わないのだが、それ以前の状態を私は知らなかったから、冴子のまとうバリアが普段どの程度まであるべきものかを知らずにあんな事までしてしまったのは失敗だった。
調子に乗って剥がせるだけ剥がしてしまったけれど、日曜日の半日だけで取り戻す事はできたのか。バリアを剥がした結果の冴子は、自分でもわかっていないうちに相当消耗していたから、私は心配になり体力的な余裕以前にそこが気になり冴子を帰したのだ。
そして月曜日の冴子から、人にわかる程度に「漏れている」と指摘されたと知り、バリアは完全には戻せないまま行ったのだな、と思った。多少申し訳なくなった。受付嬢の冴子にとって肉体的なコンディションは業務に直結する重要な問題なのに、私は自分の欲望に任せて冴子をいいように弄んだも同然なのだ。働く女性の先輩として、冴子が仕事を大切にしているのはすごく伝わってきたし、仮に自分の部下なら総合的にケアすべき人物だ。それが受付業務でフェロモンばら撒きとあってはさぞかしいたたまれない思いをした事だろう。考えただけでこちらも胃が痛くなる思いだった。
私は、その罪滅ぼしにではないけれど、あえてリスクを取り職場から冴子に電話をかけ、彼女のオナニーに付き合った。これまたやり過ぎると明日の業務に支障をきたすに違いないのでそこそこの所で切り上げ、冴子のコンディションを優先するように努めた。
通話を終えて、はたと「どうしようか」という感慨にとらわれる。冴子のバリアを剥がしてスイッチを押したのは私だ。後先考えずにそれをしてしまった。冴子にそうさせられたと言えば、それは彼女がこれまでに男たちから聞かされた言葉と同じになる。剥がしたのは、押したのは間違いなく私である。
私はふと、22歳のある日の事を思い出した。最後に女性と交わった時の事とその後の事だ。あの日の冴子のように、私も緊張しながらその人と会い、街を歩いたり食事をしたり、写真を撮ったりした。夕方にはその街の温泉旅館に二人で泊まる事になっていて、私は彼女と交わる、というよりかは彼女によって快感を与えられて私は女性の手によって達する経験をした。
その人と一緒に、生まれて初めてあわびのステーキを食べた。雪を見ながら当時は珍しい、立ったまま入れるお風呂に入った。生まれて初めてペディキュアを塗ってくれたのもその人だった。たった一度きりの逢瀬だったが、私の忘れられない思い出となっている。あの時あの人はおそらく35歳くらいではなかったか。しかも既婚女性だった。
でもその後私はあっさりと彼女に捨てられた。その人は、言わば奔放な女性なのだと思う。夫がいても私の身体を使って遊んでみたり、他にも男がいたようだった。
私は、その人の夫ではない「彼氏」のためになぜか捨てられたのだ。
「彼が嫉妬するから」ただそれだけの理由で、一時的にせよ繋がりのある人間をばっさり切り捨てる事のできる人だったのだ。私は裏切られた思いがした。
私は既にセカンドだったではないか。あの人にとってのファーストが入れ替わったから、それの意向に合わせるのだと言うのは理解できなかった。納得がいかず食い下がったが、結果はやはり「ごめんね」と言われ、それで私はあの人を嫌うようになった。今思えば、そのまま待っていればどうせいずれファーストは別人になったろうしそうなれば再びチャンスは巡ってきたかもしれないけれど、彼女にとってやはり女より男なのだ、という事は動かしがたい価値観のようだったし、私自身もその当時彼氏がいたから、あまり強くも言えなかった。その後私は彼氏とも別れる事になる。こちらも他の女の子との関係が発覚して逃げるように捨てられた。
誰かに相談しようにもできなかった。「彼女がそういう事なら仕方ない」という答えしかないだろうと思っていた。でもそれで終わらせるのはどうしても寂しかったのだ。
その時に思ったのは、私がもし将来彼女と同じような事をしたとして、それぞれの相手とどういう関係でいる事が最善だったのか、という事だ。答えは出ない。でも私はあの時悲しかったし、裏切られた思いは感じたのだ。
例のアプリを使っていても、安易に直接相手と会う事をしなかったのはそれが理由でもある。関係が始まってしまったら、その先があるからだ。案外、メッセージのやり取りだけでもそれなりに満足できていたし、何より互いにリスクを取らずに済むのは気楽で良かった。
ただ、私が冴子に会おうと思ったのは、リスクの問題もあったけれど、根底の部分では、自分が冴子に惹かれたから、それでいいと思ったのかもしれない。自分が裏切られる分には、特に何も思わなかった。相手を裏切る事は避けたいけれど。
冴子が自分を覆うバリアを脱ぎ捨てていく過程の中で、はっきりと迷いの感情を表す瞬間があった。深入りすれば離れ難くなる。そうなるのはまずいという感情が見て取れた。私は冴子に惹かれていたし、戻るつもりはないと思っていたから、それが一夜限りだろうと何だろうと構わないと思っていたが、冴子はまだ気持ちの整理がついていなかったのだろう。冴子は、やはり私に捨てられ裏切られる事を恐れて、踏み出せない状態にあるのだと感じられた。しかし私はそんな冴子を強引に快楽の底まで突き落とすような真似をしたのだ。
実際に底まで行ったのかどうかはわからない。まだあるような気もする。むしろ底は堕ちれば落ちるほどに深さを増すのかもしれない。
快感と刺激で冴子を縛り支配しているのは私だ。怯えながらも冴子はある程度明け渡してくれた。そして冴子は歪んだ妄想の話を私に披露しながら自分を慰める様を聞いて欲しがるのだ。私は胸の痛みを覚えたが、それは冴子なりに私に伝えようとしている何かなのだと思う。22歳の頃の自分にはこのような勇気はなかった。
「お姉さまぁ」
週末私は再び冴子を部屋に呼び出した。今日は玄関扉を閉めるなり冴子が抱き付いてきて、すぐに唇を重ねる。お互いの舌が激しく絡んでどちらのものかわからないくらいだった。
「ベッドに行こう」
「はい」
私たちはお互いの服を乱雑に脱がせ合って裸になり抱き合った。再び唇を重ねながら、指先で冴子の髪やうなじに触れると、冴子は過敏に反応した。
「あれ、もう濡らしてるんだ」
そっと冴子の内腿から秘部に指を這わせると、もうかなり濡れていた。焦っていてきちんと確認しなかったが、下着は履かずにここへ来るようにと伝えていたのを実行したのだろう。
「…あ…ん」
あの日私が感じていた、冴子を覆うバリアは既に何階層も剥がれた状態になっている。ここへ来るまでの間にそうなったのか、それともこの一週間これに近い状況だったのか、内心心配になった。
指を話してすぐに冴子の股間に顔を埋めると、冴子が苦し気に「お姉さまぁ」と甘えた声を出してくる。それを合図に私は両手で冴子の太腿を思い切り開いた状態で押さえつけて固定した。
「…っ」
ふいに冴子の視線を感じて見上げると、私の顔に向けて冴子が指を伸ばしてきた。その時にうっかり眼鏡を外していなかった事を思い出す。これまでの行為の中で冴子に眼鏡をぶつけたかもしれない。私は、自分の爪や口で冴子の肌に傷を付ける事にはさほど抵抗を感じないのに、眼鏡をぶつけて肌を傷つけてしまうのはとてもいけない事のように感じられた。
「ごめんね」
言いながら眼鏡を外してサイドテーブルに置いた。冴子はどちらでも構わないといった様子で私を見ていた。急にその余裕ありげな表情に腹が立って、つい冴子の中に指を激しく挿入してかき回してしまう。
「あぁ…ん…お姉さま」
「何?」
「もっと…っ」
冴子の内側の、一番感じる部分を指で圧迫しながら萌芽を口に含んで盛大に吸った。
「あ!っ…んぅ…あふ…」
指の動きを激しくすると、蜜とは別種の液体が吹き出してきた。冴子はこれに気付いているのだろうか。先週、道具を挿入している最中にもそれがあったので、冴子は潮を吹く娘なのだと私は知っている。
「あぁ…いっちゃう」
私はただ頷いて指での圧迫と舌での萌芽への愛撫を続けた。ほどなくして冴子の身体が弛緩していく。達する時のサインだ。
「ああぁ……ん…いい…」
「いったの?でももっと欲しいよね」
冴子が焦点の定まらない瞳で私を見上げている。私は冴子が本当に星がっているものを与える準備をした。自分自身にそれを装着して、ぐしょぐしょになった冴子の穴に一気に差し込んでいく。
「あうっ…!あ…」
「これ欲しかったでしょ」
「はい、欲しいです…っ…んあ…!」
冴子が一生懸命言葉を発しようとするが私は煩わしくなり冴子が黙ってただ喘ぐだけになるよう激しく出し入れを繰り返した。これ以上ないほど奥まで突き入れて、わざと腰を密着させながら身体をねじると、冴子はそれまでとは違うわっという声をあげる。
「奥はだめ…あっ…そこだめ…」
「だめそうには見えないけど」
「…んん…っ!」
冴子の身体がぴくりと跳ねる。そこで竿をギリギリの所まで引き抜くと、「あぁっ」と切なそうな声で冴子が悶えた。
もう一度、一番奥まで。密着させて先端でぐりぐりと冴子の子宮口を擦るように動かす。冴子はまた「だめ」と言いながら涙を流した。
「これ好きなの?」
「うん、好き…もっと」
瞳に涙を溜めながら冴子は求めてくる。私は同じ刺激を何回も与えて冴子が落ちていくのを観察した。そうせずにはいられないものが冴子には宿っていると思う。
「そうだ、奥が好きだったら…」
私は冴子と入れ替わるようにベッドに仰向けになり、冴子に上にくるよう促した。
「自分で入れてみて」
「はい…っ…」
冴子が私をまたぐように座り徐々に腰を沈めていく。8割方入った所で私は腰を浮かせて冴子の中に全部を収めた。
「あっ…ん…」
「動いてみて」
冴子はどうにか自分の身体を支えつつ腰を動かし始める。そのうち腰を振るのに夢中になり喘ぎ声も大きなものとなった。
「あ、ん…はんっ…」
冴子の大きな胸が揺れて卑猥な眺めだった。冴子がどんどん上下運動を激しくしていくので、私は少し身体を支えてやりながら冴子の様子を見守った。壊れた人形のようでもあるが、能動的に腰を動かして快楽を貪っている。
私は冴子の身体を固定しながら腰を激しく振りたててやる。
「あぁぁぁっ…う…」
冴子はうめくような声をあげた。更に蜜がどっと溢れてくるのがわかる。
「…っだめ、いっちゃう」
冴子の両脚がだんだんと外に開いていくように崩れていった。私は更に大きなストロークで冴子の中に竿を出し入れする。
「い…っちゃう…あぁ…!」
冴子が私の上に倒れ込んでくる。そっと抱き止めてやり冴子の身体を撫でた。落ちてきた冴子の髪を掻き上げながら、はぁはぁと息をする彼女の唇にキスをする。
「っ…」
そうしなければならないとどこかで教わったのか、本能的にそうしているのかは知らないが、冴子は一生懸命に舌を絡めてくる。唾液が私の口内に流れ込んできているのだが、おそらく自覚はないだろう。全身が弛緩すると冴子はそれこそ物理的にも「漏らす」傾向がある。
今日もそうだが、私がしている事は疑似的な男とのセックスの再現に近い。その方が快楽の作り方を知っているからだ。でもそれだけではつまらない。冴子にはそうでない部分も楽しんでもらいたかった。
まだここへ来てからさほど時間は経過していないのに、冴子は軽くぐったりとしている。私は冴子の身体が起こせる程度に回復したのを見計らって、冴子の片足を持ちあげ自分のそれと交差させた。
「…これって」
「そう、擦るのよ」
二人の、大切な部分がぴったりと密着する。冴子自身から相当量の蜜が溢れているから、それほど抵抗もなく始める事はできるだろう。
「気持ちよくなるように動いてみて」
「はい…あ…ん」
竿のようなものを挿入した時に比べて、この状態で響く粘着質な接触音の方がいやらしく感じるものだと思った。冴子が身体を思い切り押し付けてきて、花弁の内側を直接触れさせてくる。自然と両手を後方につくような恰好で、交差させた足がより深くかみ合うように、冴子は身体を前後に動かした。
「んんっ…気持ちいい」
「私も気持ちいい」
「ほんとですか、あ…っ」
冴子は動きになんとなく慣れてきて無心になっていくようだった。私も腰を使ってより深い接触を求めるように冴子の動きに合わせた。冴子はもう勝手に動くといった様子で夢中になっている。
「あ…っん…あ!」
冴子の声が一際高くなる。また軽く達するのかもしれない。私は同じ動きを繰り返しながら自分自身を襲う快楽に耐えた。
互いの萌芽が擦れる感触があって、その刺激を執拗に求め合う。今度は冴子は何も言わずに達したようだった。
「…っ」
「こっち」
再び冴子が私の上に倒れ込んでくる。今度は自分から唇を寄せてきて、「キスしてもいいですか」と聞いてくる。さっきからしている事なのに何故今だけ許可を求めているのかはわからない。冴子自身もなんとなく、そうしただけの事だろう。
私が軽く頷くと、冴子は勢いよく私の口にしゃぶりついてきた。甘える子猫のような息を漏らしながら夢中で私の唇を味わっている。
「ねえ、冴子」
「はい…」
「いっぱい舐めてくれる?」
「はい」
冴子が自ら私の身体に触れる時には、まるで壊れ物でも扱うように慎重に、かつ私の反応を逐一観察するような優しさで触れてくる。冴子は手で刺激を与える事よりも口淫が上手い。だから舐めてと命じる方が彼女も気が楽だろうと思った。
こんな事してもいいんですかと問いたげな目をしながらおそるおそる冴子は私の首筋や鎖骨あたりを舐め始める。その表情は歓喜と恍惚に満ちているようで、舐めている冴子の方がむしろ興奮しているのではないかと思われるほどだ。
「…あの」
ふいに冴子がわずかに唇を浮かせて何か言おうとするので私は続きを促した。
「お姉さまの肌は本当にきれいです」
「…そう?」
「はい」
特に、と言いながら冴子が指先で私の身体をなぞるように触ってくる。冴子の指は感触を確かめるように、胸の谷間や脇の下といった皮膚の薄い部分を撫でてきた。くすぐったさと、それとは違う興奮も同時に覚えてしまう。
「ここも舐めますね」
言いながら冴子は私の乳房をぎゅっと掴んで、舌先を使って乳首を舐め始める。意外と強い力で乳房を掴まれているのだが、先端に与えられる刺激はソフトなもので、私はこういう刺激に弱いのだなと知った。
「あっ…」
私の反応を確認して冴子は更に行為を続けた。なんとなく、自分の内側から蜜が溢れてくるのがわかる。冴子は、今度は子供がするように乳首をきゅっと吸ってきた。舌先でチロチロと舐めるのと交互にそれを行っている。私は思わず、行為に集中している冴子の胸元に手を伸ばし指先で冴子の乳首を軽く弾いてみた。
「ちょ、…っん」
冴子は一瞬過敏に反応したが、すぐに気を取り直してさきほどの行為を再開する。丁寧に左右両方の胸に同様の愛撫を行ってくれた。
少しずつ、冴子の様子が何か我慢している気配を伴ってきたが、とりあえず今はまだ様子を見ておこうと思う。
それから冴子は私の腰の辺りも舐めてきて、更には「お尻も舐めたいです」と言うのでうつ伏せの態勢になって冴子のしたいようにさせた。
「お尻も本当にきれいですね」
言いながらマッサージするようにお尻を揉んで、次に舌を這わせてくる。そうしているうちに冴子が何かに気付いたように動きを止めた。何か迷っているようだ。
「…どうしたの?」
「あ、その…」
冴子は迷いながらも指先を割れ目の付近までもってきて、
「その、ここの割れ目とか、お尻の穴も舐めてみたいなと思ったので…」
と恥ずかしそうに、でも欲望を抑えられないといった様子で告げてくるのだ。
「そんな所も舐めたいんだ?」
「その、すごく綺麗なので、ここの奥もきっとそうなんだろうなと思って、知りたくなってしまって」
私は、わかった、と答えながら膝を曲げてお尻を浮かせるような態勢を取った。冴子は珍しいものでも見るように息を止めていた。冴子自身が客観的な視点でこういう状態の私を見るのは今が初めてかもしれない。
「いいんですか」
「いいよ」
「…」
冴子は途中からは言葉が聞こえていないような集中力で私の下半身を凝視していたが、ふいに両手を使ってぐいっとお尻を掴んできて軽く左右に開いた。秘部が空気に晒される感触に、それらが冴子にも見えているだろうと思うと興奮もした。
「見えてるでしょ」
「はい、見えます」
冴子はしばらくの間それを見つめていたが、その後舌だけを伸ばして割れ目に這わせてきた。
「あっ…ふぅっ…」
慣れない感覚に身体が震えてしまう。でも気持ちがいい。冴子の舌が穴の辺りを触れるか触れないかぐらいの距離で移動していくのがわかった。
「やっぱり、ここもすごく綺麗です」
冴子が至近距離で声を出したので、その振動が股間全体に響いた。つい反応してしまう。
「ここも…」
冴子が、言いながら私の蜜を指ですくいお尻の割れ目に伸ばしてくる。その動きだけでも十分気持ちよかったが、冴子が再びそこに舌を這わせてきたので、私は必死で快感に耐えた。
「…すごい、下から溢れてくる」
冴子は舌を這わせながら指で秘部を刺激してくる。
「冴子…っ…」
冴子はまた黙って舌と指での刺激を続けた。
「んっ…ああ」
快感の波が高くなり私も声をあげた。私が軽く達したのを確かめると冴子は顔を離した。
「冴子、今度はこっち」
「…はい」
再び仰向けになり私は秘部を指さした。冴子の視線ははじめからそこに固定されている。さきほど後ろからの愛撫を行った時からそこが気になっていたのだろう。
「…」
冴子はやはり何も言わず秘部にたまっていた蜜を吸い取っている。それが終わると次は蜜を溢れさせるように花弁を舐めたり、萌芽を指でつついてきた。子供がいたずらをするような動きにかえって私は翻弄される。
「冴子」
「はい」
言わなくてもおそらくわかるはずだ。この間も冴子はここを何度も舐めている。私は無言で「噛んで」という指示を送った。
冴子は私の秘部に浅めに指を挿入しながら、口で萌芽を探り当てて吸いだす。そうしてから膨らんだその萌芽をごく軽く上下の歯で挟み、そのまま舌先で先端を舐めた。
「そう、それ…いい…」
それ以上力が入れば激痛が走るかもしれないギリギリの力加減を冴子は理解しているようだった。冴子自身も興奮しながら、指と舌での行為にふけっている。
「あ、あ…いっちゃいそう」
しばらくの間冴子は同じ動きを続けていたが、ふいに顔の向きを変えたので、萌芽を挟んでいる歯が表面に擦れた。その瞬間私は達してしまう。
「あっ……!」
とろりと蜜が溢れる感触があり、冴子の指は抜かれる事なくそのまま出し入れされる。さっきよりも激しく。
「あ、あ…冴子…そこは」
「…これで、いいですか」
「うん、それ…続けて」
「はい」
指の数が増えていくような感触があった。中でばらばらに動かされるとたまらなくなる。
「…っい…また…」
身体から力が抜ける。下半身を後ろも前も愛撫され、意識が飛ぶかもしれないと思った。冴子は時々、萌芽に口をつけて吸ったり甘噛みしたりという刺激を加えてくる。そして私が深く達する瞬間を、一瞬たりとも見逃すまいと構えているようでもあった。さっき私が攻めている時には焦点さえ定まらないような瞳で私を見ていたのに、今の冴子の視線には射貫かれるほどの威力を感じる。
「っ……ああ…!」
冴子が私を視姦しているではないか、と自覚した瞬間に果ててしまった。
「すごい、お姉さまのイく所素敵です」
言葉で反応できるほどの余裕がない。しかし冴子はますます昂ってしまったようだ。女同士では終わりがない、とよく言われるけれど、こういう事なのだろうと思った。互いが与える役割を代わり続けるのだ。体力の続く限り。
私は冴子に与えてもらった快感を返すように、指や道具で冴子の中をかき回したし、与えられた快楽に冴子は声を上げて喜んでいた。夜の間中それらを繰り返した。本当に終わらないのではないかと思うほどに。
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